[4a-20] FILE:童話 妖精のお茶会
ある日、正直者の木こりは、歩き慣れたはずの森の中で道に迷ってしまいました。
どうして道に迷ったのか不思議に思いながら歩いていると、どこからか甘いにおいがします。
においに誘われて森の中を進んでいくと、大きな大きな切り株の上に美味しそうなケーキとお茶が並んでいて、それを妖精たちが囲んでいるところに出くわしました。
正直者の木こりは、妖精たちに帰り道を聞こうとしましたが、妖精たちは驚いて逃げ出してしまいました。
途方に暮れていると、一際美しい姿の妖精が現れました。
「私は妖精の女王。あなたはどうして私たちの森に入ってきたのですか?」
「道に迷ってしまったのです。帰り道が分かればすぐに帰ります」
「ならば、この宝石を持って行きなさい。迷うことなく森から出られるでしょう」
妖精の女王は正直者の木こりに、綺麗な宝石を手渡しました。
正直者の木こりはお礼を言って、宝石を持って森の中を歩き始めました。
すると不思議なことに、すぐに森から出ることができました。
森から出られた正直者の木こりは、この出来事を領主様に伝えて、宝石を献上しました。
領主様は宝石をたいそう気に入り、正直者の木こりに沢山の褒美を取らせました。
この話を聞いた欲張りな木こりは、自分も宝石を貰ってこようと森の中に入りました。
森の中を歩いていると、どこからか甘いにおいがします。
においの元を探して歩いて行くと、話に聞いたとおり、妖精たちがお茶会をしていました。
妖精たちは欲張りな木こりを見て、やっぱり驚いて逃げ出してしまいました。
その時、欲張りな木こりのお腹がぐうと鳴りました。
妖精たちが逃げた後、切り株のテーブルの上には美味しそうなケーキがたんと残されています。
欲張りな木こりはたまらずケーキを食べました。
すると、そのケーキは今まで食べたことがないほど美味しいものでした。
欲張りな木こりはもう夢中で、ケーキを全て食べてしまいました。
そこに妖精の女王が現れました。
「私は妖精の女王。あなたはどうして私たちの森に入ってきたのですか?」
「道に迷ってしまったのです。帰り道が分かればすぐに帰ります」
「ならば、この宝石を持って行きなさい。迷うことなく森から出られるでしょう」
話に聞いたとおりの事を欲張りな木こりが言うと、妖精の女王は宝石を手渡しました。
欲張りな木こりは、しめしめと笑いながら帰っていきました。
ところが、いくら歩いても帰り道は見つかりません。
ケーキを食べられてしまった妖精たちが、怒って魔法を使ったのです。
欲張りな木こりは家に帰ることができないまま、やがて森の木になってしまいましたとさ。