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15話: きゅうりうまっ

✳︎この物語はフィクションんです。実在の人物や団体、法律とは関係ありません

 総司は俺のラッシュガードの前をこじ開け、そのまま乱暴に剥ぎ取った

 まだ濡れていない為、案外簡単に剥ぎ取られる上着。


 その瞬間…


「何やっとんじゃぼけぇぇええええ!」

「ぐふぁ!」


 驚いた俺は思わず反射的に総司を投げ飛ばしてしまった。

 俺の脊髄グッジョブ。


 ズゾッ!


 っと、訓練で培われた華麗な投げ技で、背中から叩きつけられる総司。

 だが残念なことに、地面が柔らかい砂なため、効果はいまひとつ。


「ったく、急に何するかと思えば………」


 俺のラッシュガード奪ってどうするつもりだったんだろうか。

 別に後で脱ぐ予定だったし、このタイミングで剥ぎ取ったところで一体何になる?

 俺がキャッ!っとか言って恥ずかしがる姿を晒しものにするとかか?言わねえよ。


 何にせよ、目論見は外れたな。外れたはずなのに、何故だろう…………





 すごく、視線を感じる。





 総司から視線を上げ、周りを見回すと、クラスメートのほぼ全員が阿呆みたいな面して俺を見つめていた。

 豆鉄砲を喰らった鳩が量産されている。


 ただ、その顔は男女の間に大きな差があった。


 男子は蒼白、絶望に染まった顔。

 女子は赤面、見惚れるような顔。


 直前までよいしょされていた高原(イケメンくん)に関しては、注目が一瞬の内に自分から総司、そして俺に移ったことで、完全に置き去りにされている。

 え、俺は?俺は?みたいな仕草が滑稽だ。


 にしてもこいつ、さっき "いい体" と女子からもてはやされてなかったか?

 筋肉無くない?………まあいいや。


 そんな事を考えていると…



「すご……」



 っと、静寂の中、女子の中の1人が声を漏らした。

 フリル付きの赤い模様のビキニを着た黒髪ショートの女子で、名前は………秋本あきもとだったか。

 詩織信者の息がかかっていない、俺にも普通に接してくれるクラスメートの1人だ。

 明るい性格で、そこそこ可愛い(らしい)。


 にしても、凄いって、何が凄いんだろうか……。

 クエスチョンマークが頭上に浮かぶ。




 一瞬の間。




 次の瞬間、目がピカーン!っと光り、起動したロボットのように急に俺に迫って来る秋本。


「凄いね鏡くん!ムッキムキだね!ちょっと腕触っていい?いい?」

「ちょっ!待て来るな………俺のはその、触るとかぶれるから総司にしろ!」


 なぜか血相をかえて触ろうとしてくる秋本に対して、とっさにディフェンスをかます俺。


 急に来たなおい!急に来たなおい!

 グイグイ来すぎて、若干の恐怖を感じる。


「え、私も触ってみたい!」

「近くで見よう!」

「ちょっと待って!鏡に近づいたら何されるか分からないわよ!」


 秋本に続いて俺の周りにわらわらと集まってくる中立女子たちと、それを止めようとする俺アンチの女子たち。


 俺に対するクラスの女子の立場が、明確に陣営を分け始めた。


 だが、今そんな分析をしている暇は無い。

 お世辞にも女慣れしているとは言えない俺にとって、この状況は地獄。

 俺が………危ない!


 くっそ、完全にヘイト………いや今回に限ってはタゲを買ってしまったようだ。


「な、なぁ!俺も最近鍛えててさ!」

「鏡のなんて、見せ筋だぜ見せ筋」


 そこへさらにカオスを投入してくる男子諸君。

 急に女子が俺に群がり始めた事により、慌てた様子で注意を引こうと躍起になっているようだ。


 だが……


「あんた達は脂肪たっぷりじゃない!」

「「うっ………」」



 一蹴。



 もう少し頑張ってくれよ………まあ、確かに脂肪率は高そうだな。


『ヨリ!ヨリ!大丈夫!?』


 遠くからチーナの声が僅かに聞こえた。


 大丈夫じゃないっす。助けてぇ。



 ちなみに現在、


 俺←女子←男子ーーーーー高原&チーナ


 という今までにない奇妙な構図が形成されている。

 完全に地獄絵図。

 かの鳥山石燕でも、これを見れば驚くだろう。


 そういえば、総司はどこに?

 この状況を作った悪魔に責任をと……………









「きゅうりうまっ」








 きさまあああああああぁ!

 何きゅうりの一本漬け買って食ってんだよ!

 美味そうだなぁおい!?


 くそが!後で……………後でどうにかしてやる!!!




 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ひとしきり騒がれた後で、やっと解放された。

 結局包囲網は突破できなかったが、少し腕を触られる程度でなんとか踏ん張ることができた。

 ただ、男子からの嫉妬の視線と女子からの奇妙な視線を、まだちょいちょい向けられている。


 それを避けるために、クラスの連中が浅瀬ではしゃいでいる中、俺は集団から離れパラソルの陰で寝転んでいるところだ。


 海風が気持ちいい。


 あの後秋本が、迷惑をかけてすまなかったと平謝りをしてきたのだが、元凶はほぼほぼ総司なので(これっぽっちしか)気にしていないと伝えた。


 その彼女は今、チーナの側に付いて烏合の衆に適度な距離を保たせてくれている。

 ああ見えて面倒見がいいのかもしれない。


 人見知りのチーナも、彼女は信用できると判断したのか、他よりも気を許しているようだ。

 ひとまず安心だろう。




 そして、同じパラソルで寝転んでいる人間がもう1人。




 先ほどの大騒ぎの大元であるそいつは、見ると気持ちよさそうに目を閉じていた。

 まあ、こいつに振り回される事は今回が初めてでは無い。


 慣れているといえば慣れているし、少し時間がたった今、怒りも冷めてきた。


「なあ、総司」


 ただ、少し知りたい事があって俺は総司に呼びかける。

 総司は目を開けると、こちらに少し首を傾けてそれに応じた。


「なんだよ」

「………………………それが遺言か?」

「ただの返事で何が伝わると!!!? っておい!待て!」




 冷めたからって怒りが消えた訳じゃないんだぜ?

 さあ!罪を償って貰おうか!


 海水浴客はいるが多くは無い。クラスメートの注意も今は逸れている。


 今なら行ける!断罪の時は来た!


 がばぁ!っと立ち上がり、出遅れてまだ肩肘をついている総司を見下ろす。

 そしていざ刑を執行しようという、その時………


「おーい2人とも! 昼飯に行くぞー!」


 っと、タイミング悪くクラスの奴らに呼びかけられた。



 っくそ!悪運の良い奴め!


 これでは流石に手を出せない。

 仕方ない、後回しにするか………。



 そんなこんなで午前は無事?に過ぎ、食事を済ませてまた遊ぶ。





 だが、事件は午後に起きた。


宜しければ、ブックマークや評価☆をよろしくお願いします!


今回のメインキャラ: きゅうり


鳥山石燕の画集は愛読書

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― 新着の感想 ―
[良い点] きゅうり漬けは美味い(定理)
[気になる点] いや、これで気づけないとは… どんだけ暗い過去だったんだ…
[一言] 暴力は全てを解決する
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