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起承転結で…どれだ?

事件らしきものがチラホラと。


補足

筆者の法律の知識は浅いです。

小説ならではのご都合主義でお願い致します。

フェルトベルク大公領の滞在も三日目になった。


今日もトーマはカインの仕事について行った。

トーマは【闇の眷属】と戦うカインに弟子入りをしたらしい。


師匠とお揃いにしたいと、プレゼントしたクラバットをカインの襟元にスカーフ代わりに巻いていた。

今日のカインは魔力満タンのエアコン機能クラバットのおかげで、快適に過ごせるだろう。


トーマの弟子入りを知ったエルヴィラ夫人は

『それは…カインに仲間が出来た事になるの?』と複雑そうだ。


「症状の進行度を危ぶんでいらっしゃると思いますが

 適度に発散するのも重症化を防ぐ可能性があるかと。」


エルヴィラ夫人の疑問に使用人達の高速ヘドバンで同意されつつ、メイは躱した。


「そうね、追い込んじゃダメよね。」


なるほどと頷くエルヴィラ夫人。

懐の深いエルヴィラ母さんである。


トーマに対しては『子供ってそういうの好きでしょう?』で終わった。



大公家としては、招待したメイはともかく、トーマは直接の知人ではない。

その為、今回のような立場で持て成しを受けた者は招待主(ホスト)へ相応の品を贈る。

普通は自身に由来する物──領地があるなら、そこの名産とかだ。


トーマはエルヴィラ夫人にオパールのペンダントトップを贈っていた。

直近まで領主代行として職業婦人だったエルヴィラの使い勝手が良いように

大粒のオパールを際立たせた銀細工は、ブローチなどに汎用が利くが

繊細なデザインで、その名に因んだ見事に輝く(エルヴィラ)宝飾品だ。


招待主(ホスト)を満足させたトーマは大公家の知己を得た事になる。


まだ大公家にはトーマの出自はぼやかしているが、侯爵令嬢のメイが連れてきているし

貴族の社交を理解しているトーマの振る舞いに、カイン達も詮索するという野暮な事はしない。


もし法律家のローゼッタ家が『事情がある子供』を庇護していた場合、藪をつついて何が出てくるか

分からないからだ。





 ◇






今日の視察場所は、嘗ては深い森だったそうだ。

そこは昨日の農地を川沿いに進んだ所で、森を切り拓いて建設された炭鉱運搬用の中継所跡地だった。


二日続きで領主が訪れれば、陳情が通るかもと期待した近隣住民が

昼でも薄暗く、廃墟化した跡地を撤去をして欲しいとやって来たからだ。


「具体的に何かあったか?」

「何かあったかなんて……」


モジモジしだした住民達に『具体例が多ければ緊急性が高い案件に見做されますよ』と、口添えしたいが

今のトーマは子供だし、決定権があるカインはこれ以上ヒントを出せない。


「ここを管理してたジジイがおっ()んだ後に、何かが住み着いていたみたいなんですよ。

 何度か自警団で見回ったんですが、こう……荒らされたような……」

「例えば焚火とかの痕跡があった…とかは?」


住民によると、数年前に廃墟から光源らしき何かを見た者がいた。

数日後に自警団で廃墟に向かったが、痕跡があり過ぎていつの時代のものか分からなかった。


代々土地を管理していた一族も、主だった分家筋が王都へ引っ越した時に

跡継ぎも一緒に居なくなったそうだ。王都に憧れてついて行ったんじゃないかと噂されていた。

中継地跡は誰も引き継がないまま、手つかずで荒れていったのだという。


「それが最近、また夜に光を見た奴がいるんですよ」


『あの辺りで』と、廃墟を指をさしながら住民が言った。




 ◇




現在トーマはカイン達の馬車の中で、ヴェリーと一緒に待機中だ。

カインはよくもここまでトーマを同行させたと思うが、

初日はチェリー農家でチェリーの試食接待を受けただけだから

今日も平穏な予定の筈だったのだろう。


それがカインの統治者としての立場の線引きなのかもしれない。


「トーマ様、どうですか?」


カインは案内の住民と自身の護衛や秘書と、廃墟へ偵察に行った。

ヴェリーが切り出して来たと言う事は、聞かれるとマズい人間は近くにいないと言う事だ。


今のトーマは魔法発動中だ。

エアコン魔法のように生活に便利じゃない方

───トーマがコルティナで生き抜く為に編み出した、独自の術式(オリジナル)の方だ


「メイさん達へ報告が必要になっちゃったよ。」


残念そうにトーマが応えた。





 ◇





廃墟から帰って来たカインは視察を取りやめて、領役所に戻る事にした。


「カイン様、僕はヴェリーとハースト邸に戻ります。」

「影には気を付けろ。闇の眷属に隙を見せるなよ」

「はいっ!」


ヴェリーはポーカーフェイスだったが、心中では良い子の返事をした主に

『闇の眷属とは…』と、質問すべきか迷っていた。





 ◇





ハースト邸に帰宅したトーマ達は驚いた。


迎えに出て来た執事が困惑した表情で『応接室で皆様がお待ちです…』と案内してきたのだ。


応接室に近づくにつれて声は大きくなり、トーマは前世でお馴染みの光景を思い出した。

まさか………?




「それで? それで他にどんな効能があるの?」


応接室にエルヴィラの高揚した声が響く。


「恐れながらエルヴィラ様。今までお話ばかりでございましょう?

 私共はこのままではございません。エルヴィラ様にしっかりと体験していただきたいのです。」


ハースト邸の使用人達が『ま、まさか……?』『おぉ───っ!!』とどよめく。


「こちらでございますっ!!!」


メイが捧げ持つ蓋いをメイの侍女ロレイン嬢(二十歳 子爵家出身 転生者)が

大仰な動作で取り払うと、一つは蓋を開けた二本の小瓶をのせた銀盆が現われた。

ロレインが蓋が開いた小瓶を取ると、すかさずメイは銀盆をテーブルに置いて拍手をする。


釣られた様にハースト邸勢はパチパチと拍手を返す。


「あらぁ、これは何?」


ロレインに小瓶を見せて貰い、香りを確かめるエルヴィラ夫人。

固唾を飲むハースト邸勢と夫人に、微笑みながら交互に見やるメイ。


「はい、こちらはローヤルゼリー美容液タイプになります。

 丁度準備が終わったようですので、ではこちらへ」


今まで端に座らされていたハースト邸の家令が招かれる。

経験豊富な人物だが、何か…されたようだ………


「まずはお試しで先程見ていただいた、ヘンリー卿のお顔の

()()()()()()()()()()の状態を、今一度ご確認頂きたいのですわ。」


メイに促されて、己の家令(アラフィフ?)の左頬を突くエルヴィラ夫人。


「まっ!なんて事なのヘンリー!!

 貴方の肌、引っ掛かりもしないしツヤツヤになってるじゃないっ!!!」


エルヴィラ夫人の言葉に被らないよう、細心の注意で『素敵』と声を上げるメイ。

直ぐに『まぁ!』『確かに!!』と同意するノリノリのハースト邸勢。


その様子に『ええ、ええ、そうでしょう』とばかりに頷きながら小瓶をテーブルに置き、

満面の笑みを浮かべながら、軽く手首を回し準備運動をするロレイン。


「お待たせいたしました、エルヴィラ様。

 それでは、こちらの美容液をたっぷりと使用したマッサージを、体験頂けますか?」

「まぁあああああ!!!!!」


メイの煽りMCと拍手、応えるハースト邸勢の熱狂ぶりを聴きながら

とりあえずメイのプレゼン(TVショッピング)が終わるまでに、トーマは着替えてくる事にした。

お肌マッサージをするエルヴィラ夫人の化粧落としの前に、男性陣は部屋を追い出されるからだ。





 ◇





メイはエルヴィラ夫人にローヤルゼリーを売り込んでいた。

ダークチェリ―に代表される大公領の農地は養蜂も盛んだったからだ。


蜂蜜の加工副産物として蜜蝋までは生産されていたが、ローヤルゼリーは知られていなかった。


「地球でも、このぐらいの文明レベルから広まったんですよ。」


前世はエステサロンの経営者だったロレイン嬢が補足する。

経営者になって現場から遠のいていった前世のジレンマの経験から

今世は気楽に個人活動を模索していた時に、メイに出会ったそうだ。



「一押しのチェリーのほかに苺に柑橘系……

 ここの蜂蜜の種類は豊富だから、それだけローヤルゼリーも多種になるでしょ。」


既にメイは転生者達とローヤルゼリーの特許を取得している。

王国どころか、国際特許も取得完了している。

名義は特許取得用に設立した、メイ達の会社だ。


「全部押さえたわけじゃないのよ。

 多少の穴が無いと同業者が育たないじゃない。」


メイは家業の法律家を目指しているので、美容業界を占める心算はない。

ある程度の競合が無いと、せっかく育った業界を維持できないとの考え方だからだ。


メイ達の会社が取得していない特許の商品開発を、先ほど大公家にプレゼンした。

大公家は法律家となったメイを顧問にするだろう。


「いいのよ?ワルって言っても」


でも、世界ってこんなものだ。




閲覧頂きありがとうございました。

楽しんで頂けたら幸いです。

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