お題『短編』
◇
「月がきれいですねってさ、もはや婉曲表現ではなくない?」
マグカップの半分まで牛乳を注ぎ、そこに更にコーヒーを注ごうとしている私の背中から、そんな声が聞こえた気がした。
「はっきりアイラブユーと言わずにやんわりと相手へ気持ちを伝える、みたいな効果はもう、月がきれいというワードには無いと思うんだよね。誰だって知ってるじゃん、夏目漱石の例の話」
そう言えばそうだね、なんて思っているうちに、コーヒーを注ぎ過ぎてコップのフチぎりぎりまで来てしまった。一度軽くズズっと吸ってから、マグカップを揺すって中身を混ぜる。白と黒のマーブルが、徐々に淡いブラウンへと統一されていく。
「いい加減擦り過ぎなんだよ、みんな。むしろ純粋にお月見してる時に月がきれいだなあなんて言うと、逆にネタっぽくなっちゃうし。そろそろやめるべきなんだよ。アイラブユーとしての月がきれいという表現はさ」
味見程度に、少しだけ口に含む。……うん、美味い。コーヒーの注ぎ過ぎでバランスが崩れているかと思ったが、中々悪くない塩梅になっていた。今後はこれくらいの比率で注いでもいいかもしれない。
口の中に幸せな香りが広がっているところで、私は彼女に視線を向けた。
「それじゃあ、何て言えばいいの?」
「うーん、そうだなあ……。自分の好きという気持ちをはっきりとさせず、だけど相手への想いをほのかに匂わせる、詩的な表現、ってなると――」
彼女は合点といった顔で「あっ」と言い、開いた片方の掌に反対の手の握り拳を打つ。彼女の頭上には電球のアイコンが見える。気がする。
「カフェオレ、飲みたくない? ――とかどう? あなたと私、ミルクとコーヒー、みたいな」
「……CMかな?」
2021/10/17 ――お題『失恋』あとがきのあとがき
お題『紙の本』 短編
ささやかな日常の一ページ。
夏休み、それは「私」にとって、彼に会えなくなる憂欝な日々の始まりだと思っていた。
※お題『夏』のつもりで書き始めたら、気付いたらさすがに言い逃れできないほどのメインス//
掲載日:2022年 09月 27日
最終更新日:
2022年 10月 05日
キーワード:
スクールラブ
日常
青春
短編
掌編
女主人公
お題『失恋』 短編
陳腐な話。どこにでもある些事。
湖のほとりで、勇者と「私」が、ただ話をするだけ。
数時間分の習作。
十年くらい前に書いた自著掌編『水』のセルフオマージュ。異世界編。
そして何年か前、失恋がテーマ//
掲載日:2021年 10月 17日
最終更新日:
2021年 10月 18日
キーワード:
悲恋
青春
ショートショート
短編
女主人公
勇者
ESN大賞3
123大賞
コミックスピア大賞1
OVL大賞7
お題『あとがき』 まとめ
あとがきのあとがき、のまとめ。
お題『』に沿って書いた短編から零れた、お題『』への別のアプローチ。
更新があったら追加していきます。
掲載日:2022年 09月 27日
最終掲載日:2022年 09月 27日
キーワード:
日常
青春
お題『蛇』 掌編
大学の『神道と情報化社会』の授業用。神式葬儀の参列の教科書にもなれば。
掲載日:2016年 01月 25日
最終更新日:
2018年 05月 25日
キーワード:
悲恋
青春
ショートショート
掌編
短編
お題『水』 500文字短編
掌編・短編
└お題『水』
└制限500文字以内
モバゲーのエブリスタクリエイターサークルで書いたもの
掲載日:2013年 09月 03日
最終更新日:
2013年 09月 03日
キーワード:
悲恋
青春
ショートショート
掌編
短編
500文字以内
お題『旅』 500文字短編
掌編・短編
└お題『旅』
└制限500文字以内
モバゲーのエブリスタクリエイターサークルで書いたもの
掲載日:2013年 09月 02日
最終更新日:
2013年 09月 02日
キーワード:
日常
青春
ショートショート
掌編
短編
500文字以内