桜の国チェリンと七聖剣【百八十七】
「は、ハプ博士……? これはいったい……?」
<涅槃水晶>の刀身が折れた場合、『そう遠くない未来の死』を顕わすという。
では、刀そのものが粉微塵に砕け散った場合……いったいどうなってしまうのだろうか?
「これまで何千何万という人たちを占ってきたけれど、こんなケースは一度も見たことがないヨ……」
ハプ博士は「信じられない」とばかりに大きく目を見開きながら、小さく首を横へ振った。
「ただ一つ、確実に言えることは……『やばい』ネ。近い将来、おそらくは一年以内に『死』以上の苦痛と絶望が、アレンくんを待ち構えているだろウ」
「そう、ですか……」
的中率百パーセントの占い結果は、一年以内に来る死以上の苦痛と絶望。
あんまりにもあんまりな結果だった。
「「……」」
病室の空気が、なんだか一気に重たくなってしまう。
「え、えっと、あれダ! さっき的中率は百パーセントと言っていたが、それはこれまでの話だヨ! もしかしたら、君が占いの結果を覆す、初めての人間になるかもしれなイ! うん、きっとそうなることだろウ!」
あのおかしなハプ博士が、必死にフォローへ回るほど、この結果はやばいようだ。
「……お気遣い、ありがとうございます」
大きく吐き出し、頭を切り替えていく。
(ふぅー……。落ち着け、大丈夫だ。どこまで行ってもこれは、占いに過ぎないんだ)
自分の未来は、この手で斬り開くもの。
俺はこれまで、そうやって生きてきた。
「さて、診察はこれで終わりダ。アレンくんはもう退院していいヨ。肉体も霊力も、完璧な状態だからネ」
「ありがとうございました」
診察・雑談・占い――ほんの十分程度だけれど、ハプ博士との時間は、とても濃密なものだった。
「こちらこそ、ありがとウ。君との交流は非常に興味深い時間だったヨ。またどこかで会おウ。……そうだな、今度は医者と患者という関係ではなく、友人として近況を語り合いたいものだネ」
「あはは、それは楽しみですね。そのときはまた、いろいろなお話を聞かせてください」
「あぁ、もちろん構わないとモ」
こうして俺は、ハプ博士の病室を後にした。
(ハプ=トルネ博士、か)
会長が言っていた通り、確かに癖の強い人ではあったけれど……悪い人じゃなさそうだ。
明日は更新したい感ある……が、ちょっと忙しいから、どうなるかわからない……。
この意気込みだけでも届いてくれー!