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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
盾の勇者の成り上がり
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バイオカスタム

「ニセモノー」

「こ、これは一体……」


 唖然とする偽者にラフ種は何度も宣言する。

 フッ! これがワシの仕込んだラフ種の機能だ。

 偽者には偽者であると突き付ける。

 それ以外の言葉はまだ話せないがな。


「ニセモノー」

「……これはあのおかしくなったナオフミ様の嫌がらせですか?」

「さあー? ただラフタリアちゃんを蘇らすんだってこの子を作ったみたいよ」

「どうやって……?」

「ラフタリアちゃんの髪で」

「ナオフミ様ーーーー!」


 今にも泣きそうな声で偽者は叫ぶ。

 ふふふ、効果抜群だな。


「で、これがナオフミちゃんからの伝言よー」


 サディナが映像水晶を取り出して偽者達に見せつける。


「数時間ぶりだな偽者と裏切り者の勇者と村の連中よ。よくぞワシの城の結界を守護する塔の順番を当てた。褒めてやろうじゃないか」


 ワシの映像は一拍置いて、宣言する。


「だが、易々とこの先突破できるとは思わん事だ。ワシがラフタリアを蘇らせた暁には血祭りにしてくれる。首を洗って待っているが良い」

「ああもう……どう言えばいいのやら……」


 偽者は頭を抱え始めた。


「メルティちゃんに事情を説明してどうにか誤魔化してくれるって言っているけど……」

「次に攻め入る時はこちらも総力戦で相手をしてやろう。今夜のように簡単に破壊できるとは思わん事だ。ではさらばだ! 偽者!」


 ここでワシの映像は終了する。


「と言う事で、ナオフミちゃんは攻めてきたら撃って出るって宣言させるために私達を使わせたのよ」

「……そうですか。で、ここでサディナお姉さんは戦うのですか?」

「一応はねー戦わないとナオフミちゃんに怒られちゃうし」

「……わかりました。では戦いましょう」


 偽者が剣を強く握り、サディナと戦いを始める。

 サディナはラフ種を守りながらと言う若干不利な状況で善戦しているようだ。

 ただ、魔法は使わないのは何故だ?

 後で理由を聞いたらラフ種に当たると危ないからと言う真っ当な理由だった訳だけどな。

 元康の方は錬と樹、リーシアと、敵対したフィロリアルに攻められていた。


「多勢に無勢でも私は負けませんぞ! 風車!」


 元康は槍をくるくると回すスキルを放って竜巻を起こす。

 だがスキルのクールタイムや遠距離攻撃が得意な樹とリーシアの前にどんどん追い込まれて行く。


「もとやすさん、ここは不利です! 撤退しましょう」


 度重なる攻撃を受けて不利を悟ったみどりが元康に進言する。


「ですが私はお義父さんの期待を裏切ることなどできません」

「目的は達しました。もうこれ以上留まって負けたら意味なんてないです」

「そ、そうか。だが天使達をまだ説得出来ていない」

「無理です! ヒヨちゃんが居る限り僕達じゃ勧誘できません」

「うう……すいませんお義父さん。元康、みんなの為に撤退いたします!」

「あ、待て! ガエリオンは何処だ? 逃亡阻止の範囲を……」

「ラフー!」


 ラフ種が幻覚の魔法で姿を消すと同時に幻覚の元康達をそこに留まらせる。

 偽者は見抜いたようだが、その隙が命取りだったな。

 元康の三匹がサディナと元康、ラフ種を連れて範囲外にまで逃走した。



「と言う経緯がありました。申し訳ございません」


 ワシが元康に持たせた水晶でその出来事を閲覧する。


「まあ成果は上々だろう。どうやら奴らはやる気があるようだ。世界を征服する前に、奴らを倒さねばならんようだな」


 第二塔を守る結界が切れるまで、まだ時間はあるが……今のうちに戦力を増強せねばならんな。

 こうして、ワシの研究所建設の一日目は終了したのだった。



 二日目。


 第一世代ラフ種の試作量産を開始した。

 まだ戦力としては心もとないが、いないよりはマシだ。


 さて、第二塔の防衛部隊はどうしたものか。

 頼りにしていた元康も錬と樹、リーシアやあの偽者を相手には若干分が悪い。

 フィーロとアトラ、フォウルも警護にあたらせるべきだろうな。


 だが……それでも心もとない。

 腐っても勇者とその一行と言う事か。


「兄ちゃん! クレープの木はまだ作ってくれないのか?」

「キールか。後でな。まだ忙しいんだ」

「そっか……」


 研究室で仮眠していたワシをキールが起こす。

 脇にはアトラが幸せそうに寝ている。

 フォウルも一緒に寝ている。


「今日は兄ちゃん何するんだ?」

「ああ、今日は時間までにあの偽者を倒すために強力な兵器を作る予定だ」

「あら? 面白そうな事を話しているわね」


 部屋の隅で寝ていたサディナが起き上がって話に参加してくる。


「それってどんなのだ?」

「魔物共を改造して強力な魔物に作りかえる」

「おおー! すげー!」

「ここに居る魔物はそれなりの数が居るからな。色々とやらねばならない事も多いのだ」


 ラフタリアを蘇らせる為にも魔物の方の研究もすべきではあると盾が教えてくれる。

 魔物はその強靭な生命力があり、アンデッドとなっても動ける種類が存在する。

 ガエリオンが良い典型だな。

 その部分を研究する事でラフ種とより強く、本物に近づける事が出来るようになると思うのだ。

 それに、魔物共に約束してしまっているからな。強くしてやると。


 そんな風に考えているとゴンゴンとラトが大事にしていた魔物が大きな培養槽の壁を叩いてくる。

 みーくんとか言ったか。

 そういえば研究所をそのまま接収したから、ここにいるんだったな。


「ん? どうした?」


 造詣があやふやだが、表情を読み取ることが出来る。


「自分を使えと言うのか?」


 コクリとラトの大事にしていた魔物が頷いた。


「ふむ……」


 強くなりたいと願っている魔物だったからな。

 良いだろう。


「どんな実験にも耐える覚悟は……あるようだな」


 ワシの言葉にラトの大事な魔物は頷く。

 よし。

 ワシは盾を培養槽の前に掲げ、石板のスイッチを押す。

 発動させる技能や専用効果はバイオカスタム、錬金術関連、その他……遺伝子改造を発動させる。

 幾何学模様の文字を飛ばし、ラトの大事な魔物を縛りつける。


 ……強くなるのはイメージだ。

 ラトの大事な魔物がどんな強さを望むか、まずはそれが大事。

 人ではないが本人が望まない改造をしても意思が耐えきれない。


「さあ、お前の望む強さをイメージしろ。ワシは出来る限りのアシストを行う」


 ラトの魔物はコクリと頷いて、イメージをワシに伝えてくる。

 ……ほう。

 ラトはドラゴンの様な、強靭な生命力を持ち、中々死なない体を乗り換えられる魔物を作りたがっていた。

 その意思を完全に汲み取った形をラトの魔物はイメージしている。

 心がつながっていると言えば良いのだろうな。


 しかし……若干、この魔物の容量をオーバーしている。

 ワシのこの遺伝子改造と人体実験の技能はこの容量をオーバーすると改造が出来ない。

 その点で言えばバイオプラントはこの容量が大きくて助かる。


 もちろん、発動には多大な魔力とSPを消費するが盾の回復能力で、少し休めば問題は無い。

 それだけのLvをワシは既に備えている。

 どうした物か……。


「済まんがもう少し希望を下げてくれ、でないと……」


 ラトの魔物がワシに強い意志で目を向けてくる。

 まあ、この改造であるのなら、他に強化する手段がない訳ではない。

 ワシが改造イメージに補足を加え、ラトの魔物に提出する。

 これなら出来なくもないだろう。

 幸いにして、必要素材はワシの盾の中にあった。希少な物ではあったがな。


「そうか……それほどまでに強さを求めるか、どんな痛み、呪いにも耐えきってみせよ!」


 ワシは遺伝子改造の技能を発動させた。

 改造に掛るのは数時間。

 ボコボコと音を立てて大きな培養槽がめまぐるしく動き始める。


「おおー……ってこれ、いつ完成するんだ?」

「もう少し後だ」

「へー……」


 ワシは盾から魔力水と魂癒水を出して魔力とSPを補給する。


「次の作業に移るぞ」


 ラトの魔物を更に改造するのに必要な……要素の作成にワシは移った。

 ラトの魔物は核で生き、魔物の肉体に移植する事で思い通りに動けるようになる魔物へと改造した。

 その素体として第一世代ラフ種を大改造する事で賄う事にしたのだ。


 現在作りだしたボディは身長3メートル。

 フィーロよりも大きな第一世代ラフ種が培養槽に浮いている。

 ラトの魔物の為に作られたボディだ。


 やがて改造を終えたラトの魔物が大きな培養槽に現れる。

 赤く……丸い水晶となった。

 ラトの魔物は核と言う生命体へと進化したのだ。


 ワシはその核を入れられるだけの器として大きな第一世代ラフ種を作りだした。

 その培養槽にラトの魔物を入れ、ラフ種の中に移植した。

 少しの間震えていたかと思うとラトの魔物は第一世代ラフ種の体に馴染み、目をパチクリさせて培養槽から手を振る。


 ふむ……これで動けるようになっただろう。

 ワシは石板のスイッチを押して培養液を排出し、培養槽からラトの魔物を出した。


「ラフー」

「どうだ? その体は? 研究が進んだらもっと戦いやすい体を作ってやるぞ」

「ラフー!」

「すげー! 兄ちゃんこんな事も出来るのか!」

「当り前であろう!」

「……ナオフミちゃん凄いわねー。世紀の錬金術師ね」

「それほどでもあるぞ」

「ごしゅじんさまおはよー!」


 フィーロが機嫌よく研究室に入ってくる。

 起きて早々食堂で飯を食べてきたのか、腹が少し膨れている。


「だーれ?」


 大きなラフ種を指差してフィーロがワシに尋ねる。


「ああ、ラトの魔物だ」

「あ、ミーくんなんだ?」

「ラフー」


 手を振るフィーロにミーくんと呼ばれた魔物が手を振り返す。


「大きくて可愛いね? フィーロも負けないよ」

「ラフー」

「ではお前等には大事な任務を与える」

「なーに?」

「コイツと一緒に第二塔の警護をするんだ」

「はーい!」

「まあ、まだ時間があるからな。この魔物が新しい体に慣れるまで付き合ってやるんだぞ」

「うん!」


 どうせ、そこまで改造は進んでいない。

 使い捨ての体の様なモノなのだ。

 後は定期的に素体となる体をヴァージョンアップしていけば良い。

 使える技能は一通り説明しているから……大丈夫だろう。

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