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とんでもスキルを得たけど異世界放浪中

「ウインドカッター!」


 振り払った腕の先から放たれた風の刃が、草を切り裂いて巻き上げる。


「ブリーズブレード! ドラフトスラッシュ! みんな一緒やん!」


 太陽の位置から考えて西だと思われる方角に歩いてきたが、森に入る手前で何も持っていない事に気付いて手持ちの魔法を検証している。

 別に技の名前なんて叫ばなくても、魔法は俺の思った通りに発動した。


 スキルの最高レベルは9、俺の風属性魔法はレベルカンストの状態だ。

 誰に教わった訳でもない、練習を重ねた訳でもないのに、自由に魔法が使えるし、それを異常だとも感じない。


 日本の常識で考えれば、異常極まりない状況だが、この世界はこういうものだと思うしかないのだろう。

 そもそも魔法なんて存在しない日本に生まれ育った俺が、魔法を理解しようとすること自体無理があると言うものだ。


「さて、じゃあ行くか……探知」


 探知魔法レベル2を使って、周囲の状況を調べるが、脅威となる存在はいないようだ。

 一度に探知出来る範囲は、半径300メートルぐらいで、レベルが上がれば範囲も広がるのだろう。


 西に向かえば人里があるような事をアーサーが言っていたが、正確な方向は分からないので、とにかく森を抜ける必要がある。

 それと、水は魔法で確保出来るが、食料が何も無い。

 

 ゆるパクで奪ったスキルの中には鑑定魔法レベル1もあったのだが、そもそも食料になりそうな果実とか山菜のようなものが見当たらないから鑑定のしようがない。

 それに、鑑定しても、木、石、土、ぐらいしか表示されないのだ。


「そんなもの、目でみりゃ分かるつーの……でも、使った方がいいんだよな?」


 鑑定魔法は、藤吉先輩の小説にも登場してきて、最初はこんな感じで使えなかったが、レベルが上がると表示される内容が豊富になっていた。

 それならば、持っているスキルで使えそうなもので、レベルの低いものは積極的に使った方が良さそうだ。


「千里眼……探知……鑑定、鑑定、鑑定……」


 魔法を連続して使っても、魔力切れになるような感じはしない。

 それでも、いざという時に、魔法が使えないのは不味いだろう。


「ステータス・オープン……ゆるパク・オープン……」


 表示されたダミーの魔力値が12、真実の魔力値は429になっていた。

 草地での魔法の検証とかを合わせると、結構な回数の魔法を発動させたので、70ぐらい減っている感じだ。


「いや、待って、70?」


 確か、アーサーの魔力値は27だったと思うので、二倍以上の魔力を使ったことになる。

 風の刃とか、火の弾丸とか、水流とか、魔法は便利だ使いやすいと思っていたが、普通の人は魔力の残量とかを気にせずに使っていると、簡単に魔力切れを起こしそうだ。


「意外と戦略を立てて使わないといけない……んん?」


 魔力の燃費的なことについて考えていると、デジタル時計の秒表示のように、魔力の数字が増えていく。

 スキルの一覧を眺めると、魔力自動回復レベル2という表記を見つけた。


 別の数値も注視していると、生命力の数値が減ったり増えたりしている。

 生命力を使って魔力を回復させているのかもしれない。


「あれっ? まだ増えてる……」


 魔力値は、真実のステータスを最初に確認した時の497を超えて増え続け、513で停止した。

 たぶん、魔法を使った事で増えたのだろうが、増え方が大き過ぎる気がする。


 魔力16は、少し魔力の少ない人の全魔力量と同じぐらいだ。

 訓練を受けているはずのアーサーでも27だったのだから、こんなに急激に増えたりするものではないはずだ。


 ゆるパクのスキル一覧にある、経験値増加レベル2とか、成長促進レベル2とかが影響しているのだろう。


「とにかく、魔力切れとかは意識しなくて良さそうだから、レベルアップのために魔法を使い続けていこう。鑑定、鑑定、鑑定……」


 自分に言い聞かせるように、言葉を口にしながら森を歩く。

 傍から見れば馬鹿みたいに見えるだろうが、傍から見る人が全く存在しないから不安なのだ。


「探知……ん? いや消えた……」


 探知魔法に一瞬反応があったが、すぐに消えてしまった。

 探知魔法が途切れたというよりも、探知の範囲から出てしまったように感じる。


「どうする。追いかけるか……やめておくか……」


 反応があったのは、方角的には南だ。

 見通しの利かない森の中で、方向を変えて進むと迷う恐れがあるが、初めての反応を確かめたいという気持ちの方が勝った。


 反応のあった方向へ進みながら、再度探知魔法を使ってみると反応があった。


「そうだ、千里眼……鹿か」


 千里眼を使うと、障害物を貫いて先を見渡すことが出来る。

 まだレベル1なので、千里どころか一里4キロ先も見渡せないが、探知に反応があった方角に一頭の鹿の姿を捉えた。


「よーし、探知を使って反応があったら千里眼で確かめる。これで完璧……ん?」


 頭上を鳩ぐらいの大きさの鳥が飛び抜けて行ったが、探知魔法には反応が無かった。

 レベル2では、あの大きさでは反応しないのだろう。


「これまで使えなかったスキルが使えるようになったけど、レベルを上げないと精度も範囲も本来持っている五感に劣るのか、とにかく使ってレベルアップさせるしかないな」


 この後も、日が傾く頃まで森を歩き続けたが、野鳥やリスのような小動物を見かけるだけで、探知魔法には反応は現れなかった。


「かなり南寄りに進んでいたみたいだし、今日はこの辺で野営するか……てか、腹減ったな」


 森に入る段階では確認していたのだが、歩くことと、魔法を使うことに夢中になっていて、食料の確保を忘れていた。

 腹が減っても、寮なら時間になれば食事が出るし、お金さえあればコンビニで24時間買い物が出来る日本に暮していたからだろう。


 リスは食べる気にならないので、飛んでくる野鳥に気を付けながら森を進む。

 前方と左から右へと飛びぬけようとした野鳥に、風の散弾を浴びせて撃ち落した。


「うげぇ、ズタボロだ……」


 逃がしてはいけないという意識のせいで、魔法の威力が強すぎて、鳥はボロボロの状態だった。

 それでも、自分が殺した命なので、羽を毟り内臓を取り出し、木を削った串に刺して火属性の魔法で調理した。


 飛んでいた時は鳩ぐらいの大きさに見えたが、羽を毟って焼くと、思っていたほど肉は付いていない。


「てか、塩とか、コショウとか調味料が欲しいな」

 想像していたよりもボソボソとして、味気のない鳥を食べ終えた後、俺は寝床の確保に動き出した。


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