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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
外伝 真・槍の勇者のやり直し
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性の化身

 謁見の間を出た後に案内された部屋でお義父さんはお疲れの様子で椅子に腰かけました。


「ふー……とりあえずこっちの無実は証明できそうだね」

「話自体は順調だったと思いますぞ」

「そうなんだけどね。しかしなんて言うか、いろんな意味で凄い王様だね」

「その件に関しては盾の勇者様に同意いたします」


 シュサク種の代表が頷きますぞ。

 コヤツはこの世界出身ですからな。

 きっと色々知っているのでしょう。


「好色暴力王を直に見る機会に恵まれるなんて希少な経験だけどねぇ……」

「すごい通り名だね」

「まあ色々と噂や経歴がありますからなぁ」


 なんでも無数の豚を虐待しながら抱く趣味があったのでしたかな?

 タクトを生け捕りに出来た場合、その豚共を処理するのに最も適した存在ですぞ。

 今回はタクトが死んだ事が判明しているからこそ周りの豚を特定するのが難しいのでしたな。

 この辺りは豚王の同じ豚をかぎ分ける力に頼るほかありませんな。


「かの王の言葉に、痛めつけた方が締まりが良い等がありますね」


 お義父さんがシュサク種の代表から豚王の名言等、様々な事を教わっていますぞ。

 色々な意味で凄い豚ですぞ。

 思う所はありますが、役に立つ内は生かしておいてやりましょう。


「なんて言うか、いろんな意味で大丈夫なの?」

「豚を与えている限りは無害な奴ですぞ」


 おや? 前回の周回の語らない部分で何やら引っかかるような気がしますぞ。

 この記憶は何ですかな?


 波が終わってしばらくして、フォーブレイに滞在した際、俺が育てていたフィロリアル様が豚王の所に遊びに行って……豚王と仲良くなったフィロリアル様がいた様な気がしますぞ。

 顔が思い出せませんが豚さん豚さんと言いながらフォーブレイ王に絡んでおりました。

 やがて何かあって激怒して乗り込んで行った俺が見た光景とは……命乞いをする様に豚王が泣きついて驚いた様な……きっと何かの間違いですな。


 俺がフィロリアル様の名前とお顔を思い出せないなんて……く……。

 間違っているのか、忘れているのかどっちなのですかな?

 豚王の側近達が笑いを堪えながらどうにか仕事をしようとする光景がなぜか脳裏にこびりついておりますぞ。

 曖昧な記憶があるのは間違いないですな。


 ですが、今はお義父さんに説明ですぞ。

 そうですな……アレを話しましょう。


「同性の好みは錬や樹を足して二で割った様な者らしいですぞ」

「何そのどうでもいい知識……というか同性もいけるのか、あの王は」

「性の化身ですな」

「否定できそうにない。まあ俺達に直接的な被害は無いみたいだから大丈夫なのかなー……?」


 やや懐疑的な様子ですが、お義父さんは一応は納得した様ですな。

 まあ、少なくとも俺達と敵対した事はないので、大丈夫だと思いますぞ。

 敵対した所でタクト程度にやられる様な奴に負けるつもりもありませんからな。


「勇者様方への多大な援助は約束されていますね。大抵の援助をしていただける様です」

「それは助かるけど……」


 その点で考えても、悪く無い相手ですな。

 おや? パンダがここぞとばかりに手でお金を描きますぞ。


「ラーサさん、気持ちはわかるけど落ち着いて」

「良いんじゃないかい? 金が使い放題ってのはやる気の向上にも繋がるし、遠慮なんてしていいもんじゃないよ。どれだけ良い装備を揃えたって限度なんてもんは無いんだからね」

「お抱えの傭兵の意見だね。ネットゲームの装備談義みたいなのを聞いた気がするよ。てっきり権力を使って贅沢しようとか言うかと思っちゃった」

「それもやって良いとアタイは思うけどね。金のある内に土台は整えておくべきなんじゃないかい?」

「まあ、防具に関してはドロップ品でも優秀なのはありますが、より良い物となると素材にしても何にしてもお金は必須ですからな」


 俺が知る中で一番凄いと思った鎧は最初の世界で最後にお義父さんが着用していた鎧ですが、あれは世界最高峰の素材と職人が揃ってやっと完成した様な品ですぞ。

 言わば、到達点ですぞ。

 何より、武器の強化の中には金銭を消費する物もありますからな。

 金はいくらあっても足りないのですぞ。

 最初の世界のお父さんがお金に固執していたのはこれ等の理由があったからでしょうな。


「武器に関しては勇者は自身でどうにも出来るでしょうが、仲間もそろえると馬鹿にできませんぞ」


 ちなみに俺はフィロリアル様の装備を揃えるのが好きですな。

 ツメが標準装備ですが、フィロリアル様は各々好みの武器が異なりますぞ。


「贅沢の許可まで解釈を増やすのはどうかと思うけど……奥が深そうな問題だなぁ」

「ま、アタイとしては体が資本だから良い物を食べて力を付けたいけどねぇ」

「ええ、しっかりと勇者様と力を合わせてくださると私達もうれしく思いますよ」


 そうシュサク種の代表がパンダに同意するとパンダがビクッと背筋を伸ばしますぞ。


「そ、そういう意味じゃないよ!」

「あー……なんか妙な方向に期待されてる。完全に脱線してるね」


 そんな訳で俺達はフォーブレイから援助の約束も取り付けたのですぞ。

 これでタクトの問題もある程度、終わったのではないですかな?


「さて……後は波に挑む問題とか色々とある訳だけど、そういった縁もあって一度占領したシルドフリーデンには視察に行くべきなのかな?」

「かの国も混乱の渦中にあります。もう少し様子を見るべきだとは思いますが……」

「混乱しているからこそとも言えるんじゃないかな? 逃亡中の代表の捕縛も必要でしょ? いくら指名手配されているからと言ってもね」

「確かにそうではありますが……」


 そうですな。

 アヤツ等は何だかんだでLvが高いですぞ。

 そこ等辺の騎士や冒険者では手も足も出ないでしょうな。


「勇者は波に挑まないといけないし、混乱しているからと言ってシルドフリーデン地方の波を無視して良い話にはならない。タクト派閥に荒らされているなら尚の事環境を整えなきゃ」


 さすがお義父さん。

 敵が支配していたからと言って、そこに住む者達が傷付いて良い理由にはならないという事でしょう。


「面倒くさいねぇ……波の時だけアタイ達が出れば良いんじゃないのかい?」

「まあ……そうなんだけど、勝ったからにはこっちも色々とやっておいた方が有利に働くんだ。元康くんが仕入れた知識に勇者の力には信仰もあるらしくてね」


 ですな。お義父さんがおっしゃっていました。

 信頼し信頼される事も強化に繋がる、と。


「それに、波が発生している最中の現場でシルドフリーデンの国民から妨害されたらたまったもんじゃないでしょ」

「あんた達は勇者なんだよ? そんな話あり得るのかい?」

「ありますぞ?」


 最初の世界のお義父さんは最初の波で救助活動をしていたにも関わらずメルロマルクの騎士団に攻撃された事がありますからな。

 現地の者達が勇者の活動を妨害することはあり得ない話ではないのですぞ。


「元康くんには心当たりがあるみたいだね」

「もちろんですぞ」

「はー……恐れ知らずな連中ってのがいるもんなんだねぇ……」

「そういうものですぞ。特に敵国などの場合はその色が強まりますからな」

「波のドサクサに紛れて勇者様への攻撃など、死罪にしても許されない程の蛮行ではありますが、シルドフリーデンへの視察とタクト残党の処理という名目であるのならば納得ができます」


 シュサク種の代表も同意してくれました。

 多少不安に思っている様ですが、俺に任せろですぞ。


「勇者様の活動にシルトヴェルトは協力を惜しむつもりはありません」

「うん。結果的にシルドフリーデンを良い感じに抑えておきたいね」


 こういった理由で俺達はフォーブレイからシルトヴェルトに一度帰還し、シルドフリーデンに向かう事になったのですぞ。

 ですが、その前に……ですな。


「そういえば樹が死んだのはしょうがないとして、剣の勇者である錬に関して誰も聞いて来ないのは何かある訳?」

「メルロマルクから届いた情報によりますと、戦いに参加しなかった剣の勇者は現在、ゼルトブル方面で活動中と判明しているので、フォーブレイも強引な召集を避けたとの話ですよ」

「まあ、錬ですからな。確かメルロマルクでの待遇に随分と不満を持っていたので、ゼルトブルの方へ逃げると言っていた気がしますぞ」

「あれ? 元康くんは錬に会ったの?」

「そうですな……今回のループの前の事ですが、俺達を召喚したメルロマルクの最初の波の後で会ったはずですぞ」


 段々思い出してきました。

 お義父さんを騙る者に仲間がリンチにされて殺された挙句、俺の強さを物差しにして精進が足りないとメルロマルクの者達に注意されて、我慢の限界を迎えたのでしたな。


「それとなくゼルトブルに亡命すると言っていたので間違いはないでしょうな」

「へー……まあメルロマルクの態度じゃ、しょうがないのかもしれないね……エクレールさんの件もあるし、メルロマルクの波は俺達が代行して鎮める事になりそうだけど」


 クズが既に失脚しておりますからな。

 三勇教の教皇も処分済み。

 女王がもう帰国済みという事なのでしょう。

 となれば多少は治安の回復も期待できるでしょうな。

 少なくとも召喚直後に攻撃されるような真似は無いはずですぞ。


「俺が即座に鎮めて見せますぞ」

「うん、そうだね。元康くんに頼む事になるかもしれない」

「ナオフミーサクラはー?」

「私達もいますわよ」

「コウもー」

「みんなも頼りにしているよ。がんばってね」

「うんーがんばるー」


 お義父さんが優しくサクラちゃんを撫でますぞ。

 おお……良い光景ですな。


 ですがサクラちゃんはフィーロたん。

 すっかり後回しにしていますが、どうしたらサクラちゃんをフィーロたんに出来るかも考えて行くべきですぞ。

 割と本気で考えねばならない俺の命題……。


「そうですぞ! 折角なのでフォーブレイで主治医をスカウトして行くのはどうですかな!?」


 主治医は魔物の第一人者ですぞ。

 サクラちゃんをフィーロたんにする事も容易く出来る程の知恵を持っている可能性は……低いですが、聞いて損ではないですぞ。

 それにフィロリアル様達の健康チェックは重要ですからな。

 まあ、ユキちゃん達は少し苦手そうにしておりましたが、健康は大事なのですぞ。


「唐突にどうしたの、元康くん」

「シルドフリーデンの調査も重要ではありますが、せっかくフォーブレイに来たのですから未来で役に立つ主治医に声をかけても損ではないと思いますぞ」

「主治医さんね。フォーブレイにいるんだ?」

「そうですぞ。本来はタクトに追い出されてメルロマルクのお義父さんの領地に来るのですがタクトは俺達が倒してしまいましたからな」

「へー……いったいどんな人なの?」

「フィロリアル様の健康管理をしてくれていましたな。他にもフィロリアル様に関して研究をしてくださった事がありました」


 勇者四人でフォーブレイに来た時の事を思い出しますな。

 フィロリアル生産者と白熱した議論を交わしておりました。

 奴の助力を得ればサクラちゃんをフィーロたんにする事も不可能ではないかもしれませんぞ。


「まあ頼りにできる人ならお願いしておいた方が良いのかな? なんだかんだ言って俺達はフィロリアルが多いし、何か病気にでもなられたら困るよね」

「我等シルトヴェルトの魔物医も腕は優秀ですが」

「元康くんは更に上の人を知っているって事なんでしょ。一応話に来てもらうとかそんなのでも良いかもしれない」


 主治医の実力は確かな物ですぞ。

 しかも最初の世界のお義父さんが認める程の人格者ですからな。

 まあ、少々安全性を重視する傾向が強いらしいですが、それも主治医の実力の表れでもありますぞ。


「わかりました。これからの戦いにおいて勇者様が必要とおっしゃるのでしたら……フォーブレイに申請しておきましょう。フォーブレイ王の許可もありますし、容認されるはずです」

「じゃあ元康くん、その主治医って人の所に行ってみようか?」

「わかりました」


 これでフィーロたんにまた一歩近付きましたな。

 そんな訳でシルトヴェルトに一度戻る前にフォーブレイで主治医と話を付けに行く事にしました。




 記憶を頼りに俺達はフォーブレイの主治医がいる区画の方へと向かいますぞ。

 ユキちゃん達も興味ありげに見ております。


 懐かしいですな。

 見た所……被害は無い様ですぞ。

 前にフォーブレイに行った時のループではホムンクルス研究所の連中が暴走して事故が起こったのでしたな。

 今のところ被害らしきものは無いように見えますぞ。


「動物園って言いたくなるくらい色んな魔物がいるね。確かに腕は良いのかもしれないね」

「はーアタイもいろんな所を巡った覚えはあるけど、随分と変わった場所だねぇ」

「傭兵だもんね。やっぱりいろんな冒険もしていたりするの?」

「トレジャーハントも多少はやったけどねぇ……やっぱり多いのは依頼だねぇ。辺鄙な所に生えている薬草を採って来いとか商人の護衛とかが基本だね。魔物と戦ってLvをあげるのも重要だけど。そんなもん長く冒険者をしてりゃ勝手に上がるもんさ」

「へー……」

「ま、珍しい魔物かなんかを退治して素材を売って金にするってのも醍醐味だけど」


 などとパンダがお義父さんと会話に花を咲かせていますな。

 お義父さんは話を聞くのが上手ですからパンダも沢山話していますぞ。


「着飾って行商の売り子などをする気はないのですかな?」


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