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第四話:おっさんは先へと進む

 第二エリアの奥にある部屋にたどり着く。

 そこには宝箱が設置されていた。

 これを入手できるのは限界の速さを成し遂げたものだけだ。

 ルーナはよくやってくれた。


「これ、特別なほうの宝箱!」

「やったね。なにかな、なにかな?」


 ルーナが【解錠スキル】を使い、宝箱をあける。

 彼女たちの言う通り、この宝箱はボス報酬などと同じく特別なものだ。

 ちなみに中身も固定。

 最速を求めるギミックに相応しい物が入っている。


「あったのは靴。すごく軽い」

「あっ、私にも触らせてよ。ほんとだ軽い、羽みたいだね」

「【風神の靴】、ここでしか手に入らないアクセサリーだ。誰が使うかだけど、やっぱりルーナかな?」

「ぶうぶうぶうぶう、ルーナばっかり新装備ずるいよ」


 ティルが頬を膨らませているが、これを使いこなせるのはルーナしかいない。


「見て、履いてみた。ぴったり!」


 それはそうだろう。ダンジョン産の装備は、装備者にあわせてサイズ変更がされるのだから。


「【風神の靴】の力は二つ。一つは速度の上昇補正。アクセサリーの中では、補正値が一番大きい」

「ちょっと、走ってみる」


 ルーナが部屋の中でスプリントを披露した。

 すでに防具は、速度重視からいつものに戻しているのに、その速度はさきほどギミックに挑んだときより、若干遅い程度。

 つまり、防具+アクセサリー+付与魔法で成し得た速度に、アクセサリーひとつで肉薄することができる。


「二つ目だ、その靴だけがもつ特殊能力がある。空を蹴れる。とはいえ、着地するまでに一度だけだがな」

「んっ、そっちもやってみる」


 ルーナがジャンプした。

 そして、最高点でさらにジャンプ。

 ルーナは垂直跳びで、二メートル半ばほど跳べる。それが単純に二倍。

 五メートル以上の大ジャンプが可能になった。


「これいい。今まで届かなかった弱点だって狙える」

「ああ、それがこの靴の強みだ。探索にも役立つ。なにせ、普通じゃ届かないところにも届く。うちはエルリクがいるから、後者はあまり関係ないが」

「きゅいっ!」


 全装備で唯一の二段ジャンプが可能になる装備。

 だからこそ、プレイヤーたちはみんな欲しがった。


「ですが、これを装備するかは考えものですね。ルーナちゃんの速度は素でも最高クラスです。二段ジャンプは有用ですが、属性ダメージカットや、防御力上昇、それらより優先する必要があるかは疑問ですね」

「ああ、使い分けになるだろうな」


 ルーナは基本的に、かつて手に入れたホワイトルビーを使ったアクセサリーを装備している。

 あれは防御力が上がるうえに、全属性に対する耐性を付与する、極めて強力な守りだ。

 総合力は、【風神の靴】より上と言える。


「んっ、ルーナもそう思う。やっぱり、いつものアクセサリーにしとく」

「ただ、例外はある。敵の弱点に届かないときだな。そういう場合には、【アサシンエッジ】を活かすために、そっちを使ったほうがいい」

「わかった。いつもユーヤに投げてもらったり、転倒させてようやく狙える弱点がいつでも狙えるのは便利」


 ボスは大型の魔物が多く、しかもその弱点がかなり高い位置にある場合が多いのだ。

 そして、このダンジョンの最奥にいるボスもその例に漏れない。

 というより、この靴はそいつを倒すために配置されている節もある。


「その靴を履いているときは、いつも以上にルーナを守るのに神経を使わないといけないということね」

「ああ、セレネにかかっている部分だ。期待している」


 守りを捨てるのなら、そのフォローがいる。

 俺はセレネならできると思っている。


「さあ、宝箱は回収した。おやつタイムだ」

「おやつ!」

「甘いのがいいよね」

「……いいのかしら、何もしてないのに休憩して」

「ここから先は休めないですからね、いいと思いますよ」

「忠告しておく。しっかりと食べて休んでおかないと死ぬぞ」


 シリアスなトーンでの忠告にみんながこくこくと頷く。

 早速、携帯調理器を使いフィルがお湯を沸かし始めた。

 第三エリア前に、エネルギーを補給しておかないと。


 ◇


 おやつタイムを終えた俺達は先へ進む。

 第一エリアも第二エリアも、ほとんど魔物と遭遇してこなかった。

 しかし……。


「うわぁん、また来ちゃったよ」

「ティル、できるだけ魔法を中心にしてください。矢の在庫がそろそろ危ういです」

「わかってるけど、魔法だけじゃ追いつかないよ!」


 第三エリアは、地下墓地となっている。

 地下だけあって、相変わらず人工物で構成されている。

 ちなみに、第一エリアで大量に焼き払ったグールどもは、実はここの出身だ。


 一体一体はさほど強くないのだが、とにかく数が多い。

 何百体も倒してたどり着いた最果ては開けた空間で、無数の墓標が並んでいる。俺達が入った瞬間に入り口がしまった。

 そして、視界を埋め尽くすほどのアンデッド系の魔物が襲いかかってくる。

 それと同時に声が響き、今の状況に至る。


『すべての迷える魂を解き放て、さすれば道は開かれん』


 ……言い換えれば、アンデッドを全滅させないと先には進めない。


「【神雷】!」


 ティルの魔法が発動。

 広範囲に雷が降り注ぐ。

 それを合図に前衛組が飛び出し、体力が大幅に削られたグールどもにとどめを刺す。

 ……体力調整が絶妙だ。

 ぎりぎり、上級広範囲魔法で倒れない程度になっている。


「うわぁん、いったいどれだけいるんだよぅ。もう百体は倒したのにぃ」

「ん、そろそろ疲れてきた」


 ティルが泣き言を漏らすのもわかる。

 ただ、そんなことを言えるうちはまだ余裕がある。

 俺はティルに向かって剣を投げる。

 その剣はティルの顔面すれすれを通り過ぎていく。


「きゃっ! なっ、なにするんだよ」

「集中力を切らすな。やつらは地中から出てくる。前だけ見てると後ろから食われるぞ!」

「うわっ、危なっ」


 ティルの背後から忍び寄っていた、ゾンビマスターの顔に剣が突き刺さっていた。

 ティルは狙撃手だけあり、周囲の気配に敏感だが長時間の戦いで集中力が欠けてきているせいで、見落とした。

 黒の魔剣を失ったことで、予備の剣に切り替える。


「んっ! 抜けない」


 ルーナが脂汗をかいている。

 突き刺した短刀ごと腕をファットグールの分厚い脂肪に挟まれて、四苦八苦している。

 そんなルーナに背後から、別のアンデッドが襲いかかり、弾丸のように突進してきた竜に吹き飛ばされた。

 おまけにその竜はスタン属性のブレスをファットグールに吐きかけ、スタンしたことで、ルーナの手が抜ける。


「エルリク、ありがとっ!」

「きゅいっ!」


 エルリクだ。

 使い魔システム上は、稀にサポートスキルを使うだけの存在。

 だけど、大好きなルーナの危機にシステム外の行動をとった。

 エルリクも成長している。


「気付いているか!? アンデッドの湧きが止まった。つまり、あとは目の前にいる奴らだけだ!」


 俺の檄を聞いて、みんなの目に光が戻った。

 終わりの存在、それが何よりの希望となる。


「もうひと踏ん張りというわけね!」

「……この数なら、もう矢の節約は必要ありません。全力でいきます!」


 さあ、ようやくアンデッドマラソンが終わる。

 最後まで気を引き締めて行こう。


 ◇


 あれから二十分ほどで、ようやくアンデッドマラソンが終わった。


『ありがとう。迷いし魂たちは救われた』


 謎の声がするのと同時に、奥の扉が開かれた。

 全員がその場に座り込む。

 珍しく、フィルまで息を乱していた。

 矢の節約をするために、貫通撃ちなどかなり集中力を要する技を使っていたせいだろう。


「ふう、疲れました。でも第一エリアや第二エリアに比べると、まだマシでしたね」

「ここは、条件によって難易度が変わるからな。一番ぬるい条件で挑めてよかったよ」

「うえっ、これでもめちゃくちゃきつかったよ」


 第三エリアの集合墓地には特殊なギミックがある。

 第三エリアの地下墓地で命を落とした冒険者が、アンデッドとして、最後の墓地に出現する。


 ようするに、地下墓地で死ねば迷える魂の仲間入りだ。

 冒険者ゾンビのステータスと装備はそのまま。

 ゾンビになったことでプレイヤースキルは最低ランクになるが、ここまで来る冒険者である以上、脅威というほかない。


 グールの群れと一緒に、冒険者ゾンビと戦うなんて笑えない。

 ちなみに、冒険者ゾンビは一度でも倒されたら、もう復活しない。だから、誰かがクリアした後だと非常に楽ができる。

 それもあり、誰かがここで失敗したと思ったら、ババ抜きをしてもらってから進むのが鉄板。

 ただ、冒険者ゾンビに冒険者が殺されて、冒険者ゾンビが二パーティ分になってしまうこともあるが。


「ここに来たのルーナたちが初めてで良かった」

「うんうん、強いゾンビとかやだよ」

「もしかしたら、私たちより先に来た人がクリアしているかもしれないわ」

「もし、そうならすごいですね。なんの事前情報もなしに、第三エリアまでクリアしてしまうなんて。それはもう超一流って言葉ですら、不足です」

「たしかにな」


 初見殺し大好きなダンジョンの中でも、ここは群を抜いている。

 洞察力、危機感知能力、推理力。それらが並外れていないと不可能だ。


「今日は、次の部屋まで行けば終わりだ。フィルは先に行って食事の用意をしてくれ」

「ええ、美味しいものを作ります」

「やったごはん!」

「お腹空いたよ!」

「きゅいっ!」


 お子様二人組withエルリクがいつもの謎ダンスを始める。


「フィルさんはってことは、私たちは何かしないといけないのね」

「ああ、今から数百体のアンデッドが落としたドロップ集めだ。食事はそれが終わってからだな」


 お子様二人組の謎ダンスが止まり、項垂れる。


「終わる気がしない」

「アイテムがいっぱいで面倒なんて思ったの初めてだよ!」

「急ぐぞ、もたもたしてると食べるまえに食事が冷めてしまう」


 疲れた身体に鞭打って、今日最後の仕事を始める。

 面倒ではあるが、これだけあれば、かなりの資産になるのだ。

 ここに来る前に限界まで容量をあけておいて良かった。


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