桜の国チェリンと七聖剣【百四十五】
「あぁ……。名残惜しいですが、アレンの旦那ともこれでお別れですねぇ……」
ディールは目尻に浮かべた涙を拭いながら、わざとらしく声を震わせた。
そして――。
「旦那みたいに甘っちょろい人、けっこう好きでしたよ?」
本当に気持ちの悪い告白をしてから、その凶悪な魂装を地面に突き立てた。
「――毒龍の呪尾ッ!」
九本の巨大な尻尾が、大地から天を穿つようにして突き上がる。
その尻尾は奴の醜悪な心を体現するかのように歪な形をしており、見る者に嫌悪感を抱かせる毒々しい色を放っていた。
「そぉら、こいつでしまいでさぁ!」
必勝を確信したディールが、勢いよく右手を薙いだその瞬間――九の毒尾が一斉にこちらへ牙を剥く。
「あ、アレン……ッ!」
リアは大慌てでこちらへ駆け寄ってくれたけれど……。
とてもじゃないが、間に合う距離ではない。
「――敵の動きを制限し、手数の多い技で一気に仕留める。お手本のような連続攻撃だが……少しばかり出力が足りてないぞ?」
俺は小さく息を吐き出し、これまで溜め込んできたディールへの怒りを一気に爆発させた。
「――闇の影」
刹那、深淵を思わせる漆黒の闇が吹き荒れ――迫りくる毒龍の呪尾をいとも容易く食らい尽くした。