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第五話:おっさんは地底湖を進む

 なんとか、水竜が潜む地底湖がある浮島までたどり着いた。

 たどり着くなり、水竜の洗礼を受けて乗ってきた船は破壊され、俺たちも津波で吹き飛ばされている。


 水竜に挑むのは、今回のクエストにおける収集素材、【水竜の霊肝】を得るためだ。

 特殊な霊薬に使われる素材であり、代替できる素材がない。


 これは、驚きの事態だ。

【水竜の霊肝】でないと治せない病気は黒石病といい、ゲームではイベントにしか出てこない特別なものだった。

 そんな特殊な病の罹患者がいる。

 つまり、ゲーム時代にイベントや伝説でしか登場しなかった特殊な病、呪い、そういったものが現代は猛威を振るっているということを意味するのだ。

 これらは特定素材を使った薬や、特別な魔法でないと治せない場合が多い。


 もし、ルーナたちがそういう病や呪いにかかっても大丈夫なように、覚えている病と呪いの対抗策は書き出しておこう。


「ユーヤ、ここからどこへ行けばいい?」


 さきほど、水竜が引き起こした津波でびしょびしょになったルーナが尻尾を振るわせて水気を飛ばしながら問いかけてくる。


「あ、ああ、そうだったな。この先に地底湖に続く石で出来た洞窟があるんだ」

「ん。わかった」

「ユーヤ兄さん、その地底湖にはさっきのおおきな蛇がいるんだよね? 地底湖っていうからには、湖だし、陸地があっても、水の中に逃げられたら手の付けようがないよ」

「その心配はない、地底湖は陸地の割合が七割だ。北のほうに運河と繋がっている水辺があるとはいえ他はしっかりとした足場だ。水竜はひどく攻撃的で、縄張りに入られることを嫌う。地底湖までたどり着けば、水の中から飛び出して敵を排除しようとするんだ」


 その極端な縄張り意識が付け込む隙となる。

 水の中に引きこもられたら手の付けようがないが、その攻撃的な性格ゆえに、自らが不利になる陸地で戦ってくれる。


「それなら安心だね。北のほうに水があるなら、南のほうで待ち伏せしてればいいだけだし」

「ただ、注意が必要な攻撃パターンがある。足首を咥えて、水辺に引きずり込もうとするんだ。それをもらったら終わりだな」


 いくら防御力があろうと関係ない即死攻撃。

 俺たちの筋力ステータスは高いとはいえ、あの巨体と馬鹿力だ。抗うことはできないし、防御力があっても水の中に沈められれば死ぬ。


「ユーヤおじさま、それってシャレになっていないわ。あんなのに綱引きで勝てる気がしないもの。噛みつかれたら終わりというわけね」

「だから、対策を全員に渡しておく」


 魔法袋から、黒い魔石を十五個取り出し、全員に三つずつ渡す。


「あっ、これってウナギ狩りに使ったやつだね」

「ん。すごい音がしてどっかーんってするやつ」

「【音響爆弾】ですね」

「そうだ。水竜は強烈な音に弱い。引きずり込もうとされれば、その【音響爆弾】を頭に叩きつけろ。その爆音で意識が飛んで、顎の力が緩む」


 水辺に住む魔物は音に弱いものが多い。

 奴らは、水面に獲物が落ちたとき、その音を頼りに捕食する性質を持つため、音に敏感だ。その敏感さゆえに大音量を叩き込まれるとパニックになる。


 全員、【音響爆弾】をポケットなどの取り出しやすい位置にしまう。

 これがあれば水辺に引き込まれて即死はしにくい。

 逆に言えば、【音響爆弾】などの対策を用意していなければ、即死なのだが……この世界のボスクラスの魔物にはよくあることだ。初見殺しを楽しむゲームだが、現実となった今は笑えない。


「今回は私が大活躍だね。あれ、どこからどうみても風(雷)属性が苦手っぽいし」

「ルーナは不安、あれ、どこが弱点かわかんない。ユーヤ、教えて」

「弱点は、瞳と心臓付近だがなかなか狙えない。蛇の胴体のどこに心臓があるかなんて、俺にもわからない」


 全長30mの巨大蛇である水竜。あれだけ胴が長いと心臓の位置の特定はほぼ不可能で、刺しまくって試すしかない。

 瞳も、攻撃がとどく位置にはなかなか落ちてこないので狙いにくい。


「がんばる。もしかしたらルーナにならわかるかも」

「期待している。ルーナなら本当にできそうだ」


 知識でも経験でもない、野生の勘らしいものがルーナにはある。彼女なら、なんとかできてしまいそうだ。

 しばらく歩くと、石でできた洞窟が見つかった。

 その中に俺たちは足を踏み入れた。


 ◇


 天井が高い洞窟で、どんどん下へ下へと下っていく。

 道幅も広く、その中央には水が流れてた。

 その水の流れに沿って移動する。


「ううう、この水たまりから水竜が飛び出したりしないよね」

「一応、水竜がいる地底湖につながっているが、それだけ浅いとあの巨体が昇ってくるのは無理だ」

「ふう、それなら安心だよ。こんなところで、あんなの出会ったらどうしようもないもん」

「たしかにな」


 そんな絵面、想像もしたくない。


「ユーヤ、このダンジョンに来る前に言ってたエビのユニーク食材、結局一度も見なかった。どこに落とす魔物が住んでる?」


 ルーナが不安そうに問いかけてくる。

 今回の冒険で目当ての世界で一番美味しい海老が手に入らないことを恐れているのだろう。

 もうすぐ水竜との戦いだというのに、食い意地優先なのがルーナらしい。


「ああ、それか。地底湖の浅瀬にいるんだ。水竜は強烈な魔力を纏っていて、その魔力が漏れ出た地底湖で育ったルビー・シュリンプが突然変異して、そいつがドロップする」


 だからこそ、エビのユニーク食材を知っているものはごくわずか。水竜がいるこの浮島に近づくこと自体が自殺行為で、そいつの寝床である地底湖の水に浸かってエビを探すなんて正気の沙汰じゃない。

 それを聞いたセレネが表情を引きつらせながら口を開く。


「……その魔物を狩るの、ほとんど自殺しにいくようなものだと思うわ」

「たしかに、水竜がいるときは自殺行為だ。だが、倒したあとならゆっくりと探せる。うまいエビを食べたければ、がんばることだ」

「ん。がんばる!」

「やる気が出てきたよ!」

「きゅいっ!」


 ユニーク食材と聞いて、お子様二人組とエルリクががぜんやる気をだしてきた。

 そんな二人が落ち着くのを待って、注意しないといけない攻撃パターンをいくつか教えておく。

 三竜と比べれば危険度は少ないが、蛇型なだけあってトリッキーな動きが多い。

 地上に出てきた水竜であれば、俺たちならミスがなければ勝てる。……逆に言えばミスをすれば死ぬ。

 油断はできない。


 ◇


 一時間以上、地底湖に続く洞窟を歩き続けた。

 途中、貴重な魔法金属が埋まっているポイントがあったので、採掘を行った。

 こういうときのために、魔法袋には魔法のツルハシが用意してあるのだ。


「ユーヤ、きらきらしてる宝石が見つかった!」

「こっちはミスリルだよ!」

「面白いぐらいに鉱石が出るわ」

「楽しくなってきますね」


 ダンジョン内には稀に、こういう採掘ポイントがある。

 収穫としては、ミスリルとライトクリスタルだ。

 どちらも、いい素材だ。大事に取っておこう。


 魔物ともそれなりにエンカウントしている。水辺の魔物が多く、昨日も戦ったルビー・シュリンプや槍を持った半魚人、巨大タコ、スナイパー・オクトなどとも戦った。


 水辺の魔物に出会えるダンジョンは少なく、これらの素材が集められたのは僥倖と言えるだろう。


 エビ肉(上)を手に入れて、お子様二人組も上機嫌だ。

 万が一、ユニーク食材を手に入れられなくても夕食には困らない。

 さっそく、フィルにこれでエビフライを作ってとおねだりしている。エビしゃぶも絶品だったが、エビ肉(上)を使ったエビフライにも興味があるらしい。


 そんなこんなで、順調に進んできた。

 水竜は、この浮島にくるまでのハードルが高い分、ダンジョン自体には謎解きや凝ったギミックは仕掛けられていない。


 そして、地底湖が見渡せる場所に出る。

 切り立った崖から、地底湖があるフロアの様子を眺めることができるのだ。


「ユーヤ、とっても広い」

「なんか、すごいね。奥のほうにある水場、もう真っ青だよ」

「すごい力を感じるわ。大運河が青く染まるほどの魔力、その大本だもの」

「ああいう魔力が溜まったスポットは、その力を受けて魔物が強化されていて狂暴です。あそこに引摺り込まれることだけは、避けないといけません」


 俺の知識通り、地底湖があるフロアは平らでやたらと広く、北に青く輝く水場があり、地下を通じてそとの大運河と繋がっている。

 この崖には梯子が吊るされており、これを使って降りなければならない。


「ここを降りれば、奴に捕捉される。準備はいいか? 【帰還石】と【音響爆弾】は取り出しやすい位置にあるか?」

「ばっちり」

「私もいけるよ」

「覚悟はいいわ」

「行きましょう」


 全員の返事を確認して、誰かが手を滑らしたときのために真っ先に俺が下りる。

 ただ、地面に足をつけると即座に奴は跳びかかってくるので全員がすぐに降りれる位置に来るのを待つ。


 目線で合図を送り、それから飛び、後続のルーナたちも素早く降りて態勢を整える。

 地響きがする。

 青く輝く湖が割れ、白い巨体を躍らせて水竜が躍り出る。


「UGAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA」


 地面にその巨体を叩きつけ、そのまま這いずりながら脅威的な速度で迫ってきた。


「いくぞ!」


 返事を待たずに走る。

 蛇型の魔物は、動きがひどくトリッキーだ。

 きっと、ルーナたちは苦戦するだろう。

 だが、それはいい経験になる。

 対策を教えたのは、本気でシャレにならないパターンだけ。即興で彼女たちがどう対応していくのか、成長を確かめさせてもらおう。

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