表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
391/948

料理教室とルーの研究


 ルーがお金を借りにきた。


 それなりの金額だ。


 何に使うかを聞いたが、秘密と言われた。


 可愛かったので許す。


 そして貸した。


 持っていても使い道に困っている現状だしな。


 悪いことにはつかわないだろうというぐらいの信頼はしている。





 それから一ヶ月。


 表向きの文化保護目的の美術品収集は進んでおり、美術館の建築も順調だ。


 裏向きの医療団、料理文化団、魔物調査団は人材確保の面で難航中。


 ただ、それは予想していたので気にはしない。


 気長にやっていきたい。



 料理文化団の人材確保の一環として、五村ごのむらで料理教室を開くことになった。


 教師役は鬼人族メイド数人。


 教室のターゲットは、五村で活動する冒険者たち。


 なんでも、冒険者にとっての料理とは基本的に焼くのみ。


 それも高火力で焦げるまで焼き、焦げた部分を削って無事な部分を食べるというもの。


 なるほど、生食が危険というのは経験で知っており、その対策なのだろう。


 だが、その調理方法では可食部分が減る。


 そして美味しくない。


 焼く前にこれでもかと塩をまぶしているのに、そこを焦がして削っているから塩の意味がわからない。


 せめて食べる部分に塩を振ってほしい。


 そんなことをしたら、しょっぱくて食べられない?


 あ、うん、塩でコーティングするんじゃなくてちょっと振る程度で……というレベル。


 ガルフやダガから、料理教室開催を喜ばれるのもよくわかる。



「村長、料理教室の参加資格や参加費はどうします?」


 料理教室を段取りしてくれている文官娘衆の一人が質問してきた。


「五村に住んでいれば無料でかまわないだろう。

 食材の代金は俺が出す」


「了解しました。

 五村以外の者はどうしましょう?」


「あー……募金箱を用意して、そこに心ばかり入れてくれるように頼んでくれ」


「わかりました」


 そうして開かれた料理教室だったが、一回目はそれほど参加者はなかった。


 ガルフやダガに言われ、渋々やってきた者が十人ぐらいといった感じだ。


 だが、二回目、三回目と徐々に参加者が増え、五回目の今日は三百人以上の参加者がやってきた。


 全員が冒険者ではない。


 半数ぐらいは、冒険者以外の住人だ。


 この料理教室は、基礎しか教えていないのだがと思ったのだが、五村ができた経緯を考えて納得。


 この街はできたばかり。


 ここに住む者は、なんらかの理由で流れて来た者たちが多いのだ。


 料理人や主婦であっても料理できない者もいるのだろう。


 そのことに気付けてよかった。



 料理教室は好評なので、定期的に開催することになった。


 いずれは、鬼人族メイドではなく、五村の住人が教師役をやれるようになるといいな。


 ちなみに、俺は一回目から料理教室の監督役として参加。


 ……


 監督役って必要なのかな?


「必要です。

 教師役の鬼人族メイドさんたちのやる気が、大きく変わりますから」


 そんなものですか。





 そろそろ冬も終わりかなと思い始めたころ。


 ルーが意気揚々と大樹の村に帰ってきた。


「完成したわ」


 なにがだろう?


 ルーに誘われるがまま、大樹の村で暇をしている者を集め、五村に移動。


 そこから南に下り、海岸に。


 ここは前にライメイレンがヒイチロウのために帆船を作り、それが沈むのを見た場所だ。


 俺に同行してきたライメイレンが、それを思い出したのか少し不機嫌そう。


 現在、この場にいるのは俺、ルー、ティア、ダガ、ドライム、ドース、ライメイレン、ハクレン、アルフレート、ティゼル、ウルザ、ヒイチロウ。


 暇だったリザードマンとハーピー族。


 ミノタウロス族、ケンタウロス族も数人いる。


 それと、前にルーに連れられていったハイエルフ、山エルフたち。


 ガットもいるから……いつの間にか連れられていたらしい。


 あとは……賢そうな人が一杯。


 イフルス学園の関係者だそうだ。


「そろそろよ。

 あなた、あそこをみて」


 ルーが百メートルぐらい先の海面を指差した。


 何もない。


 俺がルーを見るが、不敵に笑っている。


 ルーと一緒に行動していたであろうハイエルフ、山エルフ、ガットも不敵に笑っている。


 なんだ?


 もう一度、海面を見ると……不意に海面が盛り上がった。


 海中になにかいる?


 え?


 大きい?


 海中から出てきたのは巨大な船だった。


 だが、船にしては上部に何もなさすぎる。


 いや、海中から出てきた。


 潜水艦と考えれば、おかしくないのか。


 とすると……あれはなんだ?


 船の両舷にある巨大な腕は?


「これが完成したばかりの万能船よ」


 そうルーが自慢するが……先に巨大な腕の説明をしてほしい。


「せっかちね」


 ルーが手旗を振って船に合図を送ると、巨大な腕が返事した。


 そして、その巨大な腕が器用に船体の上部を組み立てていく。


 あっという間に帆が立てられ、誰がどう見ても船になった。


「あの工作腕があることで、速やかな変形が可能になったのよ」


 ルーが胸を張る。


 そして、子供たちは大興奮。


 すごいすごいと騒いでいる。


 その横で、ティアが怖い目でルーをみていた。


「あれって、私のゴーレム術の応用ですよね?」


「さ、参考にさせてもらったわ」


 ルーがティアから目を逸らす。


 うん、今のティアは怖いからな。


 気持ちはわかる。


 あとで謝っておこうな。



「ごほん。

 水中、海上を自在に動く万能船だけど、それだけじゃ万能は名乗れないわ」


 ルーがまた手旗を振って、船に合図を送った。


 船がまた姿を変える。


「シャシャートの街のイフルス学園が総力を挙げて研究に研究を重ねた結果がこれよ!」


 万能船は、海面から離れて空中に船体を浮かべた。


 おおっと、周囲から歓声があがる。


 やったと喜び合うイフルス学園の関係者たち。


 ハイエルフ、山エルフ、ガットたちも手を結んでいる。


 子供たちはもう何を言ってるかわからないぐらいだ。


「水中、海上、空中を自在に移動する船、つまり万能船よ!」


 ルーが胸を張った。


「太陽城の浮遊の原理を解析、ここまでの小型化に成功したのよ!」


 凄いじゃないか。


 俺は素直に感想を伝えた。


「さすがだ」


 俺がそう言った瞬間、遠くでバキッと嫌な音が響いた。


 まさかと見ると、音の元は空を飛んでいる万能船。


 歪んでいる?


 そう思った瞬間、万能船は真っ二つに折れ、そのまま海面にバラバラになりながら落下した。


 ……


 え、えーっと……


 ルーをみる。


 地面に伏していた。


 イフルス学園の関係者たちは頭を抱えている。


 ハイエルフ、山エルフ、ガットも顔色が暗い。


 先ほどまで怖い顔をしていたティアも、ルーに気をつかって何も言わない。


 何かを言ったのは子供たち……というかアルフレート。


「今のも変形? また海面から出てくるの?」


 俺は、地面に伏せたルーが血をく幻覚をみた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
フレーム強度が足りなかった? 電気炉でアルミ精錬してアルミ合金(ジュラルミン)の製造を始めれば良いのに。 若しくはザブトンの魔糸をベースに複合素材系の構造材を開発すれば良いのにね。
[良い点] う〜ん…惜しいw ただルー夫人、大金を借りるならヒラクに「秘密♪」はどうなんだろうか…
[良い点] 五村の料理改革(冒険者及び一般) 冒険者、渋々参加→仲間に披露→仲間、酒場等で他の冒険者に自慢→話しを聞いた冒険者、酒場等で聞いた一般人の妻や知り合い、参加→さらに知り合い等に話す...、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ