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防御特化と移動手段。

残されたメイプルは外壁上まで来ると、マップを確認しているマイとユイに合流する。


「メイプルさん!」


「無事でよかったです」


「【不屈の守護者】を使っちゃったから、私はしばらくは町で防衛!」


「そうだったんですね……」


「うーん、相手も強い人ばっかりです」


「サリー達も無事に戻ってきてくれるといいんだけど……」

「サリーさん達なら大丈夫ですよ!」


「信じて……待ちましょう」


「そうだね!」

サリー達はゲーム内でもトップクラスの五人だ。ならばその力を信じて待つ。これが残された側にできることである。


「どうだった?私が出て行った間に誰か攻めてきたりした?」


「誰も来てないですよ」


「まだ陣営の境目での戦闘がほとんどみたいです!」


王城を擁するこの町は敵陣から最も遠い位置にある。立ちはだかるプレイヤーの人数も相当なものであるため、連携が完璧に取れていなくとも、それら全てをすり抜けてくるのは難しい。


「フィールドには拠点にできるところもいくつかあるので、そこを中心にしてずっと前線にいるギルドもあるみたいです!」


「へー、すごい!いつの間に調べたの?」


「町にいる間にそうやって作戦を立てて出て行った人がいて……」


「やっぱり皆戦ってるんだね」


「動き回って有利な場所を探したり……皆さん考えているみたいでした」


「そういうのは私達は難しいもんね」

こういった広いフィールドではやはり機動力は重要だ。素早い撤退にも追撃にも、ポジションの変更に移動速度は大きく関わってくる。



そうこうしているうちにも、町の外につながる門の周りにはまたプレイヤーが集まってきており、次の出撃も近いようだった。外壁上にいたプレイヤーにもメッセージが届いたようで、遠方確認のために取り出していた双眼鏡をしまって準備を整えている。


「行くぞ。急いで救援がいるらしい」


「ええ、急ぎましょう!」

どうやら味方が窮地に陥っているらしく、何人かのプレイヤーは急いで階段を駆け降りていった。

あちこちで戦闘が起こり、徐々にそれが本格化しているということなのだろう。


「間に合うといいんですけど……」


「大丈夫でしょうか?」

少し心配そうにするマイとユイを見ていたメイプルは、何から思いついたとばかりにポンと手を打った。


「……そうだ!マイ、ユイ!ずっと待ってるだけだと皆の役に立てないし、こういうのはどう?」

メイプルはそう言うと二人に思いついた案を伝える。


「えっ!?」


「ど、どうでしょう?できるとは思いますけど……」


「じゃあお願い!」


「「わ、分かりました!」」

そう返事はしたもののどこか不安そうなマイとユイだったが、やると決めたからには急いで準備を始める。




少ししてまた突然の救援要請によって、急いで人を集めるプレイヤー達が慌ただしく外壁前に集まってくる。


「よし、二十人ってとこか……」


「足が速いやつから順に集めてる。集まり次第行くぞ」

バランスのいいパーティーを組みたいところではあるが、目的地に素早く到達することが何より大事であり、贅沢は言っていられない。


「……ん?」


「何だあれ」

二人が見つけたのは目立つように大きな看板を掲げているマイとユイだった。




『とても急いでいる人へ!最前線まで素早く運びます!※本当にどうしても最前線に行きたい人向けです!』




そこには正に今求めていることが大きな文字で書かれており、文章の内容、そして持っている二人が所属するギルドが【楓の木】であることには一抹の不安を感じるものの、意を決して声をかけた。


「なあ、ちょっといいか?」


「できるなら運んでもらいたいんだが……」


「はいっ!」


「えっと、行きたい場所と人数を教えてくれますか?」


「二十人だ。場所は……マップのここなんだが」

開いたマップを確認したマイとユイはそこなら問題ないと返事をする。


「集まったらいつでも行けますから」


「外壁上まで来てくださいね!」

そう言うと二人は先に外壁に沿うように伸びる階段を駆け上っていった。


「あの亀……は遅いし違うよな」


「二人の熊とかじゃないか?何かスキルがあるとか」

何をするのかは分からないが嘘ということもないだろう。二人は仲間が集まったのを確認し、マイとユイの後を追って外壁上に出る。


「「こっちでーす!」」

そこにあったのは上部に煙突のように砲身が突き出した巨大な羊毛の塊である。マイとユイの声に反応して、羊毛の塊の中からぽんっとメイプルの頭が飛び出し呼びかけてきた。


「この中に入ってくださーい!」


「「??????」」

そう言われてもと困惑するものの、急いでいるのは事実であり、恐る恐る巨大な毛玉の中に順に詰まっていく。

そうして全員がぎっちり詰まったところでメイプルはスキルを発動した。


「【身捧ぐ慈愛】!【結晶化】!」

毛玉からは天使の羽が伸び、その表面がクリスタルに覆われたように硬質化する。つまり中に入った二十人のプレイヤーは毛玉の中に閉じ込められた状態だ。


「お、おいこれ!」


「ま、マジ?」


「「行きまーす!」」

外からの声に、羊毛をかき分けて様子を確認すると、【結晶化】によってできた透明な殻の向こうに大槌を構えたマイとユイの姿があった。


「「せーのっ!」」

振り抜かれた二人の大槌は、ボール状になったメイプルを芯で捉えて凄まじい勢いで空中へと打ち上げた。


「うわああっ!」


「め、滅茶苦茶しやがる!」

つまり高速の移動のからくりとは【身捧ぐ慈愛】によってダメージを受けないようにして、自分自身が砲弾となることなのだった。

異次元の膂力によってもたらされたこの異様な移動は、弾が着地に耐えうる防御力を持つことと、それを実行に移す胆力によって完成した。


「ここで、【攻撃開始】!」

メイプルはマップを確認しつつ飛行すると、目的地付近で突き出た上部の砲身を爆破して、下へ方向転換すると隕石のように地面に落下した。


「目的地周辺ですー!頑張ってくださいっ!」

メイプルの【結晶化】が解けて、中からプレイヤーが這い出してくる。着地後の隙は【身捧ぐ慈愛】によって無くし、全員が外に出たのを見て、メイプルはニョキニョキとさらに砲身を伸ばす。


「お、おう……助かったぞ」


「また頼む……かは分からないけどね」

助かったのは事実だが、それでもそれぞれから何とも微妙な反応が返ってくる中、メイプルは新たに伸ばした砲身を爆破して空へと舞い上がり、自陣方向へ飛んでいくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 結構凶悪なことしてる気がするけど 想像するとめっちゃ微笑ましくて癒される
[気になる点] コレ、敵の密集してる所とかに直接撃ち込めば、ユイマイ二人の攻撃力の乗った質量兵器且つ中から一斉攻撃が出来るなんちゃって炸裂弾とかになってない? なお、炸裂部分は多数のプレイヤーのスキル…
[一言] ま、まさかの野球方式!よく目が回らないね・・・・
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