桜の国チェリンと七聖剣【百八十一】
「早速だが、このカルテを見てほしイ!」
彼から手渡された分厚い書類には、何やら医学用語らしき難しい文字がズラリと並んでおり、見ているだけで目がチカチカしてくる。
「――くくくっ、どうだネ? 凄いだろウ!?」
「す、すみません。何がどう凄いのか、よくわからないんですけれど……」
残念ながら、俺は医学に関する深い知識はない。
知っていることと言えば、千刃学院の授業で習った裂傷や刺創に対する応急処置、それから風邪・頭痛・腹痛への対処法といったごくごく一般的なものぐらいだ。
「おっと、こりゃ失敬! 少々、勇み足だったようダ!」
ハプ博士は自身の頭頂部をペシンと叩いた後、ヌッとこちらへ顔を寄せてきた。
「このカルテに記されているのは――『とある実験』の記録とその結果だヨ!」
「とある実験、ですか?」
「うむ、そうダ! ここから先の話は、他言無用で頼みたいのだけれど……実は儂、アレンくんの細胞を裏でこっそりと培養し、そこへ様々な刺激を加えて、その反応を調べていたんダ!」
「な、なる、ほど……?」
何故俺の細胞を裏でこっそりと培養していたのか。
どうしてそこへ様々な刺激を加えてみようと思ったのか。
本人に無断でそんなことをするのは、倫理・法律的に問題があるのではないか。
正直、引っ掛かるところはたくさんあったけれど、ひとまず話の続きを聞いてみることにした。
「実験の結果、とんでもないことが判明しタ! アレンくんの細胞には、普通の人間じゃあり得ない『異常な適応能力』が――『耐性の獲得』とも言うべき特別な力が備わっていたんダ!」
「た、耐性の獲得……?」
まったく聞きなれない言葉に首を傾げれば、ハプ博士は「うム!」と力強く頷く。
「毒に浸せば抗体を生み出し、高熱で燃やせば耐熱性を獲得し、斬り刻めば一層強固に結びつク! まぁ早い話が、アレンくんは傷を負えば傷を負うほど、どこまでも無限に強くなっていくということダ!」
ハプ博士は鼻息を荒くしながら、とんでもないことを口にした。
「例えばほら、今までにこんな経験はなかったかネ? 戦闘中、一度目に食らった攻撃が、何故か二度目はそんなに大したことがなかった、とかサ」
「……あっ、そういえば……」
リアの炎やクロードさんの爆撃、最近で言うならばフォンの砂鯨などなど……。
一度目に食らった攻撃よりは、二度目の方が遥かに痛みはマシだった。
どうやらあれは、単なる思い違いではなく、実際にダメージが軽減されていたようだ。
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