[4a-44] FILE:所々焦げた日記
今日は、まじょさんに日記を見せました。
「字を書くのが上手くなったね」とほめてくれたけれど、「でも日記は誰かに見せるため書くものじゃないから見せなくていいんだよ」とも言っていました。
だけど、どうしてか私はこれを誰かに見てもらいたかったんです。
そうしないと私が消えてしまうような気がして。
私はアンデッドになってから、育たなくなりました。
いつまでも小さくてやせっぽちのまま。
私は大人になったら誰もがみとれる美人になるって、昔はどうしてか思いこんでいたけれど、本当はどうだったのかもう分かりません。
いつまでも自分が変わらないことが、たまに、急に怖くなります。
そんなとき、私は、自分が何をしていたのか、日記に書いておきたくなります。
そのことをまじょさんに話したら「よくあることよ」と言っていました。
今日も昼閒はまじょさんのお手伝い。←最近、ダークエルフの男の子がいじわるしてきます。やだなあ。
夜はお城の明かり番です。
疲れることも、おなかが空くことも、凍えることもないのだから、いつまでも働いていられるのだけど、時々私は本当に働き者だと思うことがあります。
シエル=テイラ亡国は、少しずつ大きくなっています。
昨日までは何もいなかった場所でスケルトンが仕事をしていたり(姫様はゾンビよりスケルトンの方が好きみたい。臭くないからかなあ?)、お城から見える山のふもとでも兵隊さんの訓練が少しずつ大きくなっていたり。
そんな中で私は、強くもないし、特別な仕事もできない、一匹のジャック・オ・ランタンにすぎません。
だけど、それでも私が自分を特別だと思いたくなってしまうのは、私が生きていた頃の身体を姫様にお貸ししたことがあるからです。
そして私はその時に、姫様の怒りと悲しみを自分のこととして感じました。
だからこそ私は姫様を放っておけないと思っていて、姫様のためにお仕事をしようと思っているのですが、こんなにたくさんの人とまものがいる中で、私は姫様にとっての、何になれるのでしょうか?
そんなことを思って、トレイシーさんと話したことがあります(3ヶ月くらい前です。日記には書き忘れていました)。
生きていた頃から名前を知っている人だったのできんちょうしました。
だけどトレイシーさんは私なんかのことも、私のお仕事も知っていたので感動しました。
姫様と仲が良さそうだったから、姫様の気持ちが分からないかと聞いてみたのだけれど「ぜんぜん仲良くなれてないよ」「守りがかたくて苦戦してるとこ」なんて、よく分からないことを笑いながら言っていました。
私の考えを話したところ「その気持ちは今は通じないかも知れないけれど、いつか必要になる」と言っていました。
私には、やっぱりよく分かりませんでした。