桜の国チェリンと七聖剣【九十八】
どうしてそこで俺の名前が出てくるのか。
しかも、機嫌を損ねたくないとは、いったいどういう意味なのか。
俺の頭の中では、いくつもの疑問が浮かび上がった。
「この前にも話した通り、私たち『皇族派』はあなたの囲い込みに活路を見出しているの」
「それって確か、『貴族派』との問題ですよね?」
リーンガード皇国では、皇族派と貴族派が激しく対立している。
以前会長から、そんな話を聞かされたことがあった。
「えぇ、そうよ。貴族派が七聖剣の一人を囲っている以上、皇族派もそれ相応の『武力』が必要ってやつね」
会長はそう言いながら、俺の肩を人差し指でポスポスと突いた。
(ただの学生剣士と騎士協会が誇る最強の七剣士、とても釣り合いが取れるとは思えないけどなぁ……)
どうやら天子様とロディスさんには、ずいぶん過大評価されてしまっているらしい。
「それで……アレンくんと血狐の『蜜月関係』は、『裏の世界』じゃもはや常識。知らない人はいないでしょうね」
「み、蜜月関係というのは、ちょっと言い過ぎのような……」
確かにリゼさんには、これまでいろいろとお世話になっている。
だが、蜜月関係とまで言えるほど、親密なお付き合いをしているわけじゃないと思う。