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桜の国チェリンと七聖剣【百四】
バッカスさんの視線の先には、大きな黒い影があった。
(太陽と位置が重なっているから、はっきりとは見えないけど……)
確かに飛空機のようなシルエットが二つ、真っ直ぐこちらへ向かって来ていた。
(この場所を知っているということは、アークストリア家の使用人さんかな……?)
俺がぼんやりそんなことを考えていると――上空から、黄色い球体が落下してきた。
(なんだ……?)
綺麗な泥団子のような、手のひらサイズの球体。
よくよく目を凝らして見るとそれは、とてつもなく小さな砂粒の集まりだった。
ただ、奇妙な点が一つ。
どういうわけかその球体は、フワフワと宙に浮かんでいるのだ。
「んー、なんだこれ? 泥団子、じゃないよな?」
リリム先輩が興味津々といった風に身を乗り出したその瞬間、会長の金切り声が響き渡った。
「アレンくん、今すぐ防御お願い……ッ!」
「え?」
俺が疑問の声をあげた直後、黄色い球体はとてつもない大爆発を巻き起こした。