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第4話 まずは現状を確認しよう見えないものが見えてくるよ! 〜ゆたside〜

「…一体、俺が何したっていうんだよ」



いつにも増して恨み節が多くなる。無理もない。…ただでさえ今の状況は中々受け入れがたいものがある。



「やっぱり、ここから出ることはできないのかな」



一度納得はしたものの、やはりこの非現実的な現実はどこか信じることができず、何かの悪い夢で目が覚めればあのベッドの上に戻るのでは…という希望を胸に夜を過ごした。



「…そんな都合よくいかないか」



眩しい陽の光に包まれた朝、目の前に広がる光景はいつものベットの上ではなく、荒廃した大自然の中で時折どこからか獣の咆哮が響くサバイバルな世界だった。



「早くこのステージは抜けたいんだけどな…」



一応目の前の風景は今日だけでも受け入れることにする。明日になるとまた違ってるはず、そうだ!俺は元の世界に戻らなければならない。…トモはどうしてるだろうか。



「普通に考えて、俺と一緒でこちらの世界にいるのだろうか…」


もしくは彼女はいつも通りベッドの上?

だとしたらそちらの方がいい、少なくともあちらの世界だったら危険はない。もしこっちに来ていたとすれば、一人で大丈夫だろうか…不安が増える。


「ふう、まずはこのステージを抜けることを考えよう」


昨日今日で世界が大きく変わり最初は混乱してしまったがようやく落ち着いてきた。こういう時はまず落ち着いて現状を確認するに限る。仕事だってそうだ。


「まず俺はゲームの世界に入り込んでしまったということ」


なぜ入り込んでしまったのかは一番の謎だが今はわからない。ただ事実、目の間に確認できる世界は自分が開発したゲームのステージのそれで、さらにクエストの設定や出てくる敵のデザイン、自分の装備やステータスの考え方、レベルデザインなど共通する項目は多くある。


「ただ、自分が作ったゲームが完全に再現されてるわけではない…」


ここが不思議な…合点のいかない点だ。俺が開発したゲームの見た目ではあるが、その中身は微妙に違う点がいくつか存在する。


「敵のレベルデザインが変わってる」


要はクエストボスのレベルが極端に上がったり、下がったり、敵の数が増えたり減ったりしている。


「地図に見たことのないエリアが存在する」


この点が最も気になる点、設計していない領地が存在するのだ。ここには何が存在するのか、こればかりは開発者の自分でも把握できないし管理ツールのようなものを使っても覗くことはできない。つまり行ってみるしか手はない。


「冒険か…それはそれで楽しそうではあるか」


いかんいかん、徐々にこの世界に毒されている。いや、中毒にさせているという点では開発者冥利につきるのではないか?…とはいえ、今は状況が状況だ。


「ともあれ、謎は謎のまま…まずはトモと合流しないと、こちらの世界にきているのであれば尚更…」


はぁ…早くトモに会いたいなぁ…


この道を進めば必ず愛しの人に会える。

そう信じて今は進むしかない。


いかなる障壁があろうが今まで越えてきたではないか、どんなに仕事があったとしてもそそくさと帰った…上司やチームから飲み会の誘いがあってもそれとなしに断って帰った…全てトモとの時間を過ごすため。


今回もそう、さっさと終わらせてベッドで続きを…ぐふふふふ…




「やっと見つけた…」


邪な考えを巡らせる俺に聞き覚えのある声が聞こえる。振り向いてみると、そこには…愛しの人…ではなく無精髭が特徴的なただのおっさんが立っていた。

いやおっさんは失礼か、見た目には想像できない力を秘めていて今俺がこなしてるクエストの最終ボスなのだ


「今までやられ…」


はい!会話はスキップスキップうううう!


「おおお!!」


と、いきなり会話が終了して襲ってくる。ちなみにこれくらいの敵なら最初にぶち当たったキメラの足元に及ばない、冷静に対応すればあっさりと倒せる。


「覚えてろおおおお」


はぁ、ようやく片付いた。ちなみにこのクエストは最低でも1日かかってしまう。なぜ時間がかかるかといえばめんどくささにある。ボスを倒してはい終わり!ではなく逃げ足の速いボスをいかに誘き寄せて戦いに引き寄せるか、を考えないといけないクエストなのだ。


「我ながらめんどくさいクエストにしたものだ」


まぁ何はともあれ!これでこのステージを出ることができる。

次はどこに行くか…広げた地図を眺めながら考える。


「ひとまず、最初の街に向かうべきかな…最初から進め直したほうが謎の解読は早いはず」


根拠があるわけではないが何か基準のようなものが欲しかった。


「とはいえ、そこまで行くのに少し時間がかかりそうだな」


マップを使って街から街へ飛ぶ機能は俺は持っていない。アイテムや能力で機能追加をしてはいるが相当なレアリティを設定しているので俺くらいのレベルのやつが使えるわけない。万が一見つかったら運営の疑いが持たれそうだ。


「地道に行くとするか」


仕方ない、俺は地図からルートを確認する。途中に強敵はいなさそうだけど油断はできない。いきなりアホなレベルの敵が現れるかもしれない。やられてしまったら即死すらあり得る…ん?


「そういえば、この世界で死ぬとなるとどうなるんだ…」


嫌なことに気付かされた。そうだ、この世界で命を落とす可能性がある。むしろ現実世界より危険が多いこちらのほうが可能性は十分にある。


「セーブポイントみたいなところに復活するのかな…」


それだけなら問題はない。しかしこれはあくまで勘だが、そう簡単なものではないだろう。何かしらの対価が発生するはずだ。


「となると慎重に進まないといけないか」


こういう時、たとえばギルドに所属していたりフレンド同士でチームを組んでいけばやられるリスクは少なく済む。さらにトモみたいなビショップが一人入ればさらに抑えることができる。


「そういえばギルド掲示板とかは荒れてないかな」


ユーザー数を見る限り、結構な人がこの世界に閉じ込められてることになる。そうなるとパニックになる人も少なからずいるだろうし、半ばやけになって変な行動をとるやつだってあり得る。


「今のところ、そんなに荒れてるわけではなさそうだ」


まずはホッとした。

よくよく見れば、この世界に閉じ込められたことに気づいて情報を拡散している人もいれば、人生がうんたらかんたらと胡散臭い話をするやつ、それを盲信狂信する人など、結構いろんな人がいるようだった。


「トモの書き込みはなしか…」


当然といえば当然か、おそらくギルドに所属しているはずはなく、そうなると掲示板に書き込みはできないはずだ。


「ただ、こっちに来ているみたいだなぁ」


俺は暗記したIDを打ち込みとあるユーザのステータスを確認する。

そこには愛しの人のステータスが表示されており、最後にクエストをこなした時間が昨日を指しており、今もなおゲームをしていることを示していた。


「まぁイコール会うことができるということだから、早く探さないとな」


ここからトモが今どこにいるかを確認できればよかったんだけど、そこまで充実した管理ツールでもないのでその情報は確認できなかった。地道に探すしかない。


「あとはメッセだけど、誰ともやりとりはしてないみたいだな」


少しでも情報が集まればと思ったけど、一人で行動しているようだ。せめてこちらから連絡をとる手段があれば…


「…ん?」


何かとても大事なことを見逃してる気がする…あ…


「ああああああああああああ!」


そうだ!メッセ機能だ!!これを使えば連絡が取れる!管理ツールで履歴を見る限り、使えはするようだ、気づいた人はすでに使っていた。


「これでトモとまずは連絡が取れる…」


改めて俺はメッセを送ることに緊張してしまう。この気持ちは…そう、初めてデートに誘うときのように緊張していた。


…俺は、意を決してメッセの接続を試みた…



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