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8話

 時が流れ、私とコミット様は3年生になりました。

 私は悪役令嬢と言う評価も別段受けることなく、そつなく友人を沢山作りました。

 一方でコミット様は友達がいません。まぁゲームの頃から『孤高の天才』と言う称号があったので、ここはそのままと言う事でしょうか。

 で、今年は2つのイベントがあります。一つは私の弟が入学してくること。

 私の弟は可愛いすじかまぼこで、兄弟仲も良いです。ゲームの設定では仲が悪かったのですが、無事関係改善できています。

 そしてもう一つのイベントは……。

 

 ◆

 

「おはようございますコミット様。今日も元気そうですわね」

「私は人間です。断じて食すことはできません」

 この台詞はここ最近のコミット様の口癖です。何かを訪ねる度、死んだ魚の目をしてこの台詞をつぶやきます。

「ふふ、相変わらずですのね、コミット様」

「私は人間です。断じて食すことはできません」

「そう言えば今日は転校生が来るらしいですわ。期待して待ちましょうか」

「私は人間です。断じて食すことはできません」

「そうですわね。楽しみですわね」

「はいはい、皆注目ー」

 すると教師の魚肉ソーセージ先生が教室に入ってきました。

「3年生になって早々だけど、今日は転校生を紹介するよ。ほら、ササカマボコちゃん、入って」

 そう言われ、教室に一体のササカマボコが入ってきました。とても綺麗な見た目をしています。

「え、えっと。ササカマボコって言います! 今日からよろしくお願いいたします!」

「……!」

(あらコミット様、どうなさいました?)

 私はひそひそ声でコミット様に話しかけます。

(い、いや。あのかまぼこを見ていたら、急に心臓がチクッとしてな)

(それってもしかしなくても、あれですわね)

(……あれ? あれとはいったい何だ?)

(初恋。初めての恋、ですわよ♪)

 そう、今日は主人公のササカマボコがやってくる日。そしてそれはすなわち、コミット様の初恋が始まる日でもあったのです。

 


「ササカマボコ。私はお前に出会った初日に初恋したのだ」

 コミット様のルートで出てくるこの台詞の通り、コミット様は彼女に出会った瞬間から初恋をしました。

 はじめはその感情が何なのかわからないコミット様はササカマボコに冷たく当たる物の、次第に心優しいササカマボコに引かれ、その感情の意味も知る……と言うのがコミット様のルートの基本的な流れでした。

 実際には私の邪魔が入るのでもうちょっと複雑なルートなんですが……。でも私がコミット様の味方である今現在なら、この恋が実るのも難しくはないでしょう。私も、コミット様のサポートはしていきたい所存です。

 


「恋じゃない! 恋じゃない!! 恋じゃない!!! これは恋じゃない!!!! うがあああああああああっ!!」

「……姉上。後ろでコミット様がすごい形相で壁に頭ぶつけてますが、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですわ。『食べ物に初恋してしまった』と言う事実を受け止められないだけですわ。それよりすじかまぼこ、貴方にお願いがあるのです」

「お願い? 一体なんですか?」

「コミット様の初恋を成就させるために、ササカマボコさんとコミット様をデートさせようと思うんですの。で、そのデートをうまく行うために貴方に衣装を取り寄せてほしいんですの」

「うーん、直接姉上が取り寄せた方がよろしいんじゃないですか?」

「私が注文するより同じ男性の貴方が注文したほうが色々と楽だと思うんですの」

「それもそうですね。じゃあしっかりと注文しておきますよ」

「デザインはこちらから提案しますわ。お願いしますわね」

「恋じゃない! 恋じゃない!! 恋じゃない!!! これは恋じゃない!!!! うがあああああああああっ!!」

「……で、コミット様大丈夫なんですか、その状態で」

「大丈夫。衣装が届く頃には落ち着いてますわ」



 1か月後、衣装が届きました。

「これがコミット様に着てもらう、ササカマボコきぐるみですわ」

「きぐる……は!?」

「1分の1サイズのササカマボコを完全再現。どんな男でもカッコいいササカマボコになれる優れた商品ですわ」

「ちょっと待て、何でデートで着ぐるみ着なきゃならないんだよ!? というか1分の1ササカマボコって、絶対人間には着れないサイズだよね!?」

「ササカマボコとのデートはササカマボコの姿で行う。これは基本中の基本ですわ」

「どんな基本だよ!? 初めて知ったわっ!」

「さ、さっさと着て下さい。結構高価だったんですから、ちゃんと元は取ってくださいよ」

「ちょ、着せるな! というかどうやって着せてんの!?」

「……うん、最高! コミット様、どっからどう見てもイケメンのササカマボコですよ」

「イケメンのササカマボコって何!?」

「すじかまぼこもこれには『姉上のセンスは人前に見せてはいけない』と褒めてましたわ」

「それ貶されてない!?」

「さ、次はササカマボコのデートのマナーをお教えしますわ。まず舌を出しながらダブルピースして上を見つめて『うへへ』と言ってください」

「なにその絶対的に変態的なポーズ!? なんでそんな事デートでせにゃならないんだよ!?」

「舌を出すのは親交の証、ダブルピースは平和の証ですわ」

「絶対そんな意味ねーだろ!? もっと他のマナーを教えろ!」

「それじゃあ『ヒャッハーッ!』って言いながら着ぐるみを揺さぶって、飛び跳ねてください。語尾に『ササ~』って付けるのも忘れないでください」

「なんか見たことあるぞそういう着ぐるみキャラ!? あれみたいになれと!?」

「ちなみに『ヒャッハーッ!』は親交の証、飛び跳ねは平和の証ですわ」

「お前私が何も知らないからって適当教えているだろう!? もっとまじめに教えろっ!」

「それじゃあおすすめのデートコースをお教えしますわ。まず学園から外出許可をもらった後、近所にあるかまぼこ工場、かまぼこ専門店、かまぼこ博物館を巡り……」

「どんだけかまぼこ好きなのこの国!? かまぼこ施設密集しすぎだろ!」

「ちなみにかまぼこは親交の証、更に平和の証でもありますわ」

「親交の証と平和の証多すぎだろっ!? 適当にもほどがあるぞっ!」

「とにかく『ヒャッハー』って言いながらかまぼこの楽園を巡る。これだけで女はメロメロですわ。さ、ワンモアセッ!」

「そんなんにメロメロになる女なんて嫌だーっ!!! うわーっ!」


 で、またコミット様は引き籠ろうとしたものの、直前で私が阻止しました。そう何度も引き籠らせはしないですわよ☆

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