[4a-32] FILE:赤薔薇の日記②
久々に丸一日時間が取れそうだったので、今日はシエル=ルアーレの仮設王城内でガーデニングをした。
地球と違い、こちらは基本的にどの街も地脈の規模に応じた壁で囲われているので、庭は狭いか無いのが普通。贅沢に庭を拵えるのは特権階級の証だという。
もっとも、それは壁の外に出れば魔物に脅かされる人族の視点の話で、魔物となった今のわたしには関係無いことだけれど……
正直、どういうのが高級なのか分からず、適当に魔法で地形をいじっていたら日本庭園っぽい形になってしまった。ウダノスケにはこれがワビサビだと教えておいた。
植物はゲーゼンフォール大森林から持ち出した毒草類を配置。
事前に注文しておいたので選りすぐりの株が献上された。
ひとまず仮配置したところでトレイシーが「毒々しすぎる」とツッコミ。
言われたとおりに直してみたら、置いている植物自体は変わらないのに見栄えが良くなったような気がした。
彼は本当に色々な特技を持っている。
その後、エルフたちの自然魔法で定着させる。
邪気に冒されて変異した植物はエルフたちにとっても未解明の部分が多く、特殊な環境である大森林の外に持ち出しても育ってくれるかはまだ分からない。
わたし自身多忙であるし、やっぱり日々の維持を行う庭師は必要だろう。
小川にする水路部分はまだ空っぽなのが寂しい。
城が完成して水を流すときが来たらここに魚も飼いたい。スペースの都合上難しいかも知れないけれど、できれば侵入した勇者の一人くらい噛み殺せる中ボス級のやつを。
代わりに庭園に犬を放ったら絵になるかと思ったが、フォージは大きすぎてすぐに花壇を一つ踏み潰してしまい、仕方なく出禁にした。
埃を被っていた例の骨灰も、ようやく肥料にできた。
政治家は公約を守るべきだと常々思う。
庭園の隅の実験スペースにミアランゼも植えた。
肥料と混ざらないかちょっと心配だったけれど、エヴェリス曰く大丈夫らしい。
「人間は牛を食べるけど、そのせいで牛にはならないでしょ?」とのこと。なるほど。
すぐに芽を出して幼児程度の大きさになった。いくら魔女さんの手が入ってると言っても、ヴァンパイアがこんないい加減な生態だったなんて……
姫様、同系色を固めるのはよくないよ
あとは目を惹く大きい花なんかは歩きながら自然に順番に見える配置の方がいいかな
「強いものに強いもの合わせたらもっと強い」みたいな脳筋思考はやめて!
あれだけの罠を回避して忍び込んだのは凄いけれどそろそろやめなさいトレイシー
読まれる前提で書いてる日記なんだからいいじゃん!
日記帳の余白はコメント欄じゃないのよ?
新作『災害で卵を失ったドラゴンが何故か俺を育てはじめた』集中更新中です!
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久々にめちゃ好調で、一週間くらい日間ハイファンの表紙に居座ってます。
もうじき第一部完結です。是非ともお読みください!