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桜の国チェリンと七聖剣【百七十一】


「くそ、バッカスさんが命懸けで作ってくれた退路なのに……ッ」


「こんなの……あんまりよ……っ」


 アレンとリアは悔しさのあまり拳を握り締め、


「……さすがにこれは……終わりね」


「こんな大軍勢、勝てっこねぇよ……っ」


「儚い人生だったんですけど……」


 シィ・リリム・フェリスは、絞り出すようにそう呟いた。


 しかし、それも無理のないことだ。


 彼らの両左右には、まるで壁のような飛空機の大軍勢。

 そこに乗っているのは、黒の外套に身を包んだ剣士。


 その数――およそ一万。


 しかも、そこにいる全員が魂装を展開しており、さらには神託の十三騎士らしき剣士の姿が三つも確認できた。

 彼我の戦力差は歴然。


 アレンたちの脳裏に最悪の展開がよぎる中、


「――問題ない。このまま突っ切るぞ」


 ローズだけは微塵も物怖じせず、ただ前だけを見つめていた。


「ろ、ローズ……さすがにそれは……っ」


「えぇ、いくらなんでも自殺行為よ……」


 アレンとリアは小さく首を横へ振り、口を揃えてそう言った。


 しかし、ローズの考えは変わらない。


「お爺様が――『世界最強の剣士』が、全員無事で逃がすと言ったんだ。そこに間違いなどあるものか」


 彼女がそう断言した次の瞬間、億年桜がかつてないほどの輝きを放ち始めた。



 アレンたちが絶望のどん底に沈んでいる頃、


「総勢一万人の援軍。そしてそれを率いるのは、三人の神託の十三騎士。――チェックメイトだ」


 フォンは朗々と語り、不敵な笑みを浮かべた。


「い、いつの間にあんな大軍勢を集めたんじゃ……!?」


「ふっ、勘違いをしてくれるな。本来奴等は、バッカス=バレンシアを確実に仕留めるための伏兵。第一陣は私とディール、第二陣は一万人の魂装使い――この波状攻撃をもって、貴様を削り切るつもりだったのだが……。思わぬところで役に立ったものだ」


「ぬぅ……っ」


 組織の強さを見せつけられたバッカスは、思わず喉を(うな)らせた。


「とかく、これでアレン=ロードル一行の死は確定した。後はバッカス、貴様だけだ。前時代の亡霊よ、大人しくここで散るがいい!」


「ご老体に鞭を打ち、必死に頑張っていやしたが……。くくっ、結果はだぁれも救えずじまい! 残念でしたねぇ、バッカスの旦那ぁ……!」


 勝利を確信したフォンとディールは、それぞれの得物を、砂剣と毒剣を構えた。

 それに対してバッカスは――天を仰ぎ、大きなため息をつく。


「はぁ……。儂はのぅ……。生まれてこの方、一度も嘘をついたことがないんじゃよ……」


「……それがどうかしたか?」


「んー、何を仰りたいんですかぃ……?」


 突然の告白に、二人は小首を傾げた。


「いや、じゃからのぅ……。この儂が『逃がす』と言うたんなら、黙って道を空けんかい……!」


 バッカスが怒声を発したその瞬間、とてつもない霊力が吹き荒れた。


「この馬鹿げた霊力……貴様、まさか……!?」


「い、いやいやいや……。さすがにそいつは、やり過ぎじゃないですかぃ!?」


 フォンとディールは、思わず目を疑った。


 幻霊(げんれい)は、ただの霊核(れいかく)ではない。

 強烈な自我と人知を超える力、これらを兼ね備えた正真正銘の化物。

 そんな化物から力を引っぺがし、『魂装』として発現するには、尋常ならざる修業と莫大な霊力が必要だ。

 ましてや幻霊を解き放ち、『真装』を身に付けようともなれば……それはまさしく修羅の道と言えるだろう。


『幻霊の真装』とはすなわち――天賦の才を持つ一流の剣士が、全盛期の時分に持てる霊力の全てを投じて、ようやくその一端に指を掛けられるか否か……という超常の力なのだ。

 それは決して、バッカスのような(よわい)二百五十を超える剣士が振るえるものではない。


(それなのに何故……っ。何故貴様は、これほどの『圧』を放っているのだ……ッ!?)


 フォンはグッと歯を食いしばりながら、バッカス=バレンシアという男を凝視した。


 最盛期を過ぎ、不治の病に侵され、乏しい霊力しか持たない――そんな死に体の剣士が、『その力』を振るう道理はどこにもないはずだ。


(あ、あり得ない……。こんなことは、絶対にあり得ない。否、あってはならない……ッ)


 不気味なほどにシンと鎮まり返る中――。


 これまでの堅苦しい常識を嘲笑(あざわら)うかのようにして、(いにしえ)の剣士は声高に叫ぶ。


()げ――命の大樹(セフィロト)ッ!」


※今回の後書きは大事なお知らせが目白押しなので、どうかぜひ最後まで目を通していただけると嬉しいです。


6月19日発売予定の『一億年ボタン第四巻』のカバーイラストが公開されました!


しかも、通常版+ドラマCD付き特装版の二種類!(ページの一番下の方に貼ってあります↓)


『左側』アレン(ゼオン)+イドラ+フーの三人が通常版!

『右側』アレン+リア+ローズ+シィの四人がドラマCD付き特装版!


なんて素晴らしい表紙でしょうか!


そしてそして――ドラマCDはなんと『70分超え』という、とんでもない超絶ボリュームでお送りいたします!


内容はもちろん、全て新規書き下ろし!

アレンたちが『双六の世界』に吸い込まれた先でのお話で、笑いあり、バトルあり、ちょっとエッチなシーンありあり!


とにかく濃密な大作に仕上がっております!


『6月19日』発売予定の第四巻は、現在Amazon様など各種通販サイトで絶賛予約受付中!

ドラマCD付き特装版は、おそらく全ての書店さんには出回らないと思うので、お求めの際はご予約をいただければ確実です!(通常版は、ほとんどの書店さんに入荷されると思います)


書籍化・漫画化・ドラマCD化……破竹の勢いで展開されていく『一億年ボタン』シリーズ!

みなさまが買ってくださっているおかげで、とてつもない大ヒット作となっております!(おかげさまで、つい先日またまた第一巻の重版が決まりました!)

ここまで第一巻・第二巻・第三巻と応援いただき、本当にありがとうございます!


「そういえばまだ買ってなかったな」という方は、アレンたちに声がついたこの機会にどうかぜひチェックしていただけると嬉しいです!

書籍版には独自の展開+大量加筆+新規書き下ろしエピソードがありますので、きっとお楽しみにいただけるかと思います!


そしてそして――本日は『コミック版』一億年ボタンの更新日!

『アレンとローズの剣武祭編』が、超迫力のバトルが描かれております!


こちらはページ下のリンクから、ヤングエースUPの一億年ボタン連載ページへ飛ぶことができます!

漫画を読んだ後は、ぜひ最終ページの『応援ボタン』をぽちっと押していただけると嬉しいです!


長くなりましたが、ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

今後とも、どうか応援よろしくお願いいたします!


月島秀一

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― 新着の感想 ―
[一言] 表紙のイドラ可愛いですね~! 体に気をつけて毎秒(!?)投稿頑張ってください!応援してます!
2020/06/10 20:29 退会済み
管理
[一言] この作品がとても好きという訳では無いが、連載開始当初から読んでいるので買おうかと迷う今日この頃
[気になる点] 作中世界に剣士って存在がどれだけいるのか分からないけど、3万人はさすがに多すぎなのでは…。 それに主人公達と同じタイプの飛空機装備で、個々が武器を振るえる間隔空けて飛んでるとしたら、一…
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