短編小説

　ある日、一人の年老いた人形師が家の火事によって死んだ。後に残ったのはその孫娘と、出来損ないの機械人形。人形にできることといえば、娘に愛を囁くことだけ。 　今日も娘の車いすが、咎めるように小さく鳴いた//

　女子大の准教授・美浜洋子はゼミ生との恋バナをきっかけに、かつての初恋の相手のことを思い出す。 　――あの時も、今みたいにライラックの甘い香りがしたっけな。

　この春、高校三年生になった関田瞭介は、始業式で五年前に家を出た兄と再会する。まるで最初から何もなかったかのような兄の態度に、瞭介は今までの憎しみを爆発させる。 　――アンタのせいで、アンタのせいでオ//

　もしも世界がゲームみたいに、リセットできたら。誰しも一回は考えたことがあるだろう。だけど現実はそんなに優しいわけもなく、一度起こってしまったことは何があってもやり直せない。 　その、はずなのに。

　あの日の夢が、俺を苛む。すまない、と何度一人で呟いたって、謝りたい相手には届かない。 　きっともう、会うこともないんだろう。 ※以前UPした「星空カレイドスコープ」(http://ncode.sy//

　大学2年生の佐倉千尋は、同じ天文部に所属する先輩・関田瞭介に告白する決心をする。 　この合宿が終わる前に、絶対、思いを伝えてみせる！ ※「星空カレイドスコープ」(http://ncode.syos//

　聞いてくれよ。俺、パパになるんだ。

　こんばんは。こんな夜更けに、お出かけですか？　――ああ、突然、話しかけてしまってすみません。私は、柳と申す者です。怪しいものでは決してありませんよ。まあ、そうはいってもこのご時世、簡単には信じ難いか//