一心に灯りを挑ぐ

　その昔、ある王様が世界中の国に、光の魔法で結界を創りだしました。その結界のおかげで人々は魔物に怯えることなく、安心して過ごすことができるようになりました。
　ですが、それから急速に魔物が増え始めました。それを懸念した水の精霊と火の精霊が、結界を作りだす王様に対抗するべく、自らの命に変えて特別な魔法使いを世に生み出しました。二人は手を取り合い、光の王様の命を狙います。

　それでも一部の精霊は、人間たちが結界の中に篭もるようになったことを良いことだと考えました。人間たちは精霊と魔物の区別がつかず、精霊に襲いかかることもあったからです。一部の精霊にとっては、魔物よりも知恵を持ち、群がる人間のほうが邪魔だったのかもしれません。

　そして、風の精霊と空の精霊が、光の王様を守るべく特別な魔力を二人の人間に分け与えました。二人は光の王様を守りながら、火の魔法使いと水の魔法使いと戦いました。

　光は、精霊をも巻き込んだ終わりなき戦いという闇を生みました。

　やがて、その戦いが続くうちに、星族という光の魔法を使う種族が現れました。戦いに疲れた王様が、恒久的に結界が壊れることなく人々を守り続けるようにと"星族"と呼ばれる人々にその魔力を分け与えたのだと考えられました。

　そうして、かつて偉大な光の王様だけが使うことができた魔法は、星族だけに受け継がれていきました。徐々に星族はその数を増やし、世界中の結界を守るために各国の片隅にひっそりと住まうようになりました。

　光の魔法を使う星族は、人としての意志や感情を持たぬ魔法人形のようなものであると言われ、結界を守ることだけを生業として、結界内に住まう人々と関わりを持つことはありませんでした。光の魔法は長い年月をかけて、星族という一族を生み出し、世界の在り方を変えました。

　星族の出現により、特別な火の魔法使いと水の魔法使いは、光の王様との戦いに疑問を持つようになりました。ある時、特別な水の魔法使いは、たった一人で光の王様に歩み寄りました。終わりなき戦いを、終わらせようとしたのです。

　光の王様と特別な魔法使いたちの物語は、ここから始まります。