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酷すぎる自己啓発セミナー


 就職難で、こんな怪しい自己啓発セミナーの会社に就職してしまった。

 しかも、ある有名人の名前を冠しているが、入ってみてわかったことは実は本人に許可取っていない。

 許可も取らずに「あの○○が作った自己啓発セミナー」という広告を打っているというブラックさ。

 その○○さんはおもいっきり外国人なので、まさか日本の小さな会社の広告にまで突っ込んでこないだろうということで勝手に使ってるらしい。

 なんて酷い。

 そして、僕はそんな会社で働いている。


 教室の前に立つ。

 これまで3回ほど先輩についてアシスタントとして働いてきたが、自分でクラスを持つのは始めてだ。

 というか、こんな経験不足な自分に一つのクラスを任せるとかどんだけ無責任なんだこの会社。

 よくこんなセミナーに十万円以上払って参加する人が23人も居たものだ。


「え~、私が皆さんのメンターとなる小林和一こばやし かずいちです」


 いや、無理だろ。

 僕には無理だ。

 しかし、言わないといけないので仕方ない。

 

(中略)

◯一人目


「私の……私の夢は……!!」


 目をつむり、両手の拳を握りしめる佐藤さん。

 力みすぎているのか、体中がプルプルと震えている。

 前にもこんな風に夢を言う前に力みまくるお客さんを見たことがある。

 たしかそのときは「年収1億円!」とか言っていたな。


「私の……私の……夢は……うっ……夢は……」


 絞り出すような声を出す佐藤さん。

 こんだけ力んでいる人は初めて見た。

 まさか、年収100億円とか言い出すんじゃないだろうな?


「さ、佐藤さん……言いにくいのはわかりますが、言ってください。何事も自分と他人に宣言することで……」


 と言いかけると佐藤さんがカッと目を見開いた。


「私の夢はっ! 女子高生になってイケメンのご主人様に飼われて毎日責められて愛されることです! 以上っ!」


 そのまま、ドシン、と佐藤さんが席につく。

 え、あの、ちょっとまった。

 僕の思考がついていってない。

 今この人、なんて言った?


「ええっとぉ……」


 どう対応していいかわからずに、とりあえず手元のファイルから佐藤さんの資料をめくって探し出す。


「あ、いや、その、たしかお申込みの時には『部長へ昇進すること』と書かれているようですが……」


 すると、佐藤さんは僕に視線を合わせず、ずっと真正面をみつめたまま答えた。


「申し込みをした後によく考えてみて、自分の真の望みに気が付きました。私は昇進などどうでもいい。昇進すればいいと思っているのはうちの妻です。私の望みは……そう、真の望みは、若い女の子になってご主人様に飼われ」


「わ、わかりましたから! ひ、ひとまず落ち着いてください!」


 突然大声を出し始めた佐藤さんをなだめて、黙らせる。


(中略)

◯二人目


「実は私も申し込みの時に書いた夢は本当の夢じゃないんです」


「え?」


 いや、まって。

 勘弁して。


「私、小学生くらいの男の子が大好きなんです! 私は小学生くらいのかわいい男の子を三人くらい飼って……」


「は、は、はい! わかりました! あ、あの、すいません。ちょっと、そういう特殊なのは……い、いえいえ、別に否定をしているわけではなくて、その前例がないものですからどう対応すればいいか、えーと、あの、そのですね……ま、また後でお伺いしますから……」


 と言いかけたところで、目の前の女性がものすごく不服そうな表情をしていることに気がついた。


「……と、思いましたが、ここは真の望みを発露する場ですから、言わなければなりませんよね。で、ですが、その、あまり大声をお出しにならないようにお願いします。隣の教室まで響いたりしますといけませんので」


「あ、あぁ……すいません、つい大声を。私の望みは、小学生……3・4年生くらいですかね、それぐらいの男の子を三人ぐらい監禁して毎日順番に虐めて遊ぶことなんですが……いけませんでしょうか?」


 いけないに決まってるじゃないですか。

 しかし、マニュアル上そうも言えない。


「そ、それは後で考えるといたしましょう。あ、ありがとうございました。で、では次の方」



(中略)

◯3人目


「私の夢は世界征服です。世界中の人々は私にひれ伏すべきです。異論はありませんよね?」


 すごい人が来た。

 もういやだ。

 どうしてこのクラスの講師が僕なんだ。

 他の誰かでもよかったじゃないか。



(中略)

○4人目

 どうしたことか、ものすごく居心地悪げだ。


「み、みなさん、すごいですね。そのような言いにくい望みを堂々と口にされるなんて……」


 飯田さんがもごもごとした口調で言う。

 そりゃ面食らうに決まっている。


「本当に皆さんの勇気を尊敬いたします」


 え? いや、尊敬はないでしょう。


「私の望みなど、皆さんと比較したら本当にとるに足らないようなつまらないものでして……。ただたんに、その……年収を今の倍にしたいと思っているんです……お恥ずかしい」


 い、いや、恥ずかしくないよ!

 まともだ!

 ものすごくまともだ!


「い、以上です」


 飯田さんは頭を下げて席につく。


 その後も、何故か反社会的だったり変態的な夢を語る人が幅を利かし、何故かまともな年収アップとか人間関係改善とかを語る人が恥ずかしそうに身をすくませ、何故か変態的な夢を持った人が偉いような雰囲気が醸造されていく。


「ええと、それではまずお配りした資料の2冊めを開いて……」


 と、マニュアル道理にテキストから始めようとしたところで、腕時計の針に目が止まった。

 もう時間だ。

 

 え!? なんで!?


「あ、あれ? おかしいな、あれ?」


 お、落ち着け自分!

 ここで動揺しては信頼度がダウンしてしまう。


 数秒、言葉を止めて考える。


 あ、そうか。

 変態グループと反社会グループの夢語りが長すぎたんだ。

 やばい。マニュアルどうしよう。


「で、では、今日はこれで終わりといたします。次回までの課題は、夢がかなった時自分に起こる嬉しい事を30個以上考えてきてください。ではこれで」


 生徒たちが立ち、ぞろぞろと教室を出て行く。

 なぜか変態グループと反社会グループの面々の顔は晴れやかに見える。

 なんでだ。

 

 僕はこのクラスが卒業するまでがんばれるのだろうか。

 がんばれなければ、クビだ。

 いや、むしろ首になったほうが楽なんじゃないだろうか。

 というか、早く辞めたい気分にさえなってくる。


 前途多難だ。




失敗原因:この先が面白くなる気がしない。竜頭蛇尾な作品なので書くの止めました。

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