桜の国チェリンと七聖剣【九十】
「会談の開催場所は、聖騎士協会の頂点である『聖騎士長』様が決定し、それを四大国の元首へ伝えたの」
会長は腕組みをしながら、ゆっくりと語り始めた。
「ちなみに……情報漏洩には、万全の対策をしていたわ。開催場所を各国の元首へ伝える際は、いかなる電子端末にも記録を残さないよう、最も原始的な『郵便配達』という手法を採ったの。そのうえ運び手には、会談に出席する予定だった四人の七聖剣が登用されたわ」
「そ、それはまたずいぶんと豪華ですね……」
「えぇ、世界一安全かつ頼れる郵便屋さんね。だから、絶対に情報が洩れることはない……はずなのよ」
「それが、いとも容易く漏れてしまったと……」
「えぇ……。どうやら、四大国側には『裏切り者』がいるみたいね」
「……裏切り者、ですか」
その言葉を聞いて、パッと思い浮かんだのは――千刃学院の副生徒会長セバス=チャンドラーだ。
セバスさんは長年リーンガード皇国に潜伏し、いくつもの事件に関与してきたものとされている。
(だけど、彼は今年の初めに帝国へ帰還し、その後『皇帝直属の四騎士』として暗躍している……)
時系列的に考えて、本件の『裏切り者』じゃないだろう。
「常識的に考えるならば、容疑者はたったの九人よ。四大国の首脳四人・配達の任を受けた七聖剣四人・それから開催場所を決定した聖騎士長様ね」
会長は両手の指を一本一本折りながら、裏切りの可能性がある者を挙げ連ねた。