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第471話 デラミス会談

 ―――デラミス宮殿


 シルヴィアを送り届けた俺は、その足でエフィルと共にデラミスへと赴いた。とはいっても、屋敷から転移門を使っての移動なので、労力は全く掛かっていない。ギルド証を台座にかざして、門を潜ればもう到着だ。向こう側ではコレットが出迎えてくれて、さあさあとデラミス宮殿へと案内を開始。皆が待つ宮殿の最上階へと向かう。


「やあやあ、そんなに久しぶりではないけど、一応久しぶりと前口上として言っておこうかな、ケルヴィン君」

「それでは、私もフィリップ教皇に乗らせて頂いて。お久しぶりですね、教皇」


 宮殿の最上階はデラミスのトップ、フィリップ教皇が住まうフロアだ。この国において最も厳重な場所の1つで、外から密偵が忍び込む事はまずできない。なぜこんな場所に集まったのかといえば、面子が面子だからである。


「エフィル姐さんが来た。エフィル姐さんが来た!」

「なぜ2回言ったのだ、崇高なるムドファラクよ?」

「大事な事だから」

「さ、左様か」

「うう、何で私までこんな凄い席にいるんでしょうか? 何かの間違いです、きっとそうです……」


 以前デラミス宮殿を訪ねた際に朝食をとったこの席には、フィリップ教皇の他にコレットとセルジュを抜かした古の勇者達、そして我が家一の甘党にして光竜王のムド、先代光竜王のムルムル。最後に今はシスター・リーアとしてアトラの護衛役を務めているエストリアが集結していた。


 ……今更だが、こいつはなかなかに凄い面子だ。ここでの会談を持ち掛けた俺が言うのも何だが、変わり者が過半数を満たしていやがる。いやはや、ここにプリティアがいなくて良かったよ、本当に。


「それじゃあケルヴィン君、早速始めようか?」

「そうですね、教皇」

「うーん…… さっきから気になっていたんだけど、そろそろケルヴィン君からは僕の呼び方を改めてほしいなぁ」

「ははは、言っている意味が分かりかねます」

「何でも新たに発見された北大陸の王様には、お義父さん・・・・・、なんて呼んでるらしいじゃないか。良いなぁ、憧れちゃうなぁ。僕はそんな呼ばれ方をされた経験がなくってさ。機会があっても、こんな身分だから絶対呼ばれないんだよねぇ。ホント、男として責任は取るべきだと僕は思います」

「……そ、それではお義父さん、早速始めましょうか?」

「ええっ、誰がお義父さんだって!? その呼ぶに至った経緯を詳しく!」

「教皇、ケルヴィン様が困っているではありませんか!」


 俺のお義父さんが1人追加された直後、悪乗りする教皇様をコレットが戒めた。いいぞ、もっと戒めてくれ。しかし、この世界の王様は本当に侮れない。俺の両肩には責任・・の2文字が重くのしかかるばかりである。


「あの、ケルヴィンさん。喩え既成事実だったとしても、責任は取った方が良いかと……」

「至極真っ当な意見なんだが、エストリアに言われると複雑な気持ちだな、何か」

「も、もうエストリアじゃないんです。リーアなんですぅ……」


 エストリアも性格が180度変わってしまって、以前の妖艶な様子は微塵も残っていない。正直なところ、いざ戦闘となった時に戦えるのかがちょっと怪しい。


「フフッ。これはこれは、怖がりな子猫が迷い込んで来たようで。どうですかな、お嬢さん。私とお茶でも」


 エストリアが英霊の地下墓地で事件を起こした黒幕だと知らないのか、ソロンディールがちゃっかり彼女に軟派を仕掛けている。おい、せめて時と場所を弁えてくれ。


「え? えと、あの……」

「おっと、大変失礼致しました。私は『銀弓』の、またの名をハイエルフのソロンディールと申しまして」

「……ハイエルフじゃない。ただのエルフだ」

「ラガット、人の恋路を邪魔しないでもらえるかな?」

「えーと、そろそろ始めたいんですがー」

「ケルヴィン殿、人の恋路を邪魔しないで頂きたい! というか、なぜにセルジュが来ていないのかっ!」

「そうだそうだ! お義父さんは悲しいぞ!」

「……セルジュ、尊い」


 駄目だ、こいつらをまとめられる自信がない。幸いなのはコレットが暴走していない事だが、それ以前に色々と尖り過ぎている。


「皆の者、今日は無駄話をする為に集結したのではなかろうて。崇高でない我とて、その程度の事は分かる。時と場所を弁えるのが真の紳士というものではないのかな? フィリップ殿も、もういい年齢なのだ。若者を弄るのは、その辺にするのが良かろう」


 そんな中、ピシャリと周囲を静かにさせたのが、高僧の格好をした坊主の発言だった。この男、人間化したムルムルである。


「む…… 確かに、その通りですな。レディ、お茶はまたの機会に致しましょう」

「ムルムル様に言われちゃ、僕の立つ瀬がないね。さ、ケルヴィン君」


 守護竜に言われてしまっては、流石の教皇と勇者達も大人しくせざるを得ないらしい。ムルムルがもう大丈夫だぞと、軽く頷きながら目配せしてくれた。何とありがたい支援である事か。


「コホン、それでは始めます。お義父さんやコレットを通じて、メルフィーナの件についてはもうご存じの事と思います。メルフィーナの半身とも呼べる黒いメルフィーナ、クロメルはあの巨大な方舟を使い、白翼の地イスラヘブンを探し出そうとしている。その最終目的は真の神へと至り、転生術を十全に使用できるようになる事です」

「そうして完全な存在になった彼女が、ケルヴィン君と戦う。そういうシナリオだったよね?」

「ええ、その通りです。ただ、クロメルが真の神へと至ってしまっては、もう手の施しようがない。正直、今の状態のクロメルでさえ、勝つのは難しいと思っています。私の体感での話になりますが、クロメルはジェラール以上のパワーを、アンジェ以上のスピードを、セルジュ以上の幸運を持ち合わせている。だから、何としてでもそうなる前に食い止めなければいけない。それを大前提としましょう」


 本音は惜しいの一言に尽きるが、負ければ後がないのだ。絶対に勝てない戦を挑むほど、俺だって愚かではない。惜しいけど。凄く惜しいけど。


「クロメルが神となる前に倒す。ここで立ちはだかる問題がいくつかあります」

「というか、問題だらけでは……?」

「……そうともいう」


 この子リーア、所々で俺に辛辣じゃない? そんなにジェラールを連れて来なかった事が不満なの?


「まず第一に、あの方舟をどうやって突破するか。上昇可能な高度もさることながら、方舟から放出される風は強力なものです。方舟の高さまで上昇するのも一苦労ですし、まず近付けません」

「……では、どうするんだ?」

「トラージの艦隊、そして竜王達の力を借りたいと思います。移動手段兼物理押しのごり押しですね」

「ま、待て。ゴリ押しって、そんな方法でいけるものなのか?」

「全竜王による全属性ブレスのフルファイア、それなら打ち消す事が可能だと、トライセンのシュトラ姫が実際に目にした魔力をもとに、大まかな威力を算出してくれました。向こうも永遠に爆風を出せる訳ではないでしょうし、隙を作るのは可能かと」

「……噂の人形姫か」


 あの日誌・・・・にも、似たような事が書いてあったしな。


「ふんふん、うちのコレットと学院で肩を並べていたお姫様だよね? それなら大丈夫じゃないかな。僕は賛成するよ。他に手段が思い浮かぶ訳でもないしね」

「ありがとうございます。今のところ私の配下である土竜王ダハク、光竜王ムドファラク、火竜王ボガの了解は得ています。水竜王トラジ、氷竜王サラフィアも適任の者達を送ったので、恐らくは大丈夫でしょう。闇竜王は北大陸のバアル家に、ダハクの案内を付けて向かってもらっています。居場所が不明な風竜王、雷竜王については現在捜索中で、発見でき次第穏便に協力をお願いして、可能であれば加護も頂ければ良いなと考えています。ええ、可能な限り」


 最後の2体については、アンジェとシュトラ率いるトライセンの暗部部隊が鋭意捜索中である。見つけ次第、風竜王は俺が、雷竜王にはリオンが向かう予定だ。早く見つかれば良いなぁ。

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