表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
619/2310

俺の中にあるのかもしれない

【重要なお知らせ】

活動報告にも記事を作っていますが、『勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした』のコミカライズの続報です!

8月25日に発売のコンプエース10月号より連載が始まります! お手に取っていただけたら光栄です。



 火の二月24日目。今日は朝から天気もよく、気温もちょうどいい感じだったので、ベルのブラッシングや世界樹の苗への水やりといった日課を済ませたあと、ショッピングに繰り出した。

 特にこれといった目的があるわけではないが、こうしてブラブラするのもいいものだと思う。


 よく行く少し高価な店が並ぶ通りを過ぎ、大勢の人でにぎわうシンフォニア王国首都でも一番大きな通りへやってくる。

 メインストリートと言っていいこの場所には、本当にいろいろな店があるので見ているだけでも結構楽しい。とりあえず王城の方に向かってのんびりと歩くことにしよう。


 そんなことを考えながら、道行く人たちと店を眺めつつ歩いていると……ふと真新しい外観の店に目が留まった。

 お洒落な雰囲気のその店の前にある立て看板には『本日オープン』と書かれており、できたばかりの店であることを示していた。

 なんの店だろうか? 店の形もお洒落な感じだし、扉とかにも幻想的な模様が描かれてる。なんとなく魔法チックな店って感じがするけど……もしかして、魔法具店とかかな?

 だとしたらちょっと、いや結構興味がある。店の外観もいい雰囲気だし、新しくできた店というのも日本人としては非常に興味をそそられる。よし、折角だし入ってみよう。


 そして俺が扉に手をかけ、店の中に入ると……。


「いらっしゃいませ! 記念すべきお客様第……いち……ご……う?」

「……」


 やや癖のある茶髪で目元が隠れ、目は見えず、幻想的な模様の入った黒地のローブに身を包んだ……妙に見覚えのある女性が出迎えてくれた。

 女性は明るい声で「いらっしゃいませ」と告げたあと、俺の顔を見て硬直し……少ししてガックリと床に手をついて頽れた。


「……なんですか? 私、前世かなにかで悪いことしたですか? なんで、よりにもよってお客様第一号が、滅茶苦茶見覚えのある人間さんなんですか……というか、もう完全にこの人常連じゃないですか……」

「えっと……六王祭で占いをしていた方……ですよね?」


 そう、この女性は六王祭でアイシスさんと一緒にまわっているときに見つけた相性占いの露店の店主で、その後も同行者に希望され、何度も足を運んだので顔を覚えていた。

 そういえば、最終日にシロさんと行ったときに、シロさんが『シンフォニア王国に店があってもいい』とか、そんなことを言っていた気がする。


「ま、まぁ、ともかく、大変不本意ですがお客様はお客様なのです。ようこそ、人間さん」

「あ、はい。えっと、宮間快人です」

「……エリーゼです。別に覚えなくてもいいですよ。それじゃ、人間さんこっちへどうぞ」


 どうやらこちらの名前を憶えてくれる気はないみたいだ。嫌われているというほど険悪な雰囲気ではないが、なんとなく厄介な相手が来たとは思ってる感じがする。

 まぁ、六王祭でかけた迷惑を考えると文句の言いようもないが……。


「それにしても少し意外ですね。人間さん、見た目に似合わず占いとか興味あるんですね。まぁ、私の店を選ぶ目の付け所だけは、ちょっと評価するです」

「えっと、はい……お洒落で綺麗な外観でしたし、興味がそそられました」


 言えない。なんの店かよく分からず、とりあえず新オープンだったから入ったとか、いまさら言えない。


「ふふふ、なかなか見る目があるです。ええ、店のデザインにはこだわったですからね」


 どうやら店の外観を褒めたのは正解だったみたいで、エリーゼさんの声が少し上機嫌な感じに変わる、そしてエリーゼさんは、店の奥に配置されている占いに使うであろうテーブルの前に移動してから口を開く。


「……それで、人間さん? 『当たる占い』と『いい結果の出る占い』、どっちがいいですか?」

「えっと、種類があるんですか?」

「ええ、残念なことに儲けを出すには大衆向けの接待用占いも必要です。普通は客の様子を見て私が決めるですけど、人間さんには選ばせてあげるです。このお店を出せた恩もあるですし、一回目は無料でいいです。でも、グッズ買うなら有料です」


 そう言われて店内を見渡してみると、なるほど開運グッズみたいなのも売ってるのか……。


「……じゃあ、当たる占いで」

「わかったです。じゃ、そこの椅子に座るです」

「はい」


 なんとなくイメージ通りの、紫色の布がかけてあるテーブルの前にある椅子へ座る。これでテーブルの上に水晶玉とかがあれば、俺が想像する占いイメージ像にピッタリなんだけど……水晶玉はない。

 そんなことを考えていると、エリーゼさんはタロットカードみたいな形状のカードの束を持ち、俺の向かいに座った。


「さて、それじゃあ始めますけど、なにを占うですか? 特に希望がないなら、漠然とこの先にある出来事でも占うですよ」

「えっと、じゃあソレでお願いします」

「じゃあ、いくですよ」


 エリーゼさんは俺の言葉に頷いたあと、手に持っていたカードを無造作に上へと放り投げた。するとカードが円を描くようにひとりでに散らばり動き始める。

 す、すごい……たぶん魔法を使っているんだろうけど、なんというか、雰囲気がある。


  そして宙を回る多数のカードの中から、四枚のカードがテーブルの上に裏向きで降りてきて、残るカードは再び束になってエリーゼさんの手元に戻ってきた。


「人間さん、この四枚が占いの結果です。左から順に一枚ずつめくってみてください。その都度解説を入れるです」

「わかりました」


 エリーゼさんの言葉に頷き、一番左にあるカードをめくってみる。


「……正位置の夜ですね。このカードは『時期』を示すです。正位置の夜が示すのは『節目』です。月の切り替わり、年の切り替わり、あるいはなんらかの記念日……その辺りに、人間さんにとって大きな出来事が起こるです」

「ふむ、じゃあ、二枚目は……」

「今度は逆位置ですね。今度は剣のカードですか……このカードは起こる『出来事』を示すです。剣のカードが示すのは『戦い』、正位置なら文字通りの戦闘を、逆位置なら武力ではなく精神的な戦いですね」


 節目、精神的な戦い……もしかして、この占いが示しているのは……。


「三枚目は……正位置の『神』ですね。う、うん? おかしいですね? このカードが示すのは『人物』……つまるところ人間さんと戦う相手なわけですが、神? 神様と戦うですか?」

「あっ、えっと……心当たりはあります」

「そうですか、相変わらず常識の範疇外ですね。まぁ、それはともかく四枚目は……むっ、逆位置の『扉』と出ましたか……」


 最後のカードをめくると、エリーゼさんは難しそうな表情を浮かべた。おそらくだけど、この占いが示しているのはシロさんとの勝負のことだと思う。

 この世界にきて一年という節目、武力ではなく精神を問う試練、そして……戦う相手である神。


「この四枚目は、どういう意味があるんですか?」

「……このカードが示すのは『行動』です。扉の先にはゴール……つまるところ、人間さんの勝利があるです。正位置なら正規の手順……つまり、戦いに勝つことで勝利を得れるです」

「……えっと?」

「ですが、逆位置が示すのは『隠された道』……つまり、普通に戦って勝つだけでは『人間さんにとっては本当の意味で勝利とはならない』ということです。人間さんは、なにか、この扉を開くためのカギを見つけなければならないです」


 エリーゼさんの言葉を聞いて、俺は首をひねって考える。つまり俺はシロさんに与えられた試練を乗り越えるだけではなく、そこに隠されたなにかを見つけなけれならない。そうでなければ、本当に俺にとって満足がいく勝利とはならないって……そういうことだろうか?

 なんだろう? 胸がザワザワする。なにか、重要なピースを落とした……いや『忘れてしまっている』ような……。


 拝啓、母さん、父さん――偶然再会した占い師のエリーゼさんに占ってもらった未来は、妙に心の中の不安を掻き立てるものだった。なにかが引っかかる、でもその正体がわからない。この感じ、なんだろう? もしかしたら、扉を開くためのカギは、見えないだけで――俺の中にあるのかもしれない。





シリアス先輩「コミカライズの続報……ついに私も月刊誌デビューか……」

???「雑誌にカバー裏はねぇっすよ?」

シリアス先輩「はっ!? な、なんてことだ……い、いや、まて! コミックスが出ればワンチャンある!!」

???「……ついに出番がカバー裏だけであることには突っ込まなくなりましたか……」

シリアス先輩「え? あっ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ