桜の国チェリンと七聖剣【百八十九】
三日後。
リアたちは何事もなく無事に退院。
それぞれが自分の寮に戻った後、俺・リア・会長・リリム先輩・フェリス先輩――ローズを除いた生徒会メンバーは、千刃学院の一室に集まった。
「ローズ、やっぱり気を遣っているよな……」
俺がポツリと呟けば、みんなは無言のままに頷く。
リーンガード皇国に帰ってから、ローズはまったく弱音を吐かない。
大好きなバッカスさんを亡くして、本当はとてもつらいはずなのに……。
気丈で強くて優しい彼女は、俺たちに心配を掛けないよう、空元気を出しているのだ。
「あの子、自分に厳しいうえに、けっこう抱え込むタイプだからね……。こういうとき、どう接してあげたらいいのかな……」
リアは難しい表情を浮かべ、
「ローズさんの心遣いを無駄にせず、彼女を元気付ける方法、か……」
会長は真剣な表情で思考を巡らし、
「うーん……逆に考えてさ、熱くぶつかり合ってみたらどうだ?」
リリム先輩はとても彼女らしい方策を述べ、
「ちょっと荒療治過ぎ。それが通用するのは、リリムみたいな単細胞だけなんですけど」
すぐさまフェリス先輩に却下された。
その後、みんなでいろいろと話し合った結果――「いつも通りでいよう」という意見でまとまった。
ローズの気遣いを無駄にしないためにも、俺たちは可能な限り普段通りのままでいるべきだ。
ただ、彼女のことは常に気を掛け、思い詰めていたり、悩んでいたりするようだったら、それとなく話を聞いてみる。
ひとまずのところは、こういう形でまとまった。
後もう一つ、『バッカスさんのお墓を建てたい』という案が上がった。
(彼の肉体は、光る粒子となって消えてしまったけれど……)
世界最強の剣士が生きた証をこの世界に残したかった。
そして何より、命を救ってもらったお礼をちゃんと伝えたかった。
しかし、こちらの独りよがりな気持ちで、勝手にお墓を建てるわけにはいかない。
当然ながらこの件は、ローズの意思を一番尊重する必要がある。
(問題は、いつこの話を切り出すか、だな……)
俺がそんなことを考えていると、
「ローズさんの気持ちを確認するのなら、なるべく急いだ方がいいわ」
「えぇ、私もそう思います」
会長とリアが、まったく同じ意見を述べた。
「アレンくん・バッカスさん・元皇帝直属の四騎士ディール・七聖剣フォン――世界屈指の四剣士が剣を交えたチェリンでは、近いうちに聖騎士協会による実地調査が行われるはずよ。『小国の戦争』に匹敵するほどの霊力が吹き荒れたあの戦闘、世界の恒久的な平和を目指す協会が見逃すわけないもの。そのときは多分、ちょっとした入国制限が敷かれるでしょうね」
「あの場には裏切り者のフォンがいたから、協会はきっと躍起になって霊力の残滓を調べ上げるわ。戦地となった無人島に限って言えば、年単位で立ち入り禁止になっちゃうかも……」
「なる、ほど……。確かにそれなら、急いだ方がよさそうですね」
短期的な入国制限ならばともかく、年単位の立ち入り禁止はさすがに困る。
こういった事情もあって、俺たちは全員で、ローズの寮へ向かうのだった。
新年あけましておめでとうございます。
ようやく年が明けましたね!
新たな一年のはじまり……気合を入れて、執筆に励もうと思います!(まだ未公開の新作も、気合を入れて書いております!)
次回更新はあまり日を置かず、2月4日(木)18時ごろ予定!(もしかしたら今後は、毎週木曜日の18時ごろ更新になるかも……?)
お楽しみにー!