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一章 第四話

「……何をとち狂った事を言っているんだ、お前は?」


 昨日、交易都市に着いたのが少々遅かった事もあり、一刀とラッツ達は早々に休息に入った。一日中暇を持て余していたルシェに絡まれかけたが、オズワルによってその目論見は崩される。宿代などは例の端末から渡された金でどうにかする旨を伝え、一刀は一人、広々とした部屋に泊まった。

 この世界の国々、この世界の人種、この世界の秩序……、考える事は後から後から源泉のように沸いてきたが、不思議と一刀にはその感触が心地よいものに感じた。

 彼はある程度のところで現状に収束させ、考える事を止める。そうする事ですぐさま眠りに落ちられるからだ。

 決して熟睡する事はなく、その手はどんな状況になっても眠った状態から剣を抜き、敵を捌くだけの技術がある。それ故に、彼に脅威などはあり得なかった。彼自身がどう思おうとも。

 だが、得てして予想外というのはやってくるものらしい。

 翌日、十分な休息を得て、ギルドに向かった一刀とラッツ達。今日はラッツだけではなく、オルゴとナイードもついてきている。交易都市には数日滞在するつもりであるため、その間にいくつか依頼をこなそうという話になり、こうして共に来たというわけだ。

 そして、ギルドに入った時、目の前に立っていた女性に告げられた言葉に対しての返答が前述のラッツの言葉である。ちなみに、ラッツにここまで言わせた人物は昨日はギルドの受付嬢をしていたはずのファラナだ。昨日着ていたパリッとしたスーツの様な制服ではなく、今日着ているのはラフな動きやすい麻の生地に何かの皮の胸当て。武器は双剣らしく、腰のベルトには二振りの細長い剣が差してある。所謂「冒険者」っぽい格好だが、何故かミニスカート。それに膝上十センチほどまであるハイニーソックス。スカートから覗く足が艶めかしい。だが、彼女の流れるような金髪と深緑の色合いはなかなかに相性がいいらしく、本来であれば地味めな緑がこれでもかと言うほど強調されている。エルフは森と共に生きる種族。森の色すらも操るほどとは、賞賛こそされ、それを咎められる謂われはない。

 それを着ているのがファラナ(ショタコン)でなければ、だが。


「だから、今言ったばかりじゃない。私も同行するって」


 何を当り前な事を、とでも言いたげに放たれた言葉は、ラッツを含む冒険者勢を唖然とさせるには十分な威力を誇っていた。


「……受付はどうするつもりだ? 仮にも、大陸最大の支部の一つだぞ? そこの従業員の筆頭でもあり、ギルドマスターの補佐でもあるお前が抜けたらここはどうなる」


 カナード支部は、交易都市に構えているだけあって、その規模はこの大陸でも一二を争うほどの大きさだ。その依頼量はこことほぼ同規模であるオーヴェント本部よりも多いと言われる。交易都市、というのもその理由の一つではあるだろうが、人が集まる所には、自然と問題事も集中する、といったところか。それほどの規模であるこのカナード支部において、ファラナの存在はほぼ中核に位置していると言っても過言ではない。そして、大きければ大きいほど、支柱が無くなればどうなるか……、想像するまでもないだろう。


「問題無いわ。あの子たちだって無能じゃないもの。私一人がいなくなったところで仕事に支障は出ない筈よ。そこまでの事を仕込んだんだから」


 そう言ってファラナが指した方には、彼女の後輩であろう受付嬢達がいる。彼女達もまた、その端正な顔で苦笑いを浮かべている。どうやらファラナの無茶振りは今に始まった事ではないらしい。


「……だからといって、お前が離れるのはマズイだろう」

「大丈夫よ。しばらくはマスターもいないから、その補佐もないし。何より、私にとって彼との出会いは運命なの! この機会を逃せば次は無いわ!!」

「……おいラッツ、毎度聞くがコイツの頭の中大丈夫なのかよ?」

「俺に聞くな……」


 どうやら一世一代の機会らしいファラナの心の叫びを一同は心底ウンザリした表情で聞き流す。……と思いきや、一人彼女の存在をまるで気にしていない者がいた。


「すみません、Fランクですぐに受けられる依頼って何かないですか?」


 ファラナから運命の相手だなんだと一方的に焦がれられている一刀である。先ほどから部屋のほぼ中心で慟哭の咆哮を叫んでいるファラナを完全に無視して一直線にクエストボードへと向かっていた。お気に召したものが無かったのか、結局受付に行き、直接聞いている。その行動力は目を見張るものがあるが、どうやら空気を読む能力に関しては決定的に欠如しているようだ。もしくは、その場の空気に流されないほどの胆力の持ち主か。さしもの受付嬢達も目を白黒させている。


「そう、いう、わけで~。カズト君は私と一緒にクエストを受けましょう。うん、それが一番ね」

「いや、だからラッツさん達と……」

「はいはい、ほら、これなんてどう? スリングボア退治。なかなか強くて狩応えがあるわよ?」

「ファラナさん、それBランクのクエスト……」

「いいじゃない、私もBランクなんだから。ね、どうかしら?」

「いや、どうかしらと言われても……。僕はまだFランクなので、それ相応のクエストを受けるのが妥当かと……」

「でも、それじゃあ私の見せ場が無いじゃない」

「み、見せ場……?」

「そう、見せ場!!」


 一刀の視線の先がラッツ達へと向かう。その目は、この女は何を言っているんだ、と如実に語っている。表情はぎこちなくもなんとか笑顔を作ってはいるが、口元が固い。決して拒絶しているわけではないが、予想外のファラナの態度に流石に驚いているのか、困惑した表情をラッツ達に向ける。


「おい……、カズトが困ってる。その辺にしておけ」

「え~……。困ってなんかないわよね? 私に手取り足取り腰取り教えてもらった方がいいわよね?」

「最後のはよく分かりませんが……、一つだけ言える事があります。鬱陶しい」

「なん……だと……」


 少し後ろに下がったと思ったら、その場に手を付いて蹲った。よくあるネットスラングに似ている気もしたが、ネットをほとんど触っていない一刀にはそんな事すらも分からない。

 とりあえず、邪魔がいなくなったところで一刀は、再度自分に今最も最適なクエストを探す。


「これなんかどうだろ」


 受付嬢から提示された中で、比較的自分向けだと思われるものを選び出した。そのクエストとは……「薬草探し」。


「また随分と面白くないもの選んでくれるわね……」

「面白いも面白くないも無いだろうが……。お前は何を求めているんだ……」

「それは……刺激よ!!」

「意味が分からん」


 既に昨日までのファラナの美貌の受付嬢という印象は、一刀の中で完全に瓦解し、ネタキャラとしての地位を確立していく。本人は不本意極まりないだろうが、残念ながら一刀が目にした大半の姿が痴態と呼んでもおかしくはないものであるため、払しょくするのは難しいだろう。


「あの~……、ちょっといいですか?」


 そんなこんなで目の前で行われているショタコンエルフをどう成敗するか考えていた一刀は、先ほどから自分の先輩を遠い目で見ていた受付嬢から申し訳なさそうな声を掛けられる。


「ファラナ先輩はともかく、ラッツさん達が付き添うならもう少しランクを上げても問題ないものかと思います。ですので、ここは中級クラスの討伐クエストか、軽い護衛なんかどうでしょう」

「ん~……、でも、僕まだランクFですよ?」

「はい、それに関しては重々承知しております。ですので、あくまでも勉強という形で、戦闘行為や護衛行動に一切関わらないという条件付きですが、可能です。また、そうなると当然報酬などは支払われない為、本当にただ着いて行くだけになりますが……。たまに、カズトさんのような新人冒険者の方がそうやってベテラン冒険者に勉強がてらに着いて行く事がありますよ。それも良い経験になると思いますし、どうでしょうか?」

「着いて行くだけ、か……。それなら僕でも行けそうですね。ちょっとラッツさん達と相談してみます」

「はい。それまでにクエストの方を見繕っておきますね」

「お願いします」


 小さく頭を下げると、一刀はラッツ達のもとに小走りで走り寄っていく。その姿にごく一部のショタコンはその身を悶えさせていたが、既に突っ込む事すら億劫になっていたラッツ達が何も言わない事をいいことに、熱い視線を一刀へと向けている。そんな彼女には一瞥すら暮れず、一刀はラッツ達に受付嬢から聞いてきた付き添うだけのクエストについて話した。


「へぇ~……、そんなのがあるんだね。いいんじゃない? カズト君の先の事も考えると、ここでそのクエストを受けておくのは少なくともマイナスにはならないと思うよ」


 一刀の話を聞いて、考え込んでいるラッツの横から、ヒョイと顔を覗かせたナイードが提案に乗る。一刀の事を考えて言ってくれているのだろうか、彼の口調は一刀の先を見越して行うような旨の意味を孕んでいる。


「いいんじゃねぇの? 邪魔さえされなければ俺はかまわねぇぜ」


 とはオルゴの弁。邪魔をするというのは、護衛の件か、はたまた護衛中の戦闘に関する件かは判断しかねるところだが、どちらにしろ、剣を抜かせれば一刀に敵う者はいない。……いや、弱体化している今の一刀ならば、それも分からないか。


「……ん、二人がそこまで言うのならば、俺も反対する理由は無いな。それで受ける内容なんだが……」

「ちょっとちょっと、私もいるってこと忘れてない?」


 いい具合に話がまとまろうとしているところに、ファラナがその口を挟む。その顔には不満たらたらの表情を浮かべていた。


「そのクエストじゃ、私の見せ場が無いじゃない!!」

「まだ言うか……」


 見せ場見せ場と何度も繰り返すファラナを、一同は冷めた目で見据える。一刀もその中に入っている。


「うぐ……。あ、でも、カズト君にその目で見られるのは良いかも……」


 ショタコンの上にM属性まであると……、これはもう駄目かもしれない。もはや付き合うのが疲れたとでも言いたげな彼らだったが、各々の顔に諦めの色を浮かべると、そのまま全員口を噤んだ。


「……とりあえず、そのクエストを受けるか。依頼の受注を行って来い」

「……分かりました」


 一人悶えた状態のファラナを放置し、再度一刀は受付へと向かう。


「話はつきましたか?」

「はい。クエストを受けさせて頂きます。どのようなクエストから教えて頂けますか?」

「分かりました。今回紹介するのは、商人の護衛依頼です。行き先はこのカナードから馬車で半日ほどの鉱山都市ウルティバとなります。クエストランクはD。ウルティバに到着後、依頼主からクエスト達成と判断されれば終了です。依頼主はバラムス・モンドリアン。夫婦で商人をしており、ナブリスという小さな商会に所属しています。出立は明日です」

「明日ですか……。随分と急ですね」

「依頼自体は十日程前から出されておりました。ただ、あまり報酬が多くない事と、基本的な護衛クエストのランクはCのところをDに下げている、というのが冒険者から敬遠されている主な理由ですね」


 相場よりも低めの報酬とランク、理由としては恐らくは十分なのだろう。それだけで冒険者というのは近付かなくなるものなのだろうか。


「その依頼を受けます。……まぁ、受けると言っても実際に行うのはラッツさん達ですが」

「クエストの受注を承りました。それでは、依頼書を受け取り下さい」


 そうして差し出される少し黄ばんだ色の紙。そこには手書きで今回受けた依頼が記されている。あいにくと、一刀にはまだこの世界の文字が分からない為、読む事が出来ない……、の筈だが、何故か彼の頭はキッチリとそこに書かれている文字を理解していた。

 思い当たる節は一つだけ。その心当たりに若干の感謝と多分の悪態を吐きながら一刀は手元の紙に目を通す。

『ランク:D 依頼内容:護衛(鉱山都市ウルティバまで) 報酬:5000ルクス 待ち合わせ:南門 依頼者:バラムス・モンドリアン』

 ルクスというのは、この世界での一般的な金額の単位だ。要は円、ドルにするあたるものだ。呼称としては1ルクス、2ルクス、10ルクス、100ルクスと大体一刀が元いた世界と数え方は変わらないが、10000以降は1ハイルクス、10ハイルクスとちょうど1000と10000の間でその呼称が変わる。これには貨幣そのものが一般的に使われる物よりも更に価値のある素材で作られているから、とも言われている。大体価値としては円と同じで、このクエストの報酬は大体5000円になる。

 子供の小遣いか、と小さく呟いたのは一刀である。


「ありがとうございます」


 その紙を片手にラッツ達がいる場所へと戻る。


「無事受けられたか。で?」


 差し出された手に、一刀は持っていた依頼書を渡す。受け取った依頼書に目を通し、内容に関してどこか不備が無いか確認を行う。


「こりゃまた、誰も受けなそうな依頼だなおい」

「ランクも落としている上に報酬も安い。それに見たところあんまり有名じゃない商人みたいだね。大方地方の小さな商店を営んでいる三流商人ってところだろうね。誰も受けないのは当然だと思うよ」

「……それに加えて、最近各地で不自然な失踪事件が頻発しているらしい」

「失踪事件……、ですか?」


 これまでそういった話題を一度も耳にしていないためか、一刀は小さくともその驚愕を隠せない。そういえば、と一刀が基本的に話している時と言えば大概ルシェとの世間話だ。そもそも、彼女はそういった話題に疎そうではあるし、ラッツ達も一刀の年齢からそういう話はあまり良い影響を与えないと考えたのだろう。

 だが、冒険者となった今、遠からずそういった事件に当たる事は確立的に少なくない。ここが伝え時だと思ったのか。


「その鉱山都市で同じように?」

「いや、ウルティバでの失踪事件は聞いてないな。まだ、という可能性も捨てがたい。準備は万全にしておくぞ」

「分かりました。これからその準備に向かっても?」

「構わん。手伝いくらいはしてやる」

「ちょっと! それは私の役目よ」

「知った事か、阿婆擦れ」

「何ですって~!!」


 このアルフィリアにも、そんな言葉があったのか。的外れな驚愕を表情に映しながら依頼書に今一度目を向ける。

 出立は明日。急ではあるものの、期間は半日。となると、必要な物も定まってくる。

 大体何が必要かは、想像に難くない。大抵は食糧、それに次いでロープや杭、加えて火種や明かりなどだ。サバイバルに一番必要な物はマチェットだという話もあるが、一刀にとって、それは要らぬ心配と言えよう。


「それじゃ、さっさと行こうか。あのメンドクサイ受付嬢に構っている暇は僕たちには無いんだから」

「それもそうだ」


 相手をするのを完全に止めたのか、ラッツが渋面をその顔に張り付けながら一刀の背中を押してギルドから出ていく。

 その後ろで何やら姦しさ溢れる奇声が響き渡るが、誰ひとり気にせずにその場から離れた。


 翌日。

 交易都市の南門に向かった一刀達は、門の前で待ついくつかの幌馬車を見つける。その内の一つ、少し年配の夫婦が待つ幌馬車へと近づく。


「どうも、モンドリアン氏でよろしいでしょうか?」


 いち早く確認を行うラッツ。その口調は普段の無愛想な物ではなく、いつもの彼からは想像出来ないほどの丁寧な口調だ。

 結局、散々駄々を捏ねて付いてきたファラナが彼の後ろに立って驚愕に目を見開いている。とはいえ、その表情自体は依頼主の前で崩すわけにもいかず、無表情を装っているが。


「そうだが……、もしかして君たちが今回私たちを護衛してくれる冒険者かい?」

「えぇ、そうです。短い間ですがよろしくお願いします」

「ふむ……、見たところ子供もいるようだが……、大丈夫なのかね?」


 モンドリアンの言葉に、一刀が反応する。その様子に、ファラナがその後ろから物申そうとするも、目の前にいた一刀によって阻まれる。


「随分な言い草だなぁおい。こっちは相場よりも低い報酬とランクを見ても受けてやったっていうのによ」


 悪態を吐くオルゴ。つまりはそういう事だ。

 商人の集まる交易都市で商売をしていない、というのは事前の情報で知っていた。ならば、どこか地方の商人だろうと予想していたものだが、彼が提示していた護衛の報酬額は相場よりも低く、更に先ほど本人の口からも出た明らかな落胆の言葉。商人にとっては商品というのは命と同価値であると言いきってもおかしくはない。それを守るためには、旅において護衛は非常に重要な役職の筈だ。なればこそ、その相場を知っており、また適切ランクというものを理解しているのが当然、というべきであろう。

 だが、彼はランクも下げ、報酬も下げた上に護衛に対して落胆をした。これが何を指すのか……。


「匂うね、どうも……」

「え!? もしかして私臭い!?」

「……。さぁ、どうでしょう」

「ちょっと、今の間は何!?」


 聞こえないようにひっそりと呟いた筈の独り言は、どうやら背後にいたファラナに聞かれてしまったらしい。が、彼女は密かに自分が一刀の背後ににじり寄っていた事を後ろめたいと思っていたのか、勘違いをしただけ済んだ。ちなみに、先ほどの小さな間はただ単に呆れていただけである。


「まぁまぁあなた、折角来て頂いたんですから、どのような方でも歓迎しなくちゃいけませんよ」


 そう言いながら、幌馬車の中から出てきたのは恰幅の良い年配の女性。モンドリアンをあなた、と呼んだと言う事は、この女性がモンドリアン夫人なのだろう。不気味なほど満面に笑顔を浮かべながら近寄ってくる姿は、能面をかぶって襲いかかってくるかのような光景を錯覚させる。ついつい一刀の手が腰へと伸びてしまった事は、この際仕方が無いだろう。

 モンドリアン夫妻の初対面での一刀の印象は最悪と言っても良い。それほどまで彼らは不気味且つ異常であった。


「えっと……、とりあえず今回護衛につく者を紹介させていただきますね」


 一刀が普段とはどこか違う空気を醸し出しているのを感じたのか、ファラナが前に出て笑顔を浮かべながらラッツ達の紹介をしていく。一人一人丁寧だが、あまりくどくなり過ぎないように説明を行って行く姿は、流石カナード支部の支柱を担っているだけはある。一通りの紹介を終えたファラナは、最後に一刀へと視線を向ける。


「それから彼についてですが……、今回彼はあくまで付き添いであり、護衛依頼に関わりませんので武器などは一切持たせておりませんが、お気になさらずに」

「ほぉ……」


 先ほどはただ通過するだけだった視線が、ようやく一刀へと固定される。モンドリアン氏も、モンドリアン夫人も同時に向けたその目に一刀は小さく身を竦ませる。


「あの~……、そろそろよろしいでしょうか?」


 珍しい物を見るかのようなモンドリアン夫妻に、恐る恐ると言った様子でファラナが声をかけた。


「……ん? 何だね?」

「時間も時間ですし、そろそろ出発した方がよろしいかと……」

「あぁ、それもそうだな。なら、さっさと馬車に乗ってくれ」

「……分かりました」


 一刀から目を離したモンドリアン夫妻は、自分たちの幌馬車に向かって行く。対して一刀達に当てられた馬車は小さく、見るからに廃棄寸前どころか廃車になった物を使っているだろうと言いたげな見た目の物。


「「……はぁ」」


 ファラナを含め、全員がため息を吐いたのは仕方が無い事だろう。


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