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side-A 約束の日
彼女との約束の日。
俺は出来上がった五枚の蹄鉄を彼女の前に並べると、仕上がりに不満はないか確認を依頼した。
最初、俺は四枚の蹄鉄を打つのかと思っていた。しかし、左前足の蹄鉄に関しては二枚を製作してほしいとして依頼されたので、全部で五枚の製作となった。
目の前に並ぶ製品を手にとって確認してから満足げに頷くと、彼女は代金と共に一枚の蹄鉄を差し出した。
「…おい」
それは左前足用の一枚。
確かに依頼通りに製作したのだが、どういうことだ。
困惑する俺に、彼女はただ持っていてほしいとだけ告げると、そっと俺の手に握らせてきた。
それでも受け取れないと返そうとしたが、彼女のまっすぐな眼差しを見ると何も言えなくなってしまう。
彼女の意図は分からない。しかし彼女の願いならばと、俺は諦めて受け取っておくことにした。
「ありがとう」
そう言って立ち上がると、彼女は表口へとゆっくりと歩を進めていく。
その足取りは彼女にしては珍しく、いつもの凛々しさが感じられなかった。