退役した門番、ただ立っていただけなのに

城門の前で、三十年。
ただ立ち続け、街を見守ってきた一人の門番がいた。
戦場に出たことも、魔王を斬ったこともない。彼がしてきたのは「通る人を見送り、迎える」ただそれだけ。

だが退役の夜、彼の名が呼ばれる。
「千の視線を受け、万の足音を聞き、百万の人間を見送った者。――それを英雄と呼ばずして、何と呼ぶ」

誰よりも戦わなかったはずの彼が、誰よりも世界を知っていた。
その知見は戦術を変え、魔物との戦いに役立ち、人々の心を繋ぐ「唯一無二の力」として開花する。

これは、
「ただ立っていただけ」の門番が、
やがて国の行く末を左右する“伝説の要”へと変わっていく物語。