第十二話 過去は安い本と同じ。読んだら捨ててしまえばい……え?古本屋に出せ?
パロ元をご指摘くださったM朗さん、改善点と感想をくださった天気雨さん、ありがとうございます!
感想や意見を文章にしてくださるのは、非常に有難いです。
楽しみにしてますとか書かれた日には、嬉し過ぎて打ち上げられたマグロのごとくのた打ち回ります。ビタンビタン。
空行が大き過ぎるとご指摘いただいたので、これからは注意しようと思いますが、画面をスクロールさせてどのタイミングで文章が見えるかで空行の幅を決めている箇所があります。
そのため、そういった箇所は相変わらず空行が目立つと思います。
申し訳ありません。
side:森本乃明
俺には、幼馴染がいた。
少し気が強くて、周りをぐいぐい引っ張って行くようなタイプで、それでいて優しくて、お人好しで。
とても世話焼きで、親が共働きで一人でいることが多かった俺の家に来ては、よく夕食を作ってくれた。
「コンビニ弁当じゃ栄養偏る!」とか、よく言っていたな。
俺は、そんな彼女が好きだった。
付き合っていたわけじゃない。
幼馴染のことは好きだったけど、今はなんとなくこのままでもいいかなと思っていた。
「ほら乃明、早く行こうよ」
どこに?と問うと、幼馴染は形のいい頬を膨らませて、眉を少し吊り上げる。
「買い物に付き合ってくれるって言ったじゃない!荷物持ち!」
ああ、そうだった。
今日は部活がない日だから、幼馴染の買い物に付き合うんだった。
「そうだった、じゃないよ……ま、思い出したんならいいけどねっ」
どこか楽しそうに幼馴染は言って、綺麗に結われたポニーテールを揺らしながら歩き出す。
俺は幼馴染を追いかけて、その横に並んだ。
横からは、幼馴染の凛とした声が聴こえる。
授業がつまらないだとか、部活の先輩に彼氏ができただとか、今クラスで何が流行っているだとか、そんな話。
俺も相槌を打ちつつ、話に乗る。
季節は秋も終わる頃。
木々を紅や黄に染めていた葉は多くが地に落ち、道で落ち葉掻きをしている人はほぼ毎日見る。
そう言えば、買い物って何の?
そう訊こうとして振り返る。
しかし、そこに幼馴染の姿はなかった。
ゆっくりと視線を落とすと、彼女はいた。
棺桶に入れられ、菊の花に囲まれて。
そこで、俺はようやく思い出す。
幼馴染は死んだのだと。
顔を上げると、悲しそうな表情をした幼馴染が立っていた。
幼馴染は踵を返すと、どんどん遠ざかって行く。
待ってくれ!行かないでくれ!
俺は幼馴染を追いかけ、その肩を掴もうと手を伸ばした。
その距離は、届きそうで届かない。
一瞬、手の中をすり抜けかけた細い肩を、必死になって掴む。
そこにいたのは――
「引っかかったな、馬鹿め!」
――瑠璃だった。
「貴様にホーニッヒはやらん!」
「だからホーニッヒって誰だよ!」
***************
「…………はっ!?」
目の前いっぱいに、白い天井が広がる。
……また、あの夢だった。
三年前、幼馴染が歩道に突っ込んで来た自動車に轢かれてからよくこの夢を見たが、手が届いたのは初めてだった。
……もっとも、幼馴染ではなかったが。
ただそのお陰か、普段のようなやるせなさや憂鬱感はあまりなかった。
俺は、天井に視線を向けたまま、ふぅと息を吐く。
「……s「知らない天井だ」お約束のセリフすら言わせてくれないとか!」
言おうとしたセリフを遮られ、俺はその場に跳ね起きる。
こんなことをするのは一人しかいない。むしろ他にいたら困る。
声のした方に視線を向けると、窓から入ってくる日の光を背に、腕組をした瑠璃が立っていた。
瑠璃は、俺が知っている服装とは違っていた。
以前はいかにも女の子の私服、といった感じだったが、今はピシッとした上着にパンツルック、首元にはスカーフ、そしてショートブーツ。
強いて言うのなら、ファンタジー系のゲームや漫画に出てくる従者のような格好だった。
ただ、武器の携帯はしていない。
本来ならば脇役同然の服装なのだが、その堂々とした立ち姿のせいか、なんとゆうか……とても凛々しい。
黙っていれば美人なのに、その性格は詐欺だと思う。
「大声出しなさんな。白さん起きるぞ」
瑠璃は言いながら人差し指を口元で立てると、その指で俺のすぐ横を指差した。
指し示す先を視線で追うと、俺がいるベッドに突っ伏すような形で、ホワイトさんが眠っていた。
「ほとんど付きっ切りで看病してたぞ。私のせいですーとか言って」
ホワイトさんは余程疲れているのか、先程の大声にも起きる様子はない。
そう言えば俺は、訓練中に瑠璃の静止を無視して魔力を開放して……そのあとの記憶がないから、おそらく意識を失ったんだろう。
心配、かけたんだな……。
そっとホワイトさんの髪を撫でていると、不意にポン、と肩に手が置かれた。
「役得だね、救世主君」
「は?」
瑠璃は何故か、某生首みたいな顔でニヤニヤしている。某生首については詳しくは知らないが。
なんとゆうか……うざい。すごくうざい。だからその性格は詐欺だと(ry
「ま、私も一昨日は怒っちゃったけどさ、実際はいい子だから。起きたら労いの言葉でもかけたって」
「普通にちゃんとお礼言うよ。心配かけたみたいだし……それより、一昨日って?」
瑠璃は「うん?」と軽く首を傾げると、まるで何でもないように言った。
「ああ。ノア、丸二日くらい眠ってたんよ」
***************
side:大河内瑠璃
「……二日も!?」
ノアが驚きに目を見開く。
まあ、驚くのも無理はないわな。
「うん、二日。てゆうかトリップ二日目にして昏睡イベントとか早過ぎだろ。絶対ストーリー設計ミスだって」
「いや、そうゆう問題じゃなくて」
呆れ顔でノアが裏拳で突っ込みを入れてくる。
えー、でも実際早過ぎだろ、昏睡イベント。
「まあ、魔力切れるまで放出したしね。大事には至らなかったし、今回のことは気にすんな……とは言わんぞ。当事者の一人である私が言うのもなんだけどな、アホかお前」
見下ろすように軽く睨み付けると、ノアはぐっと詰まったように黙り込んだ。
「忠告はした。強くなりたいってのもわかる。でもな、いらんところで魔力放出して魔力切れとか、アホか。バ●オで敵にビビリまくって銃乱射して弾切れ起こして、次に弾丸拾うまでナイフ一本で渡り歩く破目になるくらいアホだ」
「例えわかり易っ!でも府に落ちない!」
「だいたい、ノアはもう充分強いぞ?『超成長力』のお陰だと思うけど、この世界に来た時点でLv38ぐらいだとすると、今はLv75ぐらいだ」
「何それ高っ!」
Lv75と言うと、世間では充分ラスボスが倒せるレベルである。
基本的にラスボスというのは、Lv60~70程度で倒せるようになっている。
一日でそこまで上がったんだから、普通に化け物レベルだよなぁ。
ちなみに、ラスボスと違いLv99になったとしても簡単には倒せないのが隠しボスである。
……多分それ、私なんだろうなぁ。勘だけど。
まあ、所詮は隠しボス。せいぜい見付からないようにしましょ。
「……ま、いいや。説教は白さんに聞きなさい」
「え、もういいのか?」
「良かないが、ここでの説教は私の役目ではない気がする。まあ、大丈夫だ。白さんが良心を電動ドリルで抉られるようなお説教をくれるだろうから」
「……表現がエグイな」
実際そうだろう。
多分あの王女サマはノアに泣いてすがり付く。そして泣きながら怒る。
白さんもノアもストレートなタイプだから、これはつらいだろうなぁ。
既に良心を抉られたような表情で黙り込むノアを尻目に、私はさっさと踵を返す。
「んじゃ私はノアが起きたこと伝えて、適当にブラついてくるわ。愛のお説教タイムを邪魔する気ないし」
部屋を出ようとドアノブに手をかけたところで、私はふと思うところがあって、振り返った。
「……ちなみに、ホーニッヒは第三ポジ惑星の姫君でな、十三本の八重歯を持つハエ叩きの生まれ変わりで、彼女の三十メートルのエラは銀河一美しいとされているんだ。ヤマアラシの顔した民達は、彼女こそが『壊れたヘッドホンと静岡の電波だ』と人望も厚く――」
「だからホーニッヒはもういいよ!!」
今回はイマイチ面白くないような……。
次回から、瑠璃ちゃんが本格的に行動し始めます。
元ネタの紹介
・知らない天井だ
説明不要かもしれないですね。
エ●ァです、●ヴァ。
・某生首
ゆっくりしていってね!!!
・バ●オ
バイ●ハザード。
カ●コンの有名なゲーム。