王の剣士［2022年８月完結］

その剣は身の内に宿る。

生まれながらにしてその身に剣を有する『剣士』。
高い戦闘能力を誇るが、長い間アレウス王国の軍には剣士は在籍していなかった。

雪深い北の辺境で生を受けたレオアリスは、十四の年、王の御前試合に出るために王都へと向かう。
駆り立てるのはただ、形のない思慕と憧れ――
その身に宿る剣と共に。

王の御前試合を経て近衛師団に入隊したレオアリスへ、王は十七歳を前に大将位を授ける。
様々な思惑のもとに与えられた地位と若すぎることへ向けられる蔑みや軽視の中でも、ただ王への思慕と憧れを抱き、レオアリスは周囲に支えられながら自らの役割を果たそうと努める。

「お前って王の前だとまるで、父親を慕ってる子供みたい」
王都への旅の途中で知り合った美しい少女、南方公爵家当主アスタロトはいつもからかうように笑う。


明らかになる思いがけない過去。
軍が剣士を忌避する理由。

再び水面下で動き出す、三百年前に終結した西海との大戦の影。
閉ざされた海の底に横たわる果てのない悪意は、やがてアレウス王国そのものを呑み込んでいく。


始まりはただ、形のない思慕と憧れ、この国の王に仕えるという願いだった。
自分も世界も、何も知らなかった少年の無謀とも見える望みと想い。
幾つもの出来事、幾つもの意志、多くの人々との出会いが重なり世界は紡がれていく。

その身に宿すのは剣。
願い。
それから。



何も持たなかった少年が、かけがえのないものを得、失い、そして新たな一歩を踏み出す長編、王道ファンタジー


（2022年6月完結予定）