恋愛小話集

「――　くんってかっこいいよね」通りすがりの誰かの言葉が私に暗示をかけた。勘違いから始まった恋。教室の窓からサッカーをする彼を眺めるだけで満ち足りた日々、それ以上は過剰であり、蛇足であり、字余りなのだ//

大学の学食でピラフを食べているオレの視界に、手前の席を引く細い手首が映った。それは甘い昨日の夢を呼び起こす。　＊自サイトからの転載です。お題を使わせて頂いた作品なので題名の頭に数字が付きます。

放課後、朝子は腕を組み悩んでいた。あけるべきかあけざるべきか。そこに現れたクラスメイトの優等生。おそらく朝子だけが知っている彼の秘密、あの髪の下には小さな光が隠れている。「ねえ町田くん」「ん？」　――//

学校の昼休みの廊下にて。恋したがりの少女は、正面から歩いてきた自分を好きだと言ってはばからないストーカー王子に対して攻撃に出てみることにした。恋とはどんなものか、考察してみるために。

雨の日、仕事帰り、迎えを待っていたわたしの前で停まった一台の軽トラック。運転席に座っていたのはわたしのよく知っている、知らない男の子だった。甘酸っぱい恋愛ものになりそこねた短いお話。 ＊同名同人誌に収//

良乃は学習塾でアルバイト講師をしている。受験生の夏、という珍しい時期に入塾してきた四倉帰一はどうもつかみどころのない、不思議な男の子だった。ある日、そんな彼に突然面談相手に指名され、首をかしげていると//

「ちょっと、顔貸してくれない？」私の幼なじみはよくモテる。そして、そんな幼なじみの好きな人が私だというのだからしょうがない。幼なじみがくれた緊急対処マニュアル片手に、私は今日も放課後の呼び出しに応じる//

教室は今日も騒がしい。球技大会の種目を決めるホームルームの時間でも同じだ。議長である私の声は、世界の果て、どころか教室の果てにも届かない。その小さな声を拾い上げてくれたたった一人の男の子。　＊サイトに//

朝、ちょっと前を歩く同じクラスの女の子。しゃべった記憶もろくにない。声をかけようかどうしようか。躊躇いは一瞬、ぽんと軽く肩を叩いた。「さっきかわさーん、おーはよっ」　振り返った顔の赤い目に、オレの心臓//

その人が手を伸ばした距離の内側を、恋人領域と呼ぶ。ふと思う。この目の前にいる人のこの手の中に、自然に入り込める人っているのだろうか ―― 。　毎朝通学する満員電車の中で近づいたクラスメイトな男女のやり//