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桜の国チェリンと七聖剣【百五十九】


「少し名残惜しいですが、そろそろ決着と行きやしょうか」


 ディールが左手を伸ばせば――そこへ禍々しい毒が集中していき、(いか)めしい巨大な弓が生まれた。


「よっこらせっとぉ」


 奴は毒剣ヒドラを『矢』のようにして(つが)え、こちらへ狙いを定める。


「これから放つのは、あっしの生涯と旦那への愛を込めた渾身の一撃――どうか受け取ってくだせぇ」


「はぁ゛……。その糞つまんねぇ戯言が、『最期の言葉』でいいんだな?」


「くく……っ。あなたという人は、最後の最後までつれない人ですねぇ……!」


 ディールは(たの)しそうに破顔(はがん)し、限界ギリギリまで弦を引き絞った。


 次の瞬間、


「――英雄殺しの毒龍」


 毒剣ヒドラがとてつもない勢いで射出された。

 おびただしい猛毒を帯びたその一撃は、まさに邪悪な毒龍そのものだ。

 草も石も土も――その毒に触れたものは、文字通り全てが死んでいく。


「へぇ゛……」


 さすがは元皇帝直属の四騎士、熟練の真装使いと言ったところか。

 眼前に迫る一撃には、それなりの威力が秘められていた。


「ゴミカスにしては、まともな技じゃねぇか」


 俺はゆっくりと腰を落とし、黒剣の持ち手をグッと後ろへ引き絞る。


「四の太刀――黒槍(こくそう)


 刹那――剣先一点に凝縮された闇が、爆発的な速度で解き放たれた。

 六の太刀冥轟(めいごう)とは違い、『一極集中』した闇の突きは、迫りくる毒龍を貫き、


「は、はは……っ。おみご、と……」


 ディールの胴体に大きな風穴をこじ開けた。

 真装<九首の毒龍(ヒドラ)>は光の粒子と化して消え去り、奴は仰向けになって倒れ込んだ。


「が、ふ……」


 ぽっかりと空いた穴から、絶えず鮮血が流れ出す。

 英雄殺しの毒龍で全ての霊力を使い果たしたのか、自慢の回復能力は完全に鳴りを潜めていた。


「ぜひゅ、ぜひゅ……っ」


 ディールの顔はみるみるうちに青く染まっていき、もはや虫の息といった状態だ。


「ははっ、えらく惨めなザマじゃねぇか! ご気分はどうですかぁ゛、んん゛?」


「へ、へへ……。おかげさまで最高で、さぁ……っ」


 奴はそう言って、胡散臭い笑みを浮かべた。


「はっ、その軽口もここまでくりゃぁ立派なもんだぜ」


 俺が心の底から呆れ返っていると、


「さ、さぁ、早くとどめを刺してくだせぇ……っ! そうすりゃあっしは、旦那の中で『永遠の存在』となる! いつまでもどこまでも、あなたとともに生き続けられるんでさぁ!」


 ディールは血まみれの右手をこちらへ伸ばし、必死にそう懇願してきた。


「ちぃ゛、本当にどこまでも気持ち悪ぃ奴だな……。そんなにすぐ死にてぇのなら、望み通り()ってやる……よォ゛!」


 ディールの首に狙いを定め、黒剣を振り下ろした次の瞬間、


「――そこまでにしてもらおうか」


 七聖剣フォン=マスタングが、俺の正面に立ち塞がった。


(なんだこの『砂』……随分と硬ぇな)


 振り下ろした黒剣は、フォンを包む球状の砂に阻まれている。


「確かにディール(こいつ)は、救いようのない下種(げす)だ。人間性は壊滅しているうえ、品性の欠片もない。だがしかし、『真の平和』のためには必要な戦力。ここで失うわけにはいかない」


「つまりぃ゛……邪魔をするってことだな?」


「あぁ、そうだ」


「なら、死んどけ」


 俺は闇の出力を一気に跳ね上げ、砂の球体を斬り飛ばした。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 質問なんですけど魂装や真装に、明確な系統や種類ってないんですか? 分かりやすくなったら面白いお思うし、単純にカッコいいと思います。まあ、これは僕の願望みたいなものなんですが笑 [一言]…
[気になる点] 魂装を極めれば相手の特性を使えたりしますか? シドーの孤高の氷狼やイドラの蒼穹の閃雷使えたり 魂の力という分野で一致してますし 黒の組織は魂装を狙ってますしアレンなら出来そうですが? …
[気になる点] そういえばディールが持つヒュドラって神話上でヘラクレスがその不死性故に倒しきれず封印するだけに終わったやつですよね? これあいつ死ないんじゃないですか?助けなくっても・・・・ あともう…
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