異能者

この世界には、魔法は存在しない。

けれど――“祈り”は、力を宿す。

十歳の誕生日。
子どもたちは教会で“祈りの義”を受ける。
それは神への捧げではなく、己に秘められた何かを“目覚めさせる”儀式。

そのとき、わかるのだ。
何が“自分に許された力”なのかを。

能力は、祝福でも、呪いでもある。

生まれつき誰もが持っているわけではない。
発現するのは人口の三割ほど――と、言われている。

だが、正確な数は誰にも分からない。

なぜなら、多くの能力者はその力を隠して生きるからだ。

貴族の家系に能力者は多いとされる。
だがそれも、表向きに語られることのない秘密。

能力の存在そのものがタブー視されることもあるこの社会で、
自ら名乗り出る者は少ない。

たとえば、身体強化。
たとえば、治癒能力や単一属性の操作。
わかりやすく、使い勝手がよく、制御がしやすいもの。

そうした“受け入れられやすい力”だけが表に出る。

それ以外は――
人目に触れず、ひっそりと、心の奥にしまい込まれる。

けれど、能力を持つ者たちは確かに存在する。
その力と、どう生きるか。
その秘密を、誰に明かすのか。

それが、彼らの選ぶ道となる。