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十五年目の春


 春なんですよ!


 若干、テンション高めで外に出る。


 うん、肌寒い。


 でも春。



 起きてきたザブトンに挨拶。


 ザブトンもテンションが高い。


 どうしたどうした、ステップがいつもより軽いぞ。


 ははは。


 わかっている。


 ザブトンの要望に応え、俺の身体のサイズを測ってもらう。


 冬の間に太ってなければいいのだが。


 大丈夫そうだな。


 ああ、期待している。



 ザブトンのテンションが高いのは、春のパレードがあるからだ。


 俺としては去年だけで終わらせたかったが、そうはいかなかった。


 去年のパレードが終わった直後から次に向けて準備をし始めた者がいるからだ。


 その筆頭がザブトン。


 俺の服だけでなく、ほぼ村人全員の衣装を手掛けている。


 凄い量だ。


 秋に追い込みをかけ、完成させていた。


 今はザブトンの子供たちと協力して、衣装サイズの最終調整中。


 ん?


 夜に試着だな。


 了解。



 他にも、山エルフたちが櫓を隠れて作っているのを知っている。


 一村、二村、三村、四村では行進の練習を定期的に行っているのも知っている。


 だから、もう抵抗はしない。


 春のパレードは恒例行事。


 受け入れた。


 そっちのほうが心が平穏。


 それに、夏の祭り、秋の武闘会のことを考えれば、春のパレードはバランスがいいと思う。


 うん。



 それじゃあ、パレードの前にできる仕事はきっちりと終わらせよう。


 だから山エルフ、櫓を組み立てるのはもう少しあとで。


 それが姿を見せると、会議の空気じゃなくなるから。


 ハイエルフ、音楽の練習ももう少し離れた場所で。


 理由は同じ。


 鬼人族メイド、料理の試作は構わないが、子供たちに食べさせすぎないように。


 ドワーフ、酒を試飲する必要はあるのかな?


 まだ朝だぞ。


 はい、気を引き締めて。




 夜、試着。


 ……


 相変わらずどこかの貴族のような絢爛豪華な服。


 白を基調にしつつ、要所に赤と金。


 でもって背中に真っ黒なマント。


 このマント、四本の棒が生えているんだよな。


 4本の棒には可動部があり、曲がる。


 見ただけではわからなかったけど、着たあとにザブトンがその棒を曲げてセットして理解できた。


 この棒、ザブトンの足をイメージしている。


 ザブトンの足なら八本じゃないかと思うが、足りない四本は俺の手足でおぎなっているのだろう。


 なるほど。


 ザブトンイメージの服か。


 ザブトンの子供たちが嬉しそうに踊っている。


 ははは。


 そしてその後ろでクロを代表に、クロの子供たちから抗議の声の合唱。


 そりゃないだろうとザブトンに言っているようだ。


 だが、ザブトンはクロたちに足を向けて、慌てるなのジェスチャー。


 俺の衣装のマントを取り、毛皮パーツが追加された。


 でもって、角の生えた狼の頭部を模したヘルメットみたいな帽子?


 装着して、鉄板を磨いた鏡をみる。


 ……


 白い服を着た狼男がそこにいた。


 かっこいいと思うが、問題点が一つ。


 俺の顔が邪魔じゃないかな?


 ヘルメットみたいな帽子じゃなく、マスクとかにしたほうが……


 クロたちの尻尾が凄い勢いで振られているから、問題ないのかな?


 よしよし。


 今は衣装の試着中だから撫でるのはあとでな。


 ん?


 どうしたザブトン?


 服はパーツ交換で、まだまだチェンジする?


 次はこれって……ああ、左右に五メートルぐらいの白い布。


 棒が通してあって、翼のように拡がるのね。


 俺の頭の中には、年末の大きな歌番組の名物歌手が浮かんだ。


 毎回、奇抜な衣装で話題になっている人。


 その人になった気分。


 俺の衣装はそのあと、七回の変身が行われた。


 俺がパレードをすることを受け入れたから、ザブトンは自重するのをやめたようだ。




 なんだかんだと数日が経過し、パレードは明後日あさってに開催される。


 だが、すでに各村から参加者が集まってきて、前夜祭の空気。


 南のダンジョンのラミア族や、北のダンジョンの巨人族の参加者は、少し前に到着している。


 距離を考えれば、冬が終わりそうな段階から移動を開始したのだろう。


 その意気込みはありがたいが無理しないでほしい。


 来年のパレードは、もう少し時期を後ろにする予定。


 今回、急いだのはマルビットたちが参加したそうにしていたから。


 俺はいつまでいてくれても構わないのだが、キアービットが言うにはマルビットたちがそろそろ帰らないと色々と怖くなるそうだ。


 だから急いだ。


 それに便乗したのがリグネ。


 パレードを見てから帰るとの宣言に、リアたちは沈黙。


 微動だにしなかった。


 喜んでも悲しんでも訓練が厳しくなるのがわかっているからだろう。


 たぶん、微動だにしなくても厳しくなると思う。


「では伸びた滞在期間で、五村ごのむらのエルフたちも見てもらえると助かるのだが?」


 そのリアたちを助けたのは五村代表のヨウコ。


 リグネはヨウコとも知り合いだった。


 と言っても互いに名前だけで、会話したのはこの村に来てから。


 あっという間に意気投合し、リグネはヨウコの提案を受け入れて冬の終わりぐらいから五村に行ってエルフたちを鍛えている。


 リアたちはヨウコの部屋に大量の酒を差し入れたとの噂だ。


 まあ、だからと言ってリアたちが解放されたわけでなく、大樹の村での訓練は続いているし、数人が五村の訓練の教官役として連れられている。


「五村にはエルフ帝国のエルフがいるが、大丈夫なのか?」


 一応、因縁があるのを心配して聞いたが、問題ないとのこと。


「裏切った本人ではないしな。

 子や孫に恨みをぶつけるほど陰湿ではないつもりだ」


 なるほど。


 ちなみに、ガルフとダガがリグネの訓練に参加したが、それほど厳しくなかったらしい。


「リアたちの真似はするな。

 あれはハイエルフの身体に合わせた訓練だ。

 お前たちにはお前たちの身体に合わせた訓練を用意しよう」


 理論的で非常にわかりやすく、身になった訓練だったと好評だった。


 まあ、俺はそれでも参加したくないけど。


 見てるだけで理解できる厳しさだったし。


 話はズレたけど、来年からパレードは春の畑仕事が終わってからにする予定。


 今回は仕方がない。



 ドースたちや魔王たちも顔を出し、前夜祭がさらに盛り上がる。


 パレードするだけなんだけどな。


 ここまで盛り上がられると、村に娯楽が足りないのかなと不安になる。


 ちょっと考えておこう。





アルフレート          7年目春生誕(8歳)

ティゼル            7年目秋生誕(秋で8歳)


リリウス            9年目夏生誕(夏で6歳)

リグル             9年目夏生誕

ラテ              9年目夏生誕

トライン            9年目夏生誕


ヒイチロウ           10年目秋生誕


フラシア(フラシアベル)    11年目冬生誕


セッテ             12年目春生誕

ラナノーン           12年目夏生誕



ウルザ             9年目秋時点で5歳ぐらい

                (現在11歳ぐらい)


ナート             9年目秋時点で4歳ぐらい

                (現在10歳ぐらい)


グラル             10年目秋時点で5歳ぐらい

                (見た目だけ。竜なので本当はもっと年上)


獣人族の男の子三人       6年目秋時点で3~4歳ぐらい

                (現在12~13歳)


ルプミリナ           14年目秋生誕

オーロラ            14年目秋生誕

ハイエルフの子二人       14年目秋生誕

山エルフの子三人        14年目秋生誕

獣人族の子二人         14年目秋生誕


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― 新着の感想 ―
[気になる点] キャラとして名すらない主人公の7人の子って哀れですね
[一言] さっちゃ〜ん!
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