桜の国チェリンと七聖剣【百十】
「えぇ、聖騎士協会から情報が上がっていたわ。確か……元『皇帝直属の四騎士』さんよね?」
「あららのら……。『元』ってところまで割れてんですかぃ。なんつーか、これはまたお恥ずかしい話で……」
彼は大袈裟に肩を竦め、首を左右に振った。
ディール=ラインスタッド。
今紫のミドルヘアに色の薄いサングラスを掛けた男だ。
身長は百八十センチ半ば、年齢は二十代後半ぐらいだろう。
柔和な表情を浮かべ、一見すると優しそうにも見えるが……。とにかく動きの一つ一つが芝居がかっており、全体的に胡散臭い。
身に付けた黒い外套には紫色の――どこかで見たことのある紋様が刻まれていた。
(しかし、元皇帝直属の四騎士か……)
階級から判断すれば、あのセバスさんと近い実力の持ち主。
決して、油断の許される相手じゃない。
「それで……元七聖剣と元皇帝直属の四騎士。超が付くほどの危険人物が、いったいなんのようかしら? まさか、二人で仲良くお花見に来たってわけじゃないわよね?」
会長の問い掛けに対し、
「当然だ。私たちの目的はただ一つ。――バッカス=バレンシア、貴様が長年隠し持つ幻霊『億年桜』を回収することだ」
フォンはとんでもない返答を口にしたのだった。