表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/89

―21― 色々と説明

「それで魔力ゼロのお前がどうやって魔術を行使したか、教えてもらえないか」


 改めて父さんが会話を切り出す。

 どうやら父さんの中で、カツラがとれたことはなかったことになっているようだ。


「その、なにから説明すべきか……」


 素直に話せば、俺が異端者だと疑われる可能性が高い。だから、なんと言うべきか……。


「しかし、アベルが魔術を使えるようになったか……」


 父さんが感慨深げにそう呟く。

 あれ? 父さん泣いてない?


「えっと……」


 困惑していると父さんは「すまぬ」と言って手で涙を拭う。


「お前にはすまないことをしたとずっと思っていた」

「そうなのか……」

「お前は魔術が大好きだったよな。幼い頃から難しい魔導書でさえ何冊も読むお前を見て、こいつは将来すごい魔術師になるぞ、と何度思ったことか。なのに現実は非情だ。お前は魔術師の家系でありながら、魔力がゼロという残酷な運命に立たされた。どうしてお前を魔力がある少年として生んでやれなかったのか……何度も後悔した」


 初めて聞く父さんの吐露に俺は戸惑いを隠せないでいた。

 こんなことを父さんは考えていたのか。

 俺だって、なんで自分に魔力がないのか、何度悔やんだことか。


「だがお前は自分の運命さえ跳ね除けられるのだな。お前をなんとか自立させようと家を追い出したが、父さんが間違っていたようだ。すまなかった」


 父さんは頭を下げた。


「別に怒ってないからいいよ」


 父さんが俺のためを思って行動しているのは知っていたし。

 そうじゃなきゃ、家を追い出すとき金を一切渡さないだろう。


「そうか、ありがとう」


 頭をあげて微笑んでいるのが目にうつる。

 久しぶりに見た父さんの笑顔だ。


「それで、どうやってアベルは魔術を行使したんだ?」


 父さんは話を切り替えるようにして、そう口にした。

 ふむ……どこまで話を開示すべきか。全部を話すとなると、原初シリーズに矛盾があったことまで説明しなくてはいけなくなる。

 異端者か。

 妹に言われた言葉が頭に過ぎる。

 父さんのことは信頼している。仮に全部を話しても、俺を異端者と断罪するなんてことはないだろう。

 けど、下手に話をして面倒事につながるのは避けたい。

 今は〈賢者の石〉の生成をするための研究に集中したい。

 そのために、面倒事は起こさない方が無難だろう。


「魔力が発現した」


 だから俺は嘘をつくことにする。


「そ、そんな馬鹿な……っ」


 驚きのあまり父さんは立ち上がる。


「だが、アベルはずっと魔力がゼロだっただろ」

「どうやらゼロではなかったらしい。限りなく少ないけど、自分にも魔力があった。だから、少ない魔力量でも不便なく魔術が扱える理論を構築した」


 実際、『科学の書』に書かれた理論を用いたことで、魔力量を少なくすることに抑えたわけだし、間違ったことは言っていないか。


「そうか……お前は天才だったんだな」


 

「無事、父さんは納得しててくれたみたいだね」


 父さんとの話し合いが終わって、部屋を出るとそこには妹のプロセルが立ち尽くしていた。

 どうやら俺たちの会話を壁越しに勝手に聞いていたようだ。


「もしかしてお兄ちゃんの心配してくれたのか?」


 わざわざ立ち聞きしていたということは、そうとしか考えられない。


「きもっ」


 短くかつ辛辣にそう言い放った。

 流石に傷つくんだが。


「待っていたのはアベルお兄に一つ言いたいことがあったからよ」

「言いたいことって……」


 なんだろう? と思い首をかしげる。


「学院で私に話しかけないでね」

「は?」


 いやいや、せっかく兄妹揃って同じ学院通うというのにそれはないだろ。


「ギルバートって名字はありきたりだし、なにも言わなければ私たちのこと兄妹だと思う人いないはずよ。私たちは偶然同姓の赤の他人ってことにするわよ」

「いや、なんでそんなことをする必要あるんだよ」

「アベル兄のこと知られたら私の評判落ちそうだから。アベル兄、学院で悪目立ちしそうだし」


 なんでそんなこと断言できるんだよ。


「俺はプロセルとせっかく同じ学院に行けるんだから、できれば一緒にいたいけどな」

「そういうとこがキモいっての」

「……うっ」


 さすがに言い過ぎだと思うんだが。


「それじゃあ、そういうことだから。よろしく」


 言いたいことを言い終えたって感じで、プロセルはその場を立ち去る。

 俺は妹のことを大切に思っているんだけどな。中々、そういう思いは伝わらないみたいだ。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

新作投稿しました!

↓こちらをクリックすると新作に飛ぶことができます↓


婚約者を殺された冤罪で、ダンジョン奥地に投獄された俺は、ヤンデレ勇者がくれた〈セーブ&リセット〉のスキルで何度やり直してでも、このダンジョンを攻略して、村人全員に復讐することを誓う


予約始まりました! よろしくお願いします!

魔力ゼロの最強魔術師〜やはりお前らの魔術理論は間違っているんだが?〜

魔力ゼロ
― 新着の感想 ―
普通にキモいよね。 妹の気持ちは理解できる。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ