英雄譚

二千年ほど昔、かつてこの世界が崩壊の危機に遭った時代の話。

かつてこの世界を救った英雄達が居た。
一人は自らの王国を救済した亡国の王女で彼の英雄と呼ばれた聖女。
一人は彼の英雄に付き従い続け、その使命と命を守護し続けた忠節の騎士。
一人はあらゆる魔法を使いこなし、彼の英雄を補佐し続けた魔法使い。
この三人により、この世界は救済され、三人の力で二千年にも渡る王国の礎が築かれたという。

しかし、当時の記録はあまりにも数少なく、その者が存在した痕跡は残っていないが、英雄はもう一人居た。
その者はもう一人の魔法使いであり、真に賞賛されるべき彼の英雄であったという。

真の彼の英雄は、悠久の時をこの世界を守護するためにその身をこの世界に捧げ、今も眠っている。
彼の英雄が目覚めるのは、この世界に再び危機が訪れた時。

故に彼の英雄の眠りを妨げては為らない。
この世界を壊そうと試みては為らない。
もし彼の英雄に出逢うことがあるのなら、それはこの世界に再び危機が訪れたことを意味するのだから。

私は、過去の文献から彼の英雄の物語を再現することにした。
それがこの世界をより良き方向に導くことを信じている。
それが私の生涯の使命である。