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よりいっそう楽しむことにしよう


 アリス企画の六王祭5日目は、どの出しものも大変すばらしく、心から楽しむことができていた。期待はどんどん大きくなり、次はどんな楽しいアトラクションなのだろうと、童心に返って期待していた。

 しかし、やはりというべきか、なんというべきか……すべてが都合よく進むわけもなかった。


「……カイトさん、その、正直……すみません」

「い、いや、か、完敗だったよ」

「……カイトさんって、結構ゲームのセンスはあると思うんですけど……なんで、ボードゲームになると、途端にポンコツになるんすか?」

「……俺が聞きたい」


 そう、いくつ目かのアトラクションで戦略型ボードゲームのようなものをプレイすることになったわけだが、結果だけ言うとボロ負けした。

 いや、このボードゲームも非常によくできていた。駒は考えるだけで動くし、ボード自体にもギミックがある。単純ながら戦略性のあるゲームバランスだし、まるでシミュレーションRPGでもプレイしているかのような面白さがあった。

 まぁ、なぜか使っている駒の強さが同じでも、俺の駒は全滅したけど……。


「そうですか、こういうタイプのボードゲームも無理ですか……」

「……いちおう自覚もあるけど、俺って、そんなに弱い?」

「ワザとやってるんじゃないかってレベルで、弱いです」

「がはっ!?」


 もはや俺のボードゲームの弱さは、そういう『呪い』なんじゃないかとすら思えてきた。う~ん、なぜ勝てない。


「ま、まぁ、そろそろお昼ですし……なにか食べに行きましょう! そのあとは、ボードゲーム系以外を回りましょう」

「う、うん」


 さすがのアリスでも俺のボードゲームの弱さはフォロー不可能みたいで、わざとらしく話を逸らしつつ昼食に誘ってきた。

 だが、実際時間的には丁度いいので、特に反論したりすることもなくアリスと一緒に飲食店の並ぶエリアへと向かう。

 俺はブラックランクの招待状を持っているが、やはりそれをあまり使う気にはならないので、普通に払うことにしよう。


 そう考えたタイミングで、ふと俺はあることに気が付いて口を開いた。


「そういえば、アリス。午前中に回ったアトラクションでは、お金を要求されたりしなかったけど……」

「ああ、カイトさんはブラックランクですし……そうじゃなくても、私と一緒にいる時点で顔パスです。事前にアトラクションの管理をしている配下とかには伝達済みですからね」

「な、なるほど」

「他の参加者は入場料やアトラクション使用料がありますが、それほど高くはしてないですよ。今回は新技術のテストって面もあるので、多くの人が体験しやすいようにしてます」


 なんというか、最初に変な予測をしていた自分が恥ずかしい。アリスの考えたアトラクションは、本当にどれも素晴らしいし、多くの人たちを心から楽しませるだろう。


「……なんていうか、アリスのことを見直したよ。金儲けとかに走って極端な企画してないかって勘違いしてたよ。悪い」

「……あ、い、いや~……ま、まぁ、そうですよ。もちろん、多くの人に笑顔になってもらおうと思いましてね。ほら、私他人の笑顔大好きですし……」


 なんだ? なにか少し様子がおかしい。よくよく考えれば、普段のアリスはむしろ、有象無象はどうでもいいとかそういうタイプのはずだ。

 それが、俺の賞賛の言葉に対して、なんだかバツの悪そうな表情であいまいな返答……あれ? これって、もしかして……。


「なぁ、アリス。ひとつ聞いていいか?」

「な、なんでしょう?」

「六王祭って、これだけ大きくていいものがいっぱいあるわけだから……『売り上げ』とかすごそうだけど、それってやっぱり六王で分けたりするの?」

「……も、もちろん、私もそれがいいとは思ってたんですが……ど、どうも、皆さんお金にあまり興味がないみたいで……し、仕方なく代表して私が預かるって話になってますね」

「……」


 なるほど、もうすべてわかったし納得がいった。つまり、六王配下が担当する施設や出店の売り上げは、アリスの総取りとなるわけだ。もちろん協力した配下とかに給料とか、ボーナスとか渡すんだろうけど……それを差し引いても、相当の金額になることは予想できる。

 ……だから本気出しやがったなコイツ。


「……なんというか、アリスらしいというべきか、見直して損したというべきか……」

「い、いや、違いますよ! 金銭はあくまで副次効果です! アリスちゃんのメインの気持ちは、たくさんの笑顔を生み出そうという、大変ピュアな感じのやつです!」

「……で、本音は?」

「有象無象共が群がって私の懐を潤してくれるとか、六王祭最高ですね――はっ!?」

「……お前」

「あ、あはは……おっと、着きましたよ! あの店です! ささ、行きましょう!!」


 強引に話を逸らしやがった……まったく、本当に困ったやつだ。困ったやつ……ではあるけど、やっぱり憎めないな。


「そういえば、話は変わるけどさ」

「なんすか?」

「……今日は珍しくおふざけが控え……いや、ごめん。なんでもない」

「うん? よくわかりませんけど、早く入りましょう」

「ああ」


 今日のアリスはなんとなく、普段より真面目というか……『俺を楽しませる』ということを、なにより重視しているような気がした。

 もしかしたら……俺が三日目の出来事で落ち込んでいたのを考えて、アリスなりに励まそうとしているのかもしれない。だけど、それを尋ねるのは野暮ってものだろう。


 拝啓、母さん、父さん――クロ、アイシスさん、ジークさん、リリアさん……そしてアリス。なんというか、本当に俺は人に恵まれた。そのことに心から感謝しつつも――よりいっそう楽しむことにしよう。





???「さすがアリスちゃん! 気遣いもできる素敵な美少女! まさに作品を代表するヒロインですね!!」

シリアス先輩「……自演」

???「……なにか?」

シリアス先輩「な、なんでもない」

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