桜の国チェリンと七聖剣【八十五】
「まず事前に予想されていた問題なんだけれど……。リーンガード皇国・ヴェステリア王国・ポリエスタ連邦・ロンゾ共和国――極秘会談に参加した、大国間における意見の不一致ね」
会長は指を一つ一つ折りながら、かつて『五大国』を形成した国の名前を挙げ連ねた。
(本来ならば、そこにテレシア公国も参加していただろうけど……)
あそこは魔族と黒の組織の襲撃を受け、神聖ローネリア帝国の統治下にある。
とてもじゃないが、こういった会議には参列できる状態じゃない。
「意見の不一致が起きた議題は、『神聖ローネリア帝国への対応』よ。『今は静観し、対話の道を模索すべき』と主張するリーンガード皇国とポリエスタ連邦。『一刻の猶予さえ与えず、全面戦争に乗り出すべき』と主張するヴェステリア王国とロンゾ共和国。両陣営の意見は、真っ向から対立しているの」
彼女は困り顔で肩を竦めた。
「……なるほど」
穏健派と過激派。両者がここまではっきりと分かれてしまっては、進む話も進まないだろう。
(でも、ヴェステリア王国は全面戦争を望んでいるのか……)
あのグリス陛下が強硬な態度を取っている原因は……去年の八月頃、『愛娘』のリアが黒の組織に誘拐されたからだろう。