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桜の国チェリンと七聖剣【百三】
アークストリア家の屋敷を発ち、空を飛ぶこと十数分。
(っと、見つけたぞ)
上空からバッカスさんの姿を発見した俺たちは、ゆっくりと高度を落としていき――彼のすぐそばに着陸した。
「ん……? おぉ、来たか小僧!」
こちらに気付いた彼は、趣味と実益を兼ねた釣りを中断して立ち上がった。
「はい、今日もよろしくお願いします」
「うむ。今回はかなり強度の高い修業になるが、体の調子はどうじゃ? 昨日はちゃんとよく眠れたか?」
バッカスさんの問い掛けに対し、俺たちは力強く頷く。
「なるほど、しっかりと整えてきたようじゃな。……よし。それではこれより、桜華一刀流奥義鏡桜斬を伝授しよう! まずはいつもみたく、この儂が手本を見せてや……んん?」
彼は何故か途中で言葉を切り、抜き掛けた太刀を鞘に収めた。
「「「「「「……?」」」」」」
突然の急停止に俺たちが小首を傾げていると、
「あのカラクリは……小僧らの仲間か?」
大空を見上げたバッカスさんは、ポツリとそう呟いたのだった。