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[4a-40] FILE:魔女の研究ノート


 姫様がエルフの姫巫女を喰らったことで新たに発現した能力。

 便宜上『異界創世』能力と名付けるが、これは姫様自身を核として『隠れ里』を作り上げることができる。


 この能力によってどの程度の事ができるのか?

 制限は何か?

 未だ不明な点は多いが、最近一つ分かった事がある。

 他者の魂をサブエンジンとすることで、より広範囲に、強力な異界を展開できるということだ。


 これはゲーゼンフォール大森林の聖域を維持していたシステムの構造を参考に私が提案したところ、見事、姫様がものにした。

 かの森ではエルフの父祖たちの亡魂が聖域に取り込まれ、聖域を形作るシステムの一部として駆動させられていたのだ。

 人の魂はいずれも微少ながら神秘の力を持ち、精神の在り方を極限まで研ぎ澄ますことで、小さな奇跡たる魂源魔法プライマルスペルを発動可能となる。つまり、人には奇跡を起こす力が生来備わっていると言える。

 普通ならそう簡単に、人の魂を魂源魔法プライマルスペルが使える状態にしたり、思い通りに動かすことなどできないが、軸となるものを補助する形でなら『集合的・緩やかな同意』により異界展開の補助を行い、僅かながら奇跡の力を発揮して後押しができるようだ。

 ゲーゼンフォールの聖域は、さらに取り込んだ父祖の魂を実質的に洗脳することで研ぎ澄まし、エンジンとしての出力を高めていた。

 それと同じような原理で、異界を強化できるのだ。


 実験台になることを泣き叫びながら快諾してくれたトレイシーを、魔法で深い瞑想状態として姫様の異界の中に配置したところ、僅かではあるが有意に出力の向上を確認した。

 これはトレイシーがなんだかんだ言いながら姫様に同情的であるため、無意識状態で異界の駆動を後押ししたもの。

 言い換えるなら、姫様に好意的な者を多数、異界に取り込むことができれば、姫様の異界は強化されるわけだ。

 ただしトレイシーの消耗も大きかった。実用のためには、出力的な意味で考えても損耗的な意味で考えても、多数を取り込む必要があるだろう。


 この理論を『プロジェクト・C』へも組み込めるだろうか。

 さらに発展系として機関化した魂を安定稼働させられるなら、姫様が居ない間も展開状態を維持できるかも知れない。

 戦闘力の面でも、居住性の面でも、大きく改良されることだろう。

 何よりロマンがあるじゃんか、忠実な部下が増えるほど力を発揮する居城なんて。




 しかし確かに姫様は強大な力を持つが、やはり、これほど魔物たちが追い詰められている状況なのに、それで与えられた加護としてはかなりショボい印象だ。

 思うに、邪神さんは『成長する能力』『勢力を築ける能力』を与えることで、最小の投資で最大の戦果を狙っている。そして加護を出し惜しみすることで姫様がダメだった時の保険も掛けているわけだ。

 虫の良い話だ。

 だけど逆に考えたら、とにかく加護をばらまく作戦を変えて、完全敗北のリスクを取ってでも力を温存し、ここぞという所で一気に全てをひっくり返そうとしているとも言える。


 なら、やってみせようじゃないか。

 姫様と私に全てを賭けさせてあげよう。

 私の素敵な絵空事を、現実のものとしてくれよう。


 トレイシーは魔法で催眠状態にされている間に魔女さんにナニカサレタかも知れないし、この後魔女さんの研究室で七色の点滴を繋がれてセクハラまがいの治療を受けたかも知れない。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゲーミング点滴まで・・・
[良い点] 更新お疲れ様です、ありがとうございます! [一言] 観測されなければ現実ではないってどっかのにゃんこも仰ってるからトレイシーはまだセーフ
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