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二章エピローグ

本日で更新を終了いたします。


再開は未定です。

 案内人が俺に事実を暴露してきた。


 その事実に俺は、


「お前――アフターサービスも充実って本当だったんだな」


「え?」


 案内人が間の抜けた声を出す。


 こいつ、照れて悪ぶって伝えてきたのだろう。


 まさか、裏で俺のために色々と動いていたとは思わなかった。


「隠さなくてもいいぞ。俺のために裏で色々と動いてくれたんだろ?」


「いや、えっと――はい」


 俺がペーターのように扱われていたら、今頃は○○ッチを押しつけられ性病までもらっていたのだろう。


 こいつ、俺のために最善を尽くしてくれていた。


 もしかしたら、クルトと出会わせてくれたのもこいつだろうか? 偶然かもしれないが、こいつなら色々と考えていそうだ。


 もしかして、レーゼル家での幸運は、全てこいつの仕業なのか?


「お前っていい奴だな」


「え?」


 案内人が胸を押さえていた。


 何か言おうとしていたので、先に俺が言う。


「照れるなよ。お前が俺のために、レーゼル家と縁を切ってくれたんだろ? あの家、降格して大変らしいじゃないか。それに、あんな家と縁を結んでいたら、今頃は俺が大変だった。本当にありがとう」


「――や、止めろ」


 苦しんでいるように照れる案内人を見て、俺はちゃんとお礼を言う。


 こいつ、本当にいい奴だな。


「腹の立つ忌々しい善良な領主のピータック家も、お前が追い込んだんだろ? 俺もあの家は嫌いだったんだ。良い子ちゃんは腹が立つからな」


 お家争いもこいつの仕業だろうか? 目障りな家を消してくれて非常にありがたい。


「ち、ちが――」


 照れて顔を隠して震えている案内人に、俺は鼻の下をこすりながら――。


「お前って――優しいな。あ、ありがとう」


 照れながらお礼を伝えると、案内人が叫んだ。


「いぎゃあぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁぁ!!!!」


 まるで霧散するように消えた案内人。


 俺が驚いていると、ブライアンが動き出した。


「リアム様、どうされました?」


 ――恥ずかしくて叫んで俺の前から消えた案内人を思い、俺は小さく首を横に振る。


「何でもない。うん、急に気分がよくなった。髪型の件は、もう諦めるとしよう」


 ブライアンが首をかしげていたが、納得したのか政庁に連絡していた。


 髪型くらいで騒ぎすぎた。


 ただ――気に入らないのは、俺が認めて数ヶ月もしない内に、その髪型が廃れたことだ。


 お前ら、俺をからかっていたのか?



 幼年学校への入学前。


 領地には、俺がいる間に面会しておこうと訪れる客が多かった。


 ニアスもその一人だ。


「リアム様ぁ~、ニアス、戦艦を買って欲しいです」


 着飾ったニアスを見て、俺は鼻で笑う。


「帰れ、残念娘」


「冷たい! リアム様の態度が冷たいです!」


 要塞級を売って羽振りがよくなったニアスだが、俺が指を鳴らすと使用人たちに連れて行かれる。


「リアム様、二百隻でいいですからぁぁぁ!」


 ドップラー効果を確認できる叫び声だった。


 というか、あいつは俺の気持ちをまったく理解していない。


 教えてやってもいいが、わざわざ教えてやるのも面倒だし負けた気がする。


 そもそも、俺の方が立場は上なのだ。


 いい加減に察しろよ。


「天城、次の客を呼べ」


「はい、旦那様」


 天城が次の客を部屋に入れた。


 それは、第三兵器工場のユリーシアだ。


 随分とめかし込み、扇情的な服を着ている。


「伯爵、お久しぶりです」


 気合の入ったユリーシアとの挨拶を終えて、座らせると――スカートの中を見せてきた。胸の谷間も強調してくる。


「第三兵器工場で売り出し中の新兵器の数々をご紹介できればと思いまして――」


 商品の説明をしてくるのだが――まったく興味がない。


 性能的に少し前の製品と変わらないのだ。


 デザインは素晴らしいが、性能が少ししか変わらない。


 でも、値段は高い。


 コストパフォーマンスが悪い。


 俺の方を気にした様子のユリーシアを見ながら、こいつも残念娘だったと思った。


「――買う気が起きないな」


 すると、ユリーシアが上着を脱ぐ。


 肌の露出が多く、ほとんど下着のような衣装だった。


 俺の隣に座って体を預けてきた。


 ニアスと違い、こちらにはちゃんと色気があったよ。


 あいつも美人なのだが、この手の技術はまったくない。


「伯爵、買ってくださるのでしたら、私を自由にしていただいても――」


 俺は腕を振り解き、そして立ち上がると手を叩いた。


 使用人たちが、ユリーシアを連れていく。


「は、伯爵!?」


「お前には期待していたのに残念だ。――連れていけ」


「は、伯爵ぅぅぅ!」


 こいつもニアスと同じように消えていった。


 兵器工場関連の女は駄目だな。


 まぁ、面白いから今後もあいつらに俺の担当を任せるよう、兵器工場には伝えておく。


 天城が俺を見る。


「これにて午前の部は終了となります」


「午後もあるのか」


「はい。トーマス様が面会を求めております」


「越後屋が?」



 リアムの屋敷――その客室の一つ。


 下着姿のユリーシアは、豪華な化粧室で悔しさに顔が歪んでいた。


「――私をここまでコケにするなんて、絶対に許さない」


 ユリーシアは才女である。


 これまで多くの男性に付き合いを求められてきた。


 声をかけてきた男性の中には、貴族の男性もいた。


 だが、それを拒否して、今まで頑張ってきたのだ。


 女優のような顔。男が好む体型――教養を身につけ、とにかく頑張ってきたのはいずれ大貴族の跡取りに取り入るためだ。


 兵器工場に配属された時も、大貴族と面会できる機会が多いから嬉しかった。


 自分を磨き、そして純潔を守ってきたのは――大貴族の目に留まるため。


 玉の輿を狙っていた。


 それだけの資質が自分にあると思っていたし、実際に間違ってもいない。


 なのに、リアムは自分に見向きもしなかった。


 最初は気に入られたと思い、このままリアムを利用して自分の理想の相手を捜そうとしていたのに――ユリーシアは許せなかった。


「必ず振り向かせて、その後に捨ててやるわ。泣いて許しを請う姿を見て笑ってやる」


 リアムほどの大貴族だ。


 捨てる際には、対等かそれ以上の男性と付き合っておく必要もある。


 だが、その前に、絶対にリアムを振り向かせると心に決めた。


「そう言えば、もうすぐ伯爵は幼年学校に進むのよね?」


 ユリーシアが鏡を見ると、冷たい笑みを浮かべている自分に気が付いた。



 お昼の休憩後。


 俺はトーマスと面会していた。


「リアム様とこうして面会するのも大変になりましたね」


 最近、人が集まってきて仕方がない。


 俺を利用しようとする連中ばかりで困ったものだ。


 御用商人であるトーマスのように、俺に利益を差し出せば考えてやるのだが、どいつもこいつも自分のことしか考えていない。


「大半は面会しても無駄な連中ばかりだよ」


「これだけの人が集まるということは、それだけリアム様に期待が集まっている証拠でございますよ。おっと、本題に入りましょうか」


 トーマスが持って来たのは、幼年学校へ入学するために必要な品々だ。


「幼年学校で使用する品々です」


「向こうで揃えるんじゃないのか?」


「リアム様ほどの身分になられますと、その他大勢と同じ品を使うのも問題です。全ての品に家紋を用意しておりますので、ご確認ください」


 幼年学校だが、通えるのは領主貴族なら男爵家以上の家柄となる。


 だが、宮廷貴族なら騎士家でも通える。


 そのため、生徒数は非常に多い。


 一般生徒と同じような道具を使ってはいけないようだ。


「面倒だな」


「幼年学校では、帝国貴族としての基礎を学び、士官学校や大学でも通用する授業を受けると聞いております」


 士官学校や大学には、一般生徒もいる。


 そんな一般生徒に負けてもらっては困ると、その前に教育するつもりなのだろう。


 つまり、貴族に前もって教育を施してスタートダッシュを決めさせるのだろう。


「どうせお遊びだ。気にする必要もない」


 本格的な教育の前に、予習をするような場所だ。


「リアム様にはお遊びなのでしょうね。それはそうと、幼年学校を卒業してからのご予定はお決まりですか?」


 卒業すれば、士官学校か帝国が指定する大学へ進む必要がある。


 どちらも入学する必要があり、拒否はできないのだ。


「まだだ。どちらでも同じだからな」


「リアム様は既に伯爵様ですから、卒業後に首都星に留まるのも難しそうですね」


「すぐに領地に戻ってくるさ」


 帝国では俺は一貴族でしかない。


 でも、地元では王様だ。


 威張り散らせる場所で、精々王様気分を味わうさ。


 そのためには、さっさと修行を終わらせる必要がある。


「それから――」


 トーマスは申し訳なさそうに頭を下げてくる。


「当商会への減税処置、本当にありがとうございます」


 ピータック家を騙そうとして、失敗して大変だったトーマスを俺は助けた。


 数年間は、特別に減税を許可したのだ。


 まったく、もっとしっかりして欲しい。


「今後は気を付けるんだな」


「は、はい。それと、リアム様は首都星に屋敷を構えられるのでしょうか?」


「首都星に屋敷?」


 修行の一環で首都星に留学するのだが、その際に屋敷を構えるのが貴族のやり方らしい。


 俺としては必要ないと思うが、身分的に屋敷を建てないと格好がつかないようだ。


「そういえば、祖父母も両親も屋敷を構えていたな」


「首都星の土地価格は凄いことになっていますから、早めにいい土地を確保した方がいいでしょうね」


 幼年学校は全寮制。


 士官学校も同じだが、大学だけは通う必要がある。


 マンションでも借りようかと思っていたが――どうしよう?


「面倒だな。どうせあまり使わないんだ。他に方法はないか?」


「それでしたら、首都星にあるホテルを借りるというのもよく聞きますね」


「ホテル?」


「えぇ、首都星に屋敷を構えても、それが大学からとても遠い場所である場合はホテルを借りて、ということです」


 屋敷は必ず建てる必要があるようだ。


「なら、それでいくか。借りられるホテルをリストアップしておいてくれ。向こうで屋敷を構えるのは、俺が幼年学校にいる間でもいいだろ」


「かしこまりました」


 どうせ使う気もない屋敷だ。


 無難に建てておけばいい。


 いっそ安い土地を探して、そこに建ててみるか?



 ブライアンは屋敷にある自室――そのベランダで、盆栽の手入れをしていた。


 鼻歌を歌っている。


「今日もいい天気ですな」


 リアムが生まれる前は、このような日が来るとは思ってもいなかった。


 そんなリアムも、幼年学校へ入学する年齢になっている。


「リアム様が戻ってくる日が楽しみです」


 趣味である盆栽を並べ、眺めていると庭に侍女長が来ていた。


「おや、どうしました?」


 侍女長は日傘を差している。


「散歩だよ。自分で歩いて屋敷を見て回っているのさ」


「仕事熱心ですね」


 この人を呼んでよかったと思いながら、ブライアンはベランダに侍女長を招く。


 お茶を用意し、二人は昔話をするのだった。


「ブライアン、あんたの家族はどうしているんだい?」


「孫夫婦が近々こちらに戻ってくる予定ですよ」


「――そうかい。呼び戻せるようになってよかったね」


 ブライアンには孫夫婦とひ孫がいる。


 息子夫婦は――もういなかった。


「えぇ、リアム様のおかげです」


「長生きをしていると色々とあっていけないね。染みついた習慣が離れないし、休日よりも働いている方が楽だよ」


「ワーカーホリックですな」


 ブライアンが笑っていると、侍女長は「そうだね」と頷いた。


「――ブライアン、あんたはいい主人に巡り会えたね。我慢したかいがあったじゃないか」


「我慢とは違います。アリスター様への恩返しでしたから」


「素直に宮殿に来ていればよかったんだ。そうすれば、あんたならそれなりの地位に就けたよ」


 一度、侍女長に宮殿で働かないかと誘われたことがある。


 だが、今は断ってよかったと思えた。


「それでも、今が幸せですからいいのです」


「欲がないね。――あんたが羨ましいよ」



 ――リアムの屋敷が見える場所。


 そこに、倒れ伏す案内人がいた。


 リアムに全てを暴露したら、感謝されて致命傷を受けてしまったのだ。


 消えかかり、まともに動けなくなっている。


 まさか、事実を話している途中で、アレだけ素直に感謝されるとは夢にも思わなかった。


 あいつ何なの? ――案内人は本気でリアムが恐ろしくなっていた。


 苦しそうに息をしながら、


「お、おのれ――リアム――必ず復讐を――この恨みを必ず――」


 復讐するためには、しばらく休まなくてはならない。


 そして、負の感情を集めなければならなかった。


 リアムを倒すために、できるだけ多くの負の感情を集めるのだ。


「そうだ。帝国の首都星だ。あそこにはあふれるほどの負の感情が渦巻いている。あそこにいれば、私は回復できる」


 そして、次こそはリアムを――そう思いながら、案内人は立ち上がるとフラフラと歩き出した。


 その後ろを付いていくのは、一匹の犬だ。


 形が徐々にハッキリしてきたが、案内人は弱っていて後ろを付いてくる犬に気が付かなかった。


「リアム――次に会った時が、お前の最後だ」


 案内人は、またしてもリアムに復讐を誓うのだった。


ブライアン(´;ω;`)ノシ「皆様とのお別れが辛いです。このブライアン、いつかまた会える日を楽しみにしておりますぞ」

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これは首都星が浄化されるフラグ
残念美人2号のユリーシアは前世の奥さん臭がするね 残念1,3号の二人の方がまだチャンスありそう
[良い点] 凄く面白くて悔しい。。 [一言] 読ませて戴き、ありがとうございました。
2022/12/17 23:42 退会済み
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