表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

406/445

桜の国チェリンと七聖剣【百七十六】


「さて、これで『裏切り者』の粛清も完了。フォンの遺体を手土産にすれば、うちのことを疑っとる五大国も聖騎士協会も、なぁんも文句を言われへん。世界には平和が戻りました、とさ」


 リゼはパンと手を打ち鳴らし、いつもの柔らかい笑みを浮かべた。


「裏切り者って、どの口が言うんすかねぇ……」


 クラウンはどこか呆れたように苦笑し、


「リゼの姉さんに逆らった愚か者こそが、裏切り者なんでさぁ」


 忠臣であるディールは、ただコクコクと頷いた。


「しっかし――バッカス、やっぱりあんたは強いなぁ……。(やまい)さえなければ、そう思わずにおれんわ……」


 今はなき億年桜に目を向けながら、リゼにしては珍しく感慨の籠った言葉を漏らす。


「……く、クラウンの旦那、クラウンの旦那……っ」


 その光景を目にしたディールは、クラウンの服の裾をクイクイと引き、小さな声で耳打ちをした。


「リゼの姉さんが、何やら随分と物憂げなご様子なんですが……。バッカスの旦那とは、何かご縁でもあったんですかぃ……?」


「んー……そのあたりは、ボクもあまり詳しく知らないんすよねぇ。なにせあの人は、ほとんど過去を語りませんから」


「そ、そうですかぃ……」


 リゼとバッカスの間になんらしかの利害関係があったら、二人が昔からの旧友であったらのならば……自分はとんでもない狼藉を働いてしまったのではないか。


 そう考えたディールは、顔を真っ青に染める。


「あ、あの……姉さん? もしかして、あっし……余計なことをやっちまいやしたか……?」


「いいや、なんも気にせんでええよ。あの阿呆とは、ただの腐れ縁やさかいな」


 リゼが優しく微笑んだことで、ディールはホッと安堵の息をこぼす。


「それに……あの場で唯一、バッカスはこっちの存在に気付いとった。ただ――あの男は、ほんまもんの『ド阿呆』やからな……。うちの助太刀なんか、必要としてへんかったやんや」


 激しい戦闘の最中、コンマ一秒にも満たない刹那、リゼとバッカスはしっかりと目が合っていた。

 彼はそのとき、獰猛な笑みを浮かべながら、わずかに首を横へ振ったのだ。


 ――これは儂の戦い、つまらぬ手出しは無用。


 無言のメッセージを受け取ったリゼは、発動寸前だった魂装<枯傘衰(かれさんすい)>を引っ込め、バッカスの最期を看取ることにした。


「それに第一、あの体は……もうあかん。幻霊<生命の樹(セフィロト)>の力をもってしても、全く支えが効いとらんかった。もし今日この戦いがなかったとしても、もって数日の命……。まぁこれについては、本人が一番よぅわかっとったみたいや。だからこそ、バッカスは自分で死場(しにば)を選び、次の時代(アレン=ロードル)に全てを託したんや」


次回更新予定:9月24日午前11:00。すなわち一週間後。


最近、やけに筆の乗りがいいのは……何故だろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] エタったかと思ってました。更新嬉しいです!
[良い点] 毒使いと血狐のつながり・暗躍感と新時代幕開けって感じがスピード感あって読んでいて気持ちいいです [気になる点] 血狐の魂装きたキター! [一言] 乗ってますイケイケです 最高!! アラン次…
[一言] 何で週一にしたんですか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ