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安幸君

俺は星間国家の悪徳領主! 4巻 【特典情報】


特約店様 SSペーパー

TSUTAYA様 SSペーバー

オーバーラップストア様 SSペーパー

BOOK☆WALKER様 SS (電子)

アニメイト様 4Pリーフレット

とらのあな様 4Pリーフレット

メロンブックス様 4Pリーフレット

※メロンブックス限定版 タペストリー+小冊子

ゲーマーズ様 4Pブックレット


これで全部のはず?

何本もSSを書いていると、どこに何を書いたのか忘れてしまいます(;´Д`)

 バンフィールド家の屋敷。


 緊張した様子で廊下を歩くのは、侍女長のセリーナだった。


「――これはもう、手遅れかも知れないね」


 不安が声に出てしまい、慌てて手で口を塞ぐ。


 普段落ち着いているセリーナが、ここまで慌てるのはリアムの行動が理由だった。


 長距離通信を可能とする通信室にやって来ると、鍵をかける。


 持っていた端末を通信装置にセットしたセリーナは、宰相との定時連絡を行う。


 時間ピッタリに宰相がモニターに投影されると、セリーナが挨拶もすぐに切り上げて本題を切り出した。


「お久しぶりです、宰相閣下。早速で申し訳ありませんが、バンフィールド家に不穏な動きがあると報告せざるを得ません」


 背筋を伸ばすセリーナがモニターの宰相を見据えた。


 相手は複雑そうな表情を見せる。


『クレオ殿下との手切れで警戒していたが、やはりこうなったか』


 少し前にリアムはクレオと決別した。


 皇太子となったクレオと敵対するという事は、バンフィールド家の将来には大きな不安となってしまう。


 リアムからすれば、将来のために力を得るのは当然の行動だ。


 だが、帝国の宰相の立場から言えば、今のリアムは帝国内の最大の脅威になりつつある。


 セリーナはリアムの行動を全て宰相に伝える。


「莫大な借金を抱えた領地を次々に購入しております」


『知っている。公爵から領主貴族数名を宮廷貴族にと推挙された。金で名ばかりの役職を手に入れて、元領主たちを押し込んでいる』


 リアムは領地を手に入れる際に、元の持ち主たちを宮廷貴族にしていた。


 何事も問題なく譲渡されたという形を取っている。


 このようなことがまかり通るのか? ――それがまかり通るのが帝国だ。


 帝国からすれば、惑星を監理する人間がいればいい。


 問題さえなければ、誰が管理しようが関係ないのが帝国だ。


 領地の売買なども、借金の問題さえ片付けば推奨したいくらいだった。


 しかし、これをリアムがやれば黙っていられなかった。


『公爵に釘を刺せ。これ以上は反逆の意思ありと見なす』


 宰相もクレオの裏切りがあり、リアムの不安も理解しているつもりだろう。


 だからこそ、ここまでにしておけとセリーナに忠告させるつもりだった。


「承知しました」


 セリーナが深く頭を下げる。



 セリーナが足早に廊下を歩いていると、大股で歩くブライアンを発見する。


 怒っている様子のブライアンが気になり、セリーナは話をすることに。


「どうしたんだい?」


 話しかけられたブライアンは、腹立たしいのか普段の落ち着きがなくなっていた。


「リアム様が数年ぶりに屋敷にお戻りになるのです! このブライアン、今日という今日こそはリアム様をお叱りするつもりですぞ!」


「何に怒っているのさ?」


「何に? 本星を空けて、辺境で領地拡大などあり得ません!」


 ブライアンの答えに、セリーナは味方を得たような気持ちになった。


(ブライアンも領地拡大は反対の立場か。確かに、今の状況なら帝国を刺激するなと言うしかないだろうね)


 憤慨するブライアンを味方に付け、セリーナは二人でリアムのもとへと向かうことに。


「それなら、一緒に進言するとしようじゃないか」


「おぉ! セリーナも一緒ならば心強い。それでは早速」


 二人がリアムの執務室へと向かう。



「リアム様、ロゼッタ様を何年も放置するとは何事ですか! それにお世継ぎがいない状況で、数年も領地を空けるなど論外ですぞ!」


 ――屋敷の執務室。


 久しぶりに帰ってきたのに、いきなり説教を始めるブライアンにげんなりする。


 隣にいるセリーナが少し戸惑っているのは面白いが、ブライアンだろうと子供の話題に触れるのは許されない。


「この場でその話題をするお前は、俺に対して悪意があると思って良いんだよな? お前じゃなかったら、刀の錆にしていたからな!」


「構いませんとも! それでお世継ぎが誕生してくれるのならば、このブライアンはこの場で斬られる覚悟です!」


「この程度の話題で死ぬとか、お前は馬鹿なのか!?」


「馬鹿!? 馬鹿と仰いましたか!? バンフィールド家にとって、お世継ぎ問題は最重要課題ですぞ!」


 執務室にいるのは、天城と――ロゼッタだ。


 俺が不在の間、領内で何かなかったか聞くために呼び出していた。


 ブライアンの野郎、ロゼッタがいる場所で「子供はよ!」などと言っているわけだ。


 デリカシーも何もない。


「ダーリン、あのね! あ、あんまり気にしなくてもいいから」


 申し訳なさそうにしているロゼッタを見ていると、俺は悪くないのに責められている気分になってくる。


 天城など、俺に冷めた目を向けているではないか! ――いや、普段通りの無表情なのだが、俺にはそう見えて仕方がない。


 ブライアンを睨み付け、部屋から出て行くように言う。


「用件が済んだら出て行け」


「いいえ、今日という今日はしっかり話を聞いて頂きます。セリーナもそのつもりですぞ!」


 話を振られて、セリーナが戸惑っていた。


「え? いや、私は――」


「セリーナ、お前も同じか! 世継ぎ、世継ぎとうるせーよ!」


 どうやら、セリーナもお世継ぎ云々を言いに来たらしい。


 こいつら、俺を何だと思っているのか?


 帝国一の悪徳領主だぞ! お前らじゃなかったら、今すぐ処刑だからな!


「ブライアンとセリーナを部屋から追い出せ。しばらく俺に近づけるな。――絶対に怪我はさせるなよ!」


 命令すると、部屋の外で待機していた騎士たちがやって来て、ブライアンとセリーナを穏便に連れ出していく。


「ブライアン殿、ここはお引き取りください」


「は、放せ! これはバンフィールド家の一大事! どうして誰も忠言しないのか!」


 二人が去った執務室で、俺は額の汗を拭う。


「戻ってくるなり子供云々五月蠅い奴らだ」


 すると、ロゼッタが子供に絡んだ話題を俺に振ってくる。


「ダーリンは子供が嫌いなの? なら、安幸君の話題はわたくしの方で処理しておきましょうか?」


「安幸君? え、もう教育が終わったの!?」


 しばらく仕事で忙しい日々が続いており、安幸君の状況にも疎くなっていた。


「移住してから基礎教育を受けていたんだけど、それも終わったからそろそろ誰かに面倒を見てもらうつもりだったのよ」


「――師匠のご子息だ。下手な奴には任せられない。だが、そうなると誰に預けるべきだ? というか、安幸君の希望は?」


 本人が何になりたいと決めていれば簡単なのだが――そう思って尋ねると、ロゼッタが笑顔で本人の夢を教えてくれた。


「立派な騎士になりたいそうよ」



 剣神安士とその妻ニナの子、その名は安幸。


 安士がリアムの本星で暮らすようになってからは、立派な屋敷で生活していた。


 学校から戻ると、玄関で仕事をしていた男性が出迎える。


「お帰りなさいませ。お姉様方がお待ちですよ」


「――うん」


 お姉様方と聞いて、安幸はすぐに誰かを察する。


 ほとんど毎日のように屋敷に訪れるのは、父の弟子である風華と凜鳳の二人だ。


 安幸が応接室に向かうと、そこで待っていた風華が飛び付いてくる。


「お帰り、安幸!」


「あ、はい」


 先に飛び付いてきた風華を押しのけ、凜鳳が安幸を抱きかかえた。


「大きくなったね、安幸!」


「昨日も会いましたけど?」


 自分を溺愛してくれる父の弟子たち。


 しかし、その正体は一閃流という帝国最強の剣士たちを生み出した化け物剣術の正統なる後継者たちだ。


 風華と凜鳳の二人も、リアムには及ばずとも化け物の領域に足を踏み入れている。


 そのような二人が自分を溺愛してくれる事には嬉しくもあるが、安幸は常識を学ぶにつれて思うようになってきた。


(二人とも仕事をしなくても良いのかな?)


 リアムの庇護下で自由気ままに剣の修行に打ち込む二人は、日頃から仕事らしい仕事をしていなかった。


 以前はメイドの仕事をやらされていたらしいが、それも行儀見習いの一環だ。


 剣の修行に厳しいリアムだが、妹弟子たちが小遣いを求めれば財布のひもは際限なく緩む。


 二人は働かずとも食べていけた。


 二人の将来を心配していると、母のニナが家に戻ってくる。


「ただいま~」


 応接室に顔を出すニナは、スーツ姿で仕事から帰ってきたところだ。


 バンフィールド家の本星に移住した後、大学に通い直して今は官僚として働いている。


 本星の政庁勤務――文官、官僚としてはバンフィールド家ではエリート中のエリートだ。


 そんなニナが帰宅すると、少し遅れて安士が屋敷に駆け込んできた。


「ニナ! 頼む、小遣いをくれ! もう少しで負け分を取り戻せそうなんだ!」


「ヤス君、また負けてきたの? しょうがないわね~」


 カジノで大負けして小遣いをなくした安士が、ニナから新たに小遣いを得ていた。


「助かった。愛しているぞ、ニナ!」


「いってらっしゃ~い」


 小遣いを受け取り、安士はカジノに向かう。


 ニナはその後ろ姿を笑顔で見送っているのだろう。お小遣いを渡す時も、声には多少の呆れと頼られた嬉しさが入り混じっていた。


 呆れ一に対して、嬉しさ九の割合だ。


 安幸は思う。


(母さんは真面目に働いているのに、父さんはギャンブルばかり――そんな父さんを、母さんは嬉しそうに見送る――駄目だ。僕がしっかりしないと)


 子供ながらに、安幸は自分のいる家庭環境に疑問を持っていた。


 そのため、しっかりした大人になろうと決意している。


 凜鳳が、安士がカジノに向かったと知ると残念がる。


「師匠は今日も忙しそうだね」


 風華の方は、安幸の方に顔を向けて微笑む。


「たまには修行を見て欲しいけど、忙しいなら仕方がないな。それよりも、安幸。兄弟子の許可が出たぞ」


 兄弟子――リアムから許可が出たと聞いて、安幸は破顔する。


「本当ですか!」


 安幸が騎士を目指した理由、それはバンフィールド家の事情も大きい。


 軍事力の増強を進めるバンフィールド家では、騎士を求めていた。


 リアムの庇護下にあるため、それならば騎士になって恩返しをしようという考えを安幸は抱いていた。


 確かに安幸の父である安士は、リアムの師で敬愛する対象だ。


 しかし、自分は安士の子供でしかない。


 不自由しないどころか、贅沢な暮らしが送れている事に恩を感じていた。


 そのための恩返しが、騎士になるという選択だ。


 それに、当初リアムが安幸を騎士に――という話は伝わっていた。


 恩を返すなら騎士になるのが一番だろうと、そうした理由である。


「お~本当だ。お前が騎士になりたいって希望を伝えたら、渋々ながら納得したぜ。本当は役人になって欲しいみたいだが、本人の意思を尊重するってさ」


 当初、騎士を希望した安幸にリアムは悩んだそうだ。


 その理由は、剣士として才能がないと安士に断言された安幸が、本当に騎士として生きていけるのか? というものだ。


 凜鳳が安幸の両肩に手を置き、屈んで顔の位置を合わせて真剣なまなざしを向けてくる。


「安幸、許可は出たけど無茶は駄目だよ。何か困ったら僕を頼ってね。――安幸の敵は、僕が斬るからさ」


 凜鳳と風華の瞳はハイライトが消えており、本当に安幸の敵は斬り殺すつもりだろう。


 たとえ一閃流の才がなくとも、安幸は二人にとって敬愛する師匠の子だ。


 それはつまり、自分たちの弟のようなもの。


 安幸は、重すぎる姉たちの姉弟愛にドン引きしている。


「だ、大丈夫です」


 せめて姉たちが剣を振るわないように、自衛できるくらいの強さは身につけようと心に誓う安幸だった。


ブライアン(´・ω・`)「辛いです。新婚なのに、平気で数年単位で単身赴任を繰り返すリアム様の仕事ぶりが辛いです」


感想を確認した若木ちゃん(;゜Д゜)「……嘘? みんな、光合成できないの? ……可哀想」


ブライアン(`・ω・´)「光合成はともかく! 俺は星間国家の悪徳領主! 4巻 と コミカライズ版1巻がもうすぐ発売ですぞ!」


ブライアン(´・ω・`)「既に手に入れた読者様は、できる限りネタバレなどを感想やコメントで控えるようにお願いいたします。――まだ、発売日前でございます」

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― 新着の感想 ―
[一言] ギャンブル代を確保するために道場を開かないのかな
[良い点] SS書きすぎじゃないですか!?w お疲れ様でした。
[一言] 安幸くん…なんでこんな環境で立派な常識人に育ってしまったのか… その先は地獄だぞ、ネジの数本くらいは飛ばしておいたほうが楽だぞ
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