第二十三話 チューリップは魂のない花だが、バラと百合は魂……とゆうか、もっとディープなもんを抱えてるような気がするよ。うん
感想をくださった佐山まりるさん、ありがとうございました!
「私は今日ものた打ちます。」と、作者は言う。
……のた打ち回るって英語でなんて言うんだろう。
「指を鳴らせば花が出る。両手を合わせりゃ鳩が出る」
そう言って指を弾くと、「ポン」というファンシーな音と共に花が舞う。
両手を筒状に組めば、適当に捕まえて仕込んでおいた鳩(もどき)が現れる。
「はわ……すごいです!」
それを白さんが子供のようなキラキラした瞳で見つめている。
……てか、白さんて「はわー」とか言うようなキャラだったっけ……?
ちなみに、今我々は邪神再封印への旅の道中である。
てゆうか、馬車ん中だ。
メンバーは、ノア、私、白さん、レモンの騎士の四人。
レモンの騎士は御者をやっていて、他三人は後ろでのんびりと。
……え?出発時のことを詳しく?
えー、面倒いなぁ。
そこそこ派手なパレードみたいなことやった。
観衆の前でノアがキンクリに「必ず邪神を鎮めます」とか言って誓った。
そこそこ派手に送り出された。
以上。
……大事なところ端折るなって?
いいだろ別に!!
うんざりなんだよ何度こんなことやってると思ってんだ!
大体、お見送りなんてどこも大して変わんないし!
つーか王サマのお話とか選手(?)宣誓とか毎度毎度どの世界も長ぇんだよ!話しが長いのは校長先生と作者の父親だけで充分だ!てゆうか邪神復活の影響で人手とか財政とかヤバイだろうに、無理に派手にしようとすんなって!もっと節約しろ!「もったいない」は世界共通語にもなった偉大な言葉なんだぞ!大体召喚側いつもいつ(大幅に脱線したため割愛)
(※お見送りイベントがどこも大して変わらないという発言は、全くの事実無根でありますので以下略 by作者)
……まあ、それはそうとして。
ひたすら花や鳩(もどき)や紙吹雪を生産する私に、ノアが複雑そうな顔を向けてくる。
「普通なら『おー』とか言うところなんだろうけど……なんか瑠璃がやると凄さが半減する」
「よせよ、照れるだろ」
「褒めてないから」
私は現れた花の一つを、ク●リス姫に対するル●ンよろしく白さんに差し出す。
「どーぞ、姫さん(王女だけど)」
「え、よろしいのですか?ありがとうございます」
嬉しそうに花を受け取る白さん。
渡した花からずるずる万国国旗を引っ張り出すのは、お約束だよね。
「わ、わっ、何か出てきました!」
「タネも仕掛けもありますよ」
「………………うん、そりゃあるだろうな!危うくスルーしそうになったけど!」
反対側にも花を出してから万国国旗を白さんに渡し、わっさわっさと散らばった花をまとめて束にする。
ここが馬車じゃなきゃ、花瓶にでも挿すんだがね。
この手のパフォーマンスは、異世界で時たまやる。
魔法のような超常現象のない世界は元より、今回のようなファンタジー世界でも、実は結構受けがよかったりする。
魔法があるのに、何故受けるかと言うと……。
「とゆうか、この世界には魔法があるのに、なんでそんなに驚くんですか?」
「私達の魔術は、無から生命を生み出すことはできないのです。花や鳥は命ですから」
「ああ、なるほど……」
……とゆうわけだ。
いいタイミングで質問を振ってくれたノアには、ご褒美としてお姉さんがイベントフラグを立てさせてやろう。
私は手渡したは花に夢中になっている白さんにわからないよう、そっとノアに耳打ちする。
「ノアよ」
「どうかしたのか?声なんて潜めて」
「この花束の中から似合うと思うもん一本抜いて、白さんの髪に挿してやれ」
「…………えっ?」
何故だかポカン(・д・)とした顔をするノア。
なんなんだ。今のセリフのどこにポカン(・д・)とする要素があった。
「何呆けてんの。早くしんしゃい」
「ああ、いや……瑠璃がそんなことを言うとは思わなくて」
「淑女を喜ばせるのは紳士の義務だろうが。さっさと白さん喜ばしてこい」
「あ、ああ……」
ほい、と花束を差し出すと、ノアは数拍空中に彷徨わせた後、一本の赤い花を引き抜いた。
「なんか、瑠璃にこうゆうこと言われると、何か裏があるんじゃないかと……」
ノアに対する白さんの好感度を上げようっていう裏はあるけど。
「失礼な。一級フラグ解体師の実力を信じろ」
「その発言から一体何をどう信じろと!?」
「何言ってんだ。どうすりゃフラグ解体できるかわかってんだから、どうすりゃ解体せずに済むかもわかるんだよ。ある程度」
「な、なるほど……いやいやいや、納得しないからな?どの道果てしなく心配だからな!?」
そんなやり取りをしていると、いつの間にか白さんが不思議そうな目でこちらを見つめていた。
私は肘でチョイチョイとノアの脇腹を突付く。
「ほれほれ、ちゃっちゃと渡しチャイナ服」
「いきなりどうしたそのオヤジギャグ」
「いいから、早くしろっての!大丈夫だよ!イケメンに花渡されて怒る女はいねぇよ!」
「キレながら後押しするなよ!恥ずかしかったのか!自分で言っておきながら!」
ノアはぶつくさ文句を言いながらも、白さんの髪に先程抜いた花を挿した。
予想通りとゆうか、お約束通り驚く白さん。
「えっ、これは……?」
「いえ、その……これは瑠……」
私がやれと言ったことをバラそうとしたノアを、一睨みして黙らせる。
やれやれ、全く。
バラしたら格好付かねぇだろが。
「……ホワイトさんに、似合うと思って」
ノアは若干引きつった顔になりつつ、そう言う。
白さんはと言うと、そんなノアの表情には気付かず、一瞬キョトンとしたあと、ポポポポーンと頬を染めた。
え?効果音がおかしい?そんなの気のせいダヨ。
「あっ……ありがとう、ございます」
「え、ああ、いえ……」
そんな白さんを見て、つられたのか照れたのか惚れたのか、ノアも少し赤面する。
うむうむ、いい感じだ。実に順調。若いねー、青春だね。
ちなみに、ノアが選んだのはクリスマスローズという花だ。
その名の通り、十二月から咲き始める。
……それにしても、随分季節関係なく出したようだ。
私の手の中の花束はクリスマスローズの他に、チューリップや桔梗、水蘭、カトレアなど、良く言えば四季折々、悪く言えば種々雑多な花達でまとめられている。
鳩(もどき)と違って、花は仕込みなし……つまりリアルに魔力で出したからな。
あんまり出す花細かく考えてなかったから、こうなったんだろう。
まあ、気付く人はいないだろうし、気付かれたところで困りはしないが。
それはそうとして、私はいい雰囲気の二人の邪魔をしないため、花束を持ってそっと席を外す。
え?全力で邪魔すると思った?
フッ、まだまだだな。
私は二人がくっ付いた暁には全力で茶化すつもりだからな!今茶化しても面白くないもんな!
そんなわけで、御者をしているレモンの騎士の隣へテレポート。
「よいせ」
「うおっふ!?びっくりした!」
変な声と共に盛大にビビるレモンの騎士。
こいつはこいつでいいキャラしてるよね。
「おっすおっす」
「おっすおっす、じゃないっスよ!いきなり現れたら驚きますって!」
「いいじゃないの。暇でしょ?」
「暇じゃないっスよ、御者やってんですから……てか、なんスかその花束。王女殿下と救世主様は?」
「いい雰囲気だったから置いてきた」
「へぇ、意外っスね。補佐様、結構そうゆうの空気読まなそうなのに」
「知ってるか?草木の茎や蔓って案外丈夫なんだぜ。編み込めば簡単に人を吊るせるぐらいに」
「すんませんっした」
即座に謝るレモンの騎士。
どうやら以前吊るし上げたのが効いているらしい。
あれは正直悪いことをしたと思ってるんだがね。
それでも、私のキャラを理解しているのか、騎士団長を相手にしている時よりも大分態度が砕けている。
「まあそれはそうとして。最初に物資の補給と休憩ができる街まで、どれくらいかかる?」
「馬車で早くて二日ってとこっスねー。行商みたいに荷物たくさん乗せてる馬車とかだと、もうちょっとかかると思いますけど」
「ふむ……この辺の魔物と盗賊の出現率は?」
「王都に近いんで、盗賊は少ないですけど……油断はできませんね。王都から離れる程増えてきますし。魔物に関しては、森とか洞窟とか強力な魔物が潜むような場所から遠いんで、遭遇したとしてもこの人数なら充分倒せると思いますよ」
「なるほどな。レモンの騎士って、サバイバル経験ある?」
「何!?レモンの騎士って!?」
「おっと、今更かよ……面倒な」
「今更!?てことは結構前からそう呼んでたんスか!?」
「んなこたどーでもよかんべさ。で、経験あんの?ないの?」
「……その、差バ威張る?ってのがわかりません」
「凄い当て字だな。てか、サバイバルが通じんのか……あれだよ、人が生きてくのに必要な物がない状態で生きていくってゆうか……ようはあれだ、野宿したり野生動物狩ってきたりそれで飯作ったり、そうゆう生活したことあるのかって」
「ああ、ありますよ?騎士団の演習とかで」
「おう、そうか。ならよかった、ノアや白さんには期待できないだろうしな」
「そりゃあ殿下にそんな生活させられませんからね。救世主様は知りませんけど……補佐様はそうゆう経験あるんスか?」
「まー、いろんなことやって生きてきたからね。それぐらいはあるよ」
適当にボカして話を進める。
本来なら「様付けとか気持ち悪いからやめろ。マジやめろ」と言っているところだが、「補佐様」という響きが気に入ったので、あえて訂正していない。
「んじゃまあ、野宿だなんだに関しては私らがリードしてくってことで。レモンの騎士、料理できる?」
「またレモンの騎士って……まあ、できますよ。宿舎、一人部屋ですし」
「ああ……そういや、レモンの騎士っていくつ?」
「…………。二十一っスけど」
「マジか。大した実力だな、その歳で騎士団のナンバー4で騎士団最速とか」
「あれ、知ってたんスか。騎士団長にでも聞きました?」
「そんなところだ」
本当は『見抜く能力』で視たわけだが、言う気はない。
毒殺未遂犯を逃した時、騎士団長が「お前から逃れるとなると、相手は相当の手練だな」と言っていたのが引っかかり、視てみたのだが……この騎士、思いっ切りいじられなキャラに反してかなりの実力者だった。
「てか、そんだけ実力あるんじゃ、レモンの騎士モテるんでない?性格も親しみやすいし、顔も悪くないし」
「えー?…………そんなもんっスかね?」
「おま、ホント残念だなぁ……モッテモテとまでは言わんけど、振る舞いと巡り合わせがよければ、自分のことを好いてくれる女性の一人ぐらい割りと簡単に出来るぞ」
「そーっスかねぇ……てか、今残念って言った!?今俺残念って言われた!?」
「実際そうだろ。てゆうか、あんたの反応見て思ったんだけど、基本的に女性にキャーキャー言われるのは団長や他のイケメン団員とかで、あんた自身にはそうゆうアプローチがない上、あったとしても他の女性陣のせいで霞んで気が付いてないとか、そんなんじゃないのか?」
「………………」
私に指摘に、黙り込むレモンの騎士。
どうやら心当たりがあるらしい。
「その反応を見ると、フッたな?しかも無意識に」
「…………ウガー!」
「あーあ、ホントに残念なヤツめ……」
手綱を握ったまま撃沈するレモンの騎士。
器用なヤツだ。
「大丈夫だ、いくらでも出会いなんてあるさ!応援してるよ!」
「補佐様……!」
「『後ろの人』が!」
「嬉しくねぇ――――――――――――――!!!」
そんなこんなで、邪神再封印の旅がスタートしました。
ノアと白さんのフラグ立てて、レモンの騎士とちょっとお喋り。
元ネタの紹介
・「私は今日も転がります。」と,少女は言う
現/実/逃/避/Pことw/o/w/a/k/a様の楽曲「ローリンガール」の歌詞の一部。
(※スラッシュは検索避けです)
・ポポポポーン
皆さんご存知のあのCMです。
さすがに最近はあまり見ませんね。