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盾の勇者の成り上がり  作者: アネコユサギ
盾の勇者の成り上がり
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青の砂時計

 何度目の行き止まりだったか。

 地図を確認して、全てをマッピングして行くのだが……霊亀の心臓へ繋がる道が見つからない。


「うーむ……」


 時々使い魔と遭遇するがラフタリアやフィーロが余裕で蹴散らすので問題は無い。

 そして行き止まりに行くたびにリーシアの居る連合軍の休憩地点を確認している。

 数回程、使い魔と遭遇したが、リーシアが先頭に立って倒す事は出来たそうだ。

 あのステータスで……フィーロきぐるみのお陰だな。


「くそ……」


 こうしてもたついている内に霊亀が人里に迫っているのだと思うと焦りが出てくる。

 そもそも、こういった洞窟は、霊亀が人工生命体とかじゃない限り、肉壁とかそう言ったダンジョンになるんじゃないのか?

 何だろう。入り口すら見つかっていないような気がする。

 もしくはこの洞窟自体が間違いなのか?

 地図上では最下層のはずなんだが……。


「盾の勇者殿」


 影が現れて地図を更新させる。

 ……全ての行き止まりが埋まってしまった。


「どうなっているんだ? 伝承に間違いでもあるのか?」

「どうでごじゃろうか……隠し扉の類も確認したでごじゃるが」

「ねえごしゅじんさまー」


 フィーロが地面を蹴って遊んでいる。


「もう一回確認するか? それとも掘り進まないといけないのか?」


 そうなると掘削の道具が必要だぞ……そういえば掘削技能が俺にはあったな。


「ねえ」

「連合軍の荷物を確認するでごじゃる」

「ねえ!」

「……なんだ?」


 フィーロが注目して欲しいと言うかのように声を出すので注意する。


「あのね。この床……なんか変だよ?」


 ゲシゲシと地面に足をぶつけるフィーロ。

 ちなみに俺も隠し床とかが無いかを確認したが反響する音がなかった。


「おかしいって何が?」

「生き物」

「そりゃあここは巨大な化け物の背負った山の洞窟だから生き物だろうよ」

「そうじゃなくて!」


 ガツっとフィーロはこれでもかと床に足をぶつける。

 ブニョンと床が波を撃つ。


「ん?」


 音が……変だったぞ。

 そういえば……前は作れなかった薬の中級レシピに強酸水というのが合ったな。

 丁度盾に作らせていたのを思い出す。


「フィーロ、少し下がって居ろ」

「はーい」


 俺は盾から強酸水を出し、ラフタリアに渡す。


「それを振りまけ」

「あ、はい」


 ラフタリアは強酸水を地面に撒く。


「―――――!」


 床がうごめき、正体を現した!

 まるでもちのような粘液生命体が巨大な目を開き、背中に亀の甲羅を出現させる。


「なるほど、擬態型の使い魔でごじゃるか、見つからないはずでごじゃる」

「生命活動も余程の事が無い限り休眠していたんだな、だから気配で察知できなかったのか」


 影やフィーロでさえも察知できないという事は……何とも騙すのが上手い使い魔だ事。


「仕留めるぞ!」

「はい!」

「了解!」

「拙者も行くでごじゃる!」


 各々の攻撃で擬態型の使い魔は倒された。

 擬態型の使い魔は死ぬとナメクジのように縮み、水蒸気となって消えた。


「こんな所に道が隠されていたでごじゃるな」


 使い魔の消えた痕を確認すると下へ続く道が現れた。

 こりゃあ今まで行き止まりだと思っていた道も怪しいぞ。

 とはいえ、今はこの道を進むしかあるまい。


「行くぞ」


 全員が頷いて俺の後をついて来る。

 それから少し進んだ所へ壁や温度、空気が変化しているのを感じた。

 生温かく、壁自体も肉壁へと変化し、鼓動している。


「なんか変な感じだね」

「そうですね……何か気持ち悪いです」

「フィーロの口の中と同じ感触だよ?」


 ……嫌な感想だ。

 フィーロらしいと言えばらしいのか?


「霊亀の体内に入ったんだろうな」


 上はまだ洞窟という感じだったし、ここからが本格的になるだろう。

 足場が柔らかくなり、鼓動が聞こえてくる。

 とりあえず、心臓がどこにあるかを確認せねばならない。

 そう思っていると、顕微鏡で見たことのある血小板のような魔物や白い塊が俺達目掛けて飛んできた。

 流星盾のお陰で弾き、ラフタリアやフィーロが蹴散らしてくれる。

 どうやら、免疫系の使い魔のお出ましのようだ。

 時々、寄生虫のような芋虫も出現し、強酸を撒き散らしていく。


「こりゃあ連合軍の連中を連れて来るのも一苦労になりそうだな」


 魔物の出現率も高い。そりゃあ心臓部が近いから、守りも厳重だろうしなぁ。


「拙者が先に戻って案内するでごじゃるか?」

「いや、まだ心臓部を見つけていない。そもそもこの道が正しいかの確証も無いんだ。行ける所まで行ってからにする」

「分かったでごじゃる」


 しばらく進むと赤い筋が塞がった道の前で垂れ下がっていた。

 ……この手のギミックはどっちかを切ると道が開くって奴だ。


「ラフタリア、あれを切ってくれ」

「あ、はい」


 ラフタリアは赤い筋を切断する。

 するとアッサリと肉の壁が開いて道が現れる。


「ほー……よく分かったでごじゃるな」

「他の勇者じゃないが、露骨に怪しいあの筋がな……俺の知る物にあるんだよ」

「そうなのでごじゃるか」


 さてと、進んだ所で今度は青い筋が見つかる。

 はぁ……こりゃあ、切るとさっきの道にも変化が起るな。


「ラフタリア」

「はい!」


 同じように切る、すると目の前の道は開いたが、後ろが閉じて、赤い筋が復活する。

 うわぁ。面倒。

 しかも、切断したことが警報になっているみたいで免疫系の魔物が群がってくる。

 で……結構進んでいったのだが……。

 扉の奥から心臓の大きな鼓動が聞こえてくる。

 近くの青い筋が見つかったから切った。

 のだが、扉が二重で手前の扉が閉まって奥のが開くのが見えた。

 面倒な事に、どこかで別の管を切らないと完全に開かないようだ。


「やってられるか! ラフタリア、赤い管を切れ!」

「は、はい!」


 赤いのを切ると手前のが開き奥のが閉まる……のを俺は流星盾を展開しながら突撃する。


「フィーロ! どこかに筋があるはずだから切り裂け!」

「うん!」


 流星盾がバキバキと音を立てる。

 外のより密度が高い攻撃のようだ。

 フィーロは辺りを確認しながら、スパイラル・ストライクを放って、大量出血をさせながら壁の中にある筋を切断した。


「――――――!?」


 奥の心臓部らしい所から声が聞こえたな。

 痛かったのだろう。

 再生は……するみたいだな。

 持って三十秒といった所か。


「行くぞ!」

「はい!」


 開いた心臓への道をそのまま進む。

 しばらくすると白い筋を発見。切ったら後ろが開いた。

 はっ! 素直に攻略するかっての。


「影、もしかしたら、ここで道を開き続ける役目をお前に言い渡すかもしれない」

「分かったでごじゃる。今、その命令をするでごじゃるか?」

「いや、もう少し後だ」


 やがて見えてきた道の先に青白い場違いな建造物……。

 青い、龍刻の砂時計だった。

 大きさはメルロマルクの砂時計よりは小さめだ。ただ、この霊亀の体内では些か浮いた存在感を主張している。


「龍刻の砂時計……?」

「青いですね」

「そうでごじゃるな」

「砂が少ないね」


 そう、フィーロが言うとおり、青い龍刻の砂時計の砂の量が少ない。


「あと、この文字はなんなのー?」


 龍刻の砂時計の真ん中にこの世界の文字ではなく、馴染み深い、数字の7という文字が付いている。

 一体何なんだこれは?

 砂時計に……目盛りのような刻みがある。

 全体の10分の1程度の量しか無いようだ。


 そっと触れてみようとした。

 フッと、すり抜けて、青い砂時計に触れることが出来ない。

 国にある龍刻の砂時計とは何かが違う。

 あれは波の到来とクラスアップやLvダウンと言った機能を持っているが、これが何なのかは分からない。


「気にしていてもしょうがない。今は確認することが先決だ」

「はい!」

「後で調査すれば良いでごじゃる」

「はーい」


 青い砂時計を通り抜けて少し進んだ先で、俺達は心臓を発見した。

 大きさは6メートル以上、二つに分かれた色の心臓の両方に目を持っている。


「これが霊亀の心臓か」

「そのようでごじゃるな。何とも禍々しい生き物でごじゃる」


 俺たちの声に目が視線を向けてくる。

 どう見ても歓迎しているような態度じゃねえな。


「―――――!!」


 コイツを封印するのか。

 ジュッと、光が流星盾にぶつかって反射する。

 しかも目から高出力の光線を発射する。

 霊亀の心臓は目を大きく見開き振動した。

 すると霊亀の使い魔が何処からともなく現れた。

 これは厄介な相手だな。封印するにも連合軍の連中は上においてきているし、様子を見るだけだから戦う必要は無い。

 大方、無限に呼び出してきそうだ。


「とりあえず、弱らせておくか。影は下がって居ろ」

「はい!」

「うん!」

「分かったでごじゃるよ」


 ラフタリアとフィーロが結界から飛び出し、霊亀の心臓目掛けて突撃する。

 それぞれ必殺技を撃たせる訳には行かない。


「陰陽剣!」

「ぷちくいっくー」


 霊亀の心臓の両目にそれぞれ攻撃が命中する。


「―――――!!」


 おうおう、暴れる暴れる。辺りがこれでもかと振動した。

 そして霊亀の心臓に巨大な魔法陣が展開される。

 何かしてくるようだな。


「ラフタリア、フィーロ、下がれ」

「了解です」

「はーい!」


 流星盾の範囲に戻った二人は俺を盾にして攻撃に備える。

 霊亀の心臓が黒い……魔法の玉を俺に向けて撃ち出した。

 俺はそれを受け止める。

 バキンと音を立てて、流星盾が壊れた。

 そして盾に黒い玉はぶつかり、光が歪んだ。

 体が重い!

 これは、超重力の魔法だ。

 体がとてつもなく重く感じる。

 しかし、俺の防御力はこの程度で抑えられるものではない!


「でりゃあああああああ!」


 玉を盾で右へ逸らし、超重力の玉を弾く。

 さすがに外の強力な電撃は放てはしないようだ。

 ま、そうだよな。自分の心臓を破壊するような真似はさすがの霊亀も出来ないのだろう。

 と、分析していると霊亀の心臓を伝う管に……白い魂のようなモノが循環されていく。

 それが心臓を中心に部屋に飛び散った。


「流星盾!」


 咄嗟に流星盾を張りなおす。

 ……一応、やり過ごしたが……この攻撃はなんだったんだ?

 分析するにも受けなきゃいけないし……。とりあえず注意しないといけないな。


「よし、戦えなくは無い。連合軍をここに連れて来る為に撤退する」

「了解でごじゃる」


 俺達は霊亀の心臓を後にして撤退するのだった。

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