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ナンバーズ



 一方、同刻

 任務であるブレイクモンスター討伐を果たしたクラウド・J・ファーストは、王都エクスペイン地下を訪れていた。


 王家の血筋を引く人間を初めとして限られたものしか存在を知らないこの施設は、邪神対策のために設立された超法規的組織――《ナンバーズ》のアジトであった。



(一体いつ以来ダ……? オレの持つ《警鐘》のスキルが発動したのは……?)


 

 機械仕掛けの魔導兵器デウス・エクス・マギカ@レア度 詳細不明

(自由に兵器を作り出すスキル)



 クラウドの保有するレアリティ詳細不明の固有能力《機械仕掛けの魔導兵器》は、現存するスキルの中でも最強クラスの殺傷能力を誇っていた。


 レーザー兵器から、核ミサイルに至るまで、ありとあらゆる兵器を自在に扱うことのできるクラウドは《ナンバーズ》の中でも一目置かれている。


 組織がクラウドに与えた数値はナンバー【04】。

 数値が低くなるにつれて権力が増すとされる《ナンバーズ》の中にあって、後発メンバーでありながらトップ5の地位についたクラウドは異例の存在であった。



「おかえり。クラウド~。随分と早かったね~」



 クラウドのことを迎える少女の名前はルーシー・ルゥ。

 前世に日本人としての記憶を持った小柄な少女であった。



「どうだった? 新調したワープ装置の性能は?」


「完璧ダ。ナンバー【07】ルーシー・ルゥ。相変わらずにお前は仕事が早いナ」



 邪神対策本部に置かれているワープ装置は、ナンバーズの《システム部門》担当であるルーシーが開発したものであった。


 この装置はブレイクモンスターの発生地点を特定して、即時に討伐部隊を送り込むことを可能している。


「まぁーねー。プログラミングに関しては前世のデスマーチで鍛えていますから」



 ルーシーの前世はブラック企業のSEであった。

 仕事中の過労の中で倒れて、異世界転生を遂げたルーシーはナンバーズの古参メンバーの1人として活躍していた。



「で、どうだったの? 今日のお相手は?」


「まったく……肩透かしも良いところだったヨ。もう少し浸食が進まないことには楽しめそうにないネ」



 ラグール山脈(初級)に発生したジャイアントウォームを打倒すことは、クラウドにとっては赤子の手を捻るより簡単なことであった。


 今となってはジャイアントウォームがどんな姿をしていたかすら思い出すことが難しい。



(やはり気になるのはあの男だナ……)



 瞬間記憶@レア度 ☆☆☆☆☆

(過去に見た映像を完全に記憶するスキル)



 クラウドは《瞬間記憶》で保存した悠斗の姿を見つめながらも物思いに耽っていた。



「ところでルーシー。アークの姿を見かけなかったカ?」


「ああ。アークならさっき資料室で……」


「…………」



 ルーシーの言葉を最後まで待たずにクラウドは、邪神対策本部の資料室に向かう。

 その男――アーク・シュヴァルツは椅子に腰かけながらも1人、読書に暮れていた。



「お前の言っていたコノエ・ユウトという男に会ってきたよ」


「……そうか」



 アークは興味無さそうに言葉を返すと無言のまま本のページを捲る。

 その投げやりな態度はクラウドの神経を逆撫でするものがあった。



「どういうことダ。ナンバー【06】アーク・シュヴァルツ。どうしてコノエはオレたちの側でナイ?」



 単純な戦闘能力で比べると、悠斗の実力は《ナンバーズ》のメンバーとも肩を並べるものがある。


 組織の人材管理を一手に引き受けるアークが悠斗の存在を知っていて、何故、勧誘に動かないのか? 


 クラウドには不思議でならなかった。



「コノエは女神アルテミスに選ばれた存在ではないのカ? オレの眼から見て奴は十分にその資格を持っているように見えたがナ」


「……お前がそれを知ってどうする? 時が来ればいずれ分かることだ」



 転生@レア度 詳細不明

(命を落とした時、別の生物に生まれ変わる力。転生後もこのスキルは引き継がれる)



 保有しているスキルの性質上、アークは他メンバーと比べて戦闘能力で劣っていた。


 だがしかし。

 誰よりもこの世界の生い立ちに精通しており、ナンバーズの設立にも深く携わったアークは、クラウドとは違った意味で一目置かれている存在であった。


 少なくとも、今、この瞬間までは――。



「長生きすることしか取柄のない雑魚ガ。あまりに調子に乗るなヨ?」



 挑発的な言葉を口にしたクラウドは、アークの襟を掴んで締め上げる。

 超人的な力を持った機械の腕は、いとも簡単にアークの体を持ち上げていく。




「まったく……。貴様は本当にピエロだヨ。レジェンドブラッド(仲間)を裏切り、作った組織の中で小バカにされる気分はどうダ?」


「…………」



 クラウドの挑発を受けたアークは、悔しそうに唇を噛み締める。


 世界を救った4人の英雄の子孫である――《レジェンドブラッド》は最強だった。


 勇者、魔術師、賢者、武闘家から成る4人のパーティーに倒せない敵はいなかった。


 けれども、時の流れは残酷である。

 無限の時間を過ごせる《転生》のスキルを有するアークを除き、3人の仲間たちは血が薄くなるにつれて力を失っていった。


 やがて復活するであろう邪神に対抗する勢力としてレジェンドブラッドでは力不足である。


 だからアークは邪神の力に対抗すべく、《召喚の魔石》、《転生の魔石》を多用して、最強の異世界人集団――《ナンバーズ》を組織したのである。



「コラ! 組織の人間同士の喧嘩は御法度でしょ!」 



 騒ぎに気付いたルーシーは2人の間に割って入る。



「ほらほらっ。早く会議室に行こう。そう言えば初めてだったよね? ボクたち《ナンバーズ》全員が揃うことって」


「「…………」」



 ルーシーの忠告を受けたクラウドは渋々と機械の腕を下ろす。


 邪神の復活に備えて、それぞれが物語の《主人公級》の力を持った《ナンバーズ》が水面下で動き始めていた。


 悠斗が《ナンバーズ》と衝突することになるのは――少し先の話になる。


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